伊福部昭 日本狂詩曲:これぞ日本人のラプソディー

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伊福部昭 日本狂詩曲


このブログで初紹介となる邦人作曲家の曲は、『ゴジラ』の音楽でお馴染み、伊福部昭の「日本狂詩曲」である。
題名からして、いかにも日本の民族音楽、という印象で、1楽章の夜想曲、2楽章の祭り、約15分の管弦楽曲。
1935年、チェレプニン賞を受賞した伊福部氏のデビュー作であり、西洋音楽の形式で表現された強烈な日本らしさが、世界的に認められた曲である。
哀愁漂う旋律が静かに繰り返される夜想曲、それにうってかわって熱狂的な祭りの音楽という対比的な楽章だが、濃い民族性は共通だ。
伊福部氏は北海道出身であり、アイヌ民族音楽風も大いに影響している。
故に日本風であるのだけれど、どこか「北のくに」な雰囲気が否めない。
特に夜想曲において、少なくとも西日本にはない雰囲気である。
そしてそれが西洋楽器の音色と非常にマッチしている。


尚、この曲のスコアの表紙には、伊福部氏自身によるイラストが描いてある。
それが、ちょっと口ごもるのだが、なんとも言えずシュール。


ヴィオラのソロから始まり、もの悲しい夕方の終わりを思わせるような、夏の日暮れの冷たい空気の中にいるような、その調子で淡々と日本風の旋律が歌われる。
この哀愁は日本人ならきっと誰しもわかるはずの、「なんとなくやるせない」感じ。
しかし、この曲の1番の魅力は「祭り」、そして「祭り」の打楽器だろう。
総勢9名を要する打楽器群が力強い日本の民族的なリズムを叩き続ける。
曲を通して、弦楽器、ピアノ、ハープらも打楽器的な使われ方をされているし、伊福部氏自身「主役は打楽器で、旋律は副次的な物に過ぎない」と言ったくらいである。
ソロ・クラリネットの上に打楽器が和のリズムを奏で始めたら、大暴れする打楽器に、執拗なオスティネートで旋律が重なり、鳥の声、笛の音、と正にお祭り騒ぎである。
いかにも伊福部節全開であり、ファンにはたまらない。
だが、祭りの熱狂具合だけで言えば、これを上回る外国の民族音楽はたくさんある。
思うに、それが西洋楽器の限界なのだ、という点がひとつ。
そしてもう1つ、日本の祭りの熱狂が西洋の祭りの熱狂に負けているとは思わないが、「日本の祭り」の精神の奥底には、少なからず「祭りのあと」があるという点。
終わりがあるから騒ぐのだ、というと言い過ぎだが(その点美空ひばりの『お祭りマンボ』などは素晴らしい)、どうもこの2楽章からは、そういった哀愁が感じられる。
西洋楽器の持ち味を生かした、「日本人の精神に深く根付くもの」の音楽。
これこそラプソディーなのであり、伊福部昭の至高の芸術である。

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本名徹次,東京混声合唱団,コールジューン,伊福部昭,日本フィルハーモニー交響楽団

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