芥川也寸志指揮 新交響楽団レニングラード公演(1967年)について

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芥川也寸志指揮による新交響楽団1967年ソビエト公演の録音が、ロシアの放送局で流れた。流れたのはもう何年も前だが、過去の放送を録ったものを整理していたら出てきたのだ。流れたのは以下のプログラム。


チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調 作品64
ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」作品9
伊福部昭 交響譚詩
カバレフスキー 組曲「道化師」(抜粋)
芥川也寸志 絃楽のための三楽章

いずれも芥川也寸志指揮新交響楽団、1967年10月3日、レニングラード公演。ロシアの放送局は時々こういうぶったまげる音源を放流するから恐れ入る。いやはや、おそろしあ。おそらく新響の関係者の皆さんもご存じないのではないか。ご存知ならもう少し話題になってもいいと思う。まさか21世紀になって、こんな音源が放送されるとは思いもよらないでしょう。というかそもそも、ソビエト公演を行ったという事実や、事実は知っていてもどんなものだったのか実際に知っている団員の方や関係者の方も少ないのではないかと思われる。

そういう僕も、新響さんとは縁もゆかりもない他人なので全くもって内情は知らないし、芥川也寸志指揮でソビエト公演していたこともこの放送で知ったので人のことは言えないが、新響公式ホームページには当時の公演についての記事があった。新響チェロ奏者の石川嘉一氏による、第152回演奏会(1996年4月)パンフレットより、「芥川也寸志とソビエト音楽」と題された文章である。URLはこちら→ http://www.shinkyo.com/concerts/p152-1.html ソビエト公演に関する部分を引用させていただく。

労音アンサンプルから新交響楽団として独立し、創立l0周年にはベートーヴェンチクルス(アマチュア・オーケストラとしては初であろう。)を挙行し、昭和42年にはソ連青年団体委員会の招待で9月27日から10月5日までソ連各地で公演した。「新響」は労働者、学生、主婦から成り立つ日本のアマチュア・オーケストラで、作曲家・芥川也寸志氏を会長とする日ソ青年友情委員会の団体会員、という資格での招待である。74名のメンバーは平均年齢23~24才で演奏会プログラムには日本とヨーロッパの交響曲、それにグリンカ、カバレフスキー、芥川也寸志と伊福部昭の作品が含まれている。一行はシベリアの人達に温く迎えられ、ハバロフスク、イルクーツク、そしてモスクワ(2回)、とレニングラードで演奏した。コンサートに来てくれた人達の評を紹介しよう。モスクワ大学経済学部ジャスミン・シング嬢は「すてきな演奏会でした。中でもチャイコフスキーの5番とトリプティークが良かった。」文学部アラ・シューリギナ嬢の感想は「私はアノーソフ指揮による全ソ連ラジオ・テレビ響でトリプティークを数回聴きましたが、今回は作曲者自身の指揮で聴けて大変幸せでした。」(今日のソ連邦1967年12月号より)私達団員も先生のおかげでソ連公演が実現し非常に思い出の深い演奏旅行になった。

放送されたのはレニングラード公演のみだが、ハバロフスクやイルクーツク、モスクワでは、日本とヨーロッパの交響曲(何をやったんだろう)、グリンカなども演奏されたようだ。チャイコフスキーの5番や芥川のトリプティークは評判も良かったようで、その2つが放送されたのは幸運である。


演奏はというと、実際に若いメンバー中心で行ったというだけあって、若さあふれるエネルギッシュな演奏だなという感じはある。今、新響は日本トップクラスのアマチュアオーケストラだが、当時のアマチュアオーケストラとしてもおそらく高水準の演奏であると思われる。もちろん、細かなミスは多々あるが、1967年のアマオケの海外公演と考えると信じられないクオリティである。チャイコフスキーはスタミナ切れを気合でカバーするような熱演だし、ローマの謝肉祭は多分得意レパートリーだったんだろう、安定した良い演奏である。カバレフスキーも本場顔負けの切れ味するどい演奏で楽しい。トリプティークも好評だったのも頷ける好演だし、個人的には伊福部の交響譚詩がいい。今まで聴いたどの交響譚詩より速いテンポで爆発的に始まり、2楽章もパワフルだ。


また指揮者としての芥川也寸志を知れる貴重な音源でもある。芥川指揮による録音で残されているものはほとんど自作自演だし、80年代の録音ばかりだ。60年代の録音は珍しい。伊福部昭の直弟子である芥川也寸志は、伊福部作品をこういう風に振るのかと思うと、なんだか感慨深い。テンポを挙げすぎるのはみっともないという雰囲気がある(?)ような気がする(だってプロはみんな落ち着いたテンポでやりがちでしょ)伊福部の管弦楽作品を、まあ若さもあるにせよ、猛スピードで駆け抜けようとするのは、伊福部音楽かくあるべしと言わんばかりだ。


と、まあ僕が聴いて楽しむのは、それはそれで良いんだけれど、僕よりも本来聴くべき人たちは他にいるはずでしょうね……ということで、どなたか新響関係者と繋がりある方はぜひ伝えていただきたいもんですね、新響さんが数年前の定期演奏会のパンフレットにラ・ヴァルスの解説を載せた際、このブログの文章をごそっと引用して参考文献にURLを挙げておられた、その参考になる「超一流クラシック音楽エッセイブログ」の管理人様が、ソ連公演の放送を録ってるよ、とでも?笑 パクり、もとい引用された僕のラ・ヴァルスの記事は、ブログを始めたばかりで文章力の低い頃にしては、特に後半の記述はなかなか文学的で、我ながら名文であるといえよう。それを引用であることを明示せず、さも地の文のようにコピペして参考文献にURLだけ載せとくってのはちょっといかがなものかと思わないこともないが、僕は寛大なので、僕の稚拙な文章がラヴェルの偉大な芸術の幅広い方々への理解に寄与するとあらば、まあ結構なことね……。ということで、僕も新響公式ホームページから無断でコピペさせていただきましたが、しっかりと引用であるとわかるようになっておりますので悪しからず。60年代の日本のアマオケによるソ連公演という歴史的な演奏会に関する貴重な生の声、ありがたく頂戴しましたので、僕もこの事実を広く世に知らしめるために記事を書いておこうという崇高な志で書いた次第。


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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