メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」&第4番「イタリア」、序曲「フィンガルの洞窟」

メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」 作品90


現在最も親しまれているメンデルスゾーンの交響曲は、間違いなくこの「イタリア」である。
メンデルスゾーンがイタリアへ旅行中に手がけられた作品で、1楽章の冒頭だけ聴けば、誰もが「なるほど」と言わんばかりのイタリア風。
弾けるように踊り出すリズムと旋律が、情感たっぷりに歌われるのを聴けば、すぐにこの曲の虜になる。
我々がイタリア(或いはイタリア人)に抱いているイメージそのもののように、感情豊か、という言葉がよく当てはまる。
つまり、長調と短調の表出が明快であり、その起伏が大げさであるということだが、この曲の人気の由縁はそれだけではなく、その含まれるバランスの良さ、交響曲としての出来の良さ、というのもある。
ドイツ人のメンデルスゾーンから見た「イタリア」であり、コテコテのイタリア音楽ではない。
4楽章には、イタリア民族舞踊も取り入れられているが、全体の雰囲気としては、「イタリア」ではなく「イタリア風」であり、感覚としては、東京の高層ビルにある高級イタリアンレストランで、夜景を見ながら食事をするようなものか。
その料理が、万人の口に合う「イタリアン」なのだ。人気が出て当然である。


日本人だけでなく、ヨーロッパ人でも、特に北の方の人は、「明るい」「陽気な」南欧に対する憧れがあるだろう。
メンデルスゾーンはイタリアを旅行してこの作品を作ったのだが、民族音楽的要素はほとんどない。
それでいて、ここまで上手くイタリアを表現しているのは、メンデルスゾーンの才能はもちろん、彼の持つイタリアに対するイメージ、憧憬だろう。
無論、3番の「スコットランド」と比較すれば非常に陽気な曲に思うが、ただそれだけでないのが、作曲家としての「技」である。
芸術家によって描かれた「綺麗なイタリア」が堪能できる。
そういう意味で、あまり濃厚過ぎないアバドの録音が僕は好きだ。
情熱がはみ出るような、クレンペラーやトスカニーニはもちろん名盤だが、中庸を保った雰囲気が、このドイツ人のイタリア風音楽には相応しく思う。
悪く言えば「平凡」なのだが、洗練された中庸の美と言おうか、アバドの「イタリア」は実に心地よい。
「プッチーニは振らない」イタリア人・アバドにはぴったりな曲だ。
プッチーニがイタリアの魂だとしたら、メンデルスゾーンの「イタリア」は、旅先からのポスト・カードだろう。

メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」&第4番「イタリア」 メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」&第4番「イタリア」
アバド(クラウディオ),メンデルスゾーン,ロンドン交響楽団

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