Pierrot Lunaire / Herzgewachse / Ode to Napoleon

シェーンベルク 月に憑かれたピエロ 作品21


新ウィーン楽派の代表格であるシェーンベルクの、歌曲というかなんというか、よくわからない室内楽といったところ。
1912年初演、賛否両論、話題性抜群、ラヴェルやストラヴィンスキーにも影響を与えた。
シュプレッヒシュティンメという独特の発声法によるソプラノ、フルート(ピッコロ持ち替え)、クラリネット(バスクラリネット持ち替え)、ヴァイオリン(ヴィオラ持ち替え)、チェロ、そしてピアノという編成。
アルベール・ジローによる詩の歌唱(独訳)と、伴奏(むしろそれぞれのソロの重なり)が織り成す、不思議な世界。
3部構成で、各部7曲の21曲、約30分。
1部 :月に酔う、コロンビーナ、伊達男、蒼ざめた洗濯女、ショパンのワルツ、聖女、病める月
2部 :夜『パッサカリア』、ピエロへの祈り、掠奪、赤いミサ、絞首台の歌、打ち首、十字架
3部 :望郷、下劣、パロディ、月の斑点、セレナーデ、帰郷『舟歌』、おお,古の香り
とことん無調性、不協和音の連続、脈絡はなく、歌詞は冒涜的だったりグロだったりと、実に前衛的である。
しかし、この曲が「20世紀最大の傑作」などと呼ばれるのもまた事実だ。


さて、「クラシック音楽を楽しむブログ」などと銘打っているのだが、僕は正直この曲を「楽しんだ」ことはない。
女の人が突然叫びだしたり、耳に優しい旋律なんて全くないので、本当に心地よくない(もっとも心地よいと思う人もいるだろうが)。
本当に心地よくないので、もし聴いてみようという人がいたら、音量には気をつけて欲しい。
ただ、それでも僕はこの曲が好きだ。
なぜなら、この曲には古典形式の使用とその崩壊という、彼一流のユーモアとナンセンスがあり、そしてあくまで「音楽」としての雰囲気作りが「徹底」されているからだ。
そこいらの「所謂現代音楽です、アイディアの勝利です、思想の勝利です」という作品とは一線を画する。
これは僕の個人的感想だが、あくまで「音楽」なのである。別にケージやライヒを批判している訳ではないが、この作品は、音楽が思想やアイディアに勝利しているのである。
現代という時代の無意味さ・くだらなさ・やるせなさ、そこで生きることの矛盾、苦痛・快楽・嘆き・喜び、それらを意味し、訴えかけるのは、シェーンベルクの思想ではなく、音楽である。
そういう意味で、「月に憑かれたピエロ」は、正に現代音楽・20世紀音楽を代表するといえる。
解釈も様々、賛否両論だが、僕は名曲として数えたい。
徹底的に音楽であり続ける音楽が、歴史的にどれほど価値のあることか!


ちなみに、シェーンベルクの作品がみんなこんな感じかといったらそうではなくて、聴いていて本当に心地よい曲もある。
『ペレアスとメリザンド』『浄められた夜』など、あまりにも美しくて昇天するかと思う程だ。
それでも「月に憑かれたピエロ」を最初に取り上げるのは、先にも言ったが、「好きだから」である。

Pierrot Lunaire / Herzgewachse / Ode to Napoleon Pierrot Lunaire / Herzgewachse / Ode to Napoleon
Arnold Schoenberg,Pierre Boulez,David Pittman-Jennings,Paris Ensemble InterContemporain,Christine Schäfer

Deutsche Grammophon
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