イルマル バーデン・ジャズ組曲:哀愁と情趣の職人技

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郷愁のショーロ~35周年記念アルバム

イルマル バーデン・ジャズ組曲


とうとうクラシックギターを取り上げるのだが、何について書こうかと思っていたところで、この曲と出会った。
そもそもクラシックギターの作品は、ジャンルとしてはクラシックに属さないような作品がいっぱいなので、どうしてもクラシック視点からだと限られてくる。
ボサノヴァや民族音楽との境目が非常に曖昧な分野だ。
アランフェスとか、ギター五重奏とか、そういうのもいいけど、ここはやはり正統派、クラシックギターのためのオリジナル作品を紹介したい。
イルジ・イルマルはチェコの作曲家で、プラハ音楽院ギター科の教授である。
バーデンとは、ブラジルの天才ギタリスト、バーデン・パウエルのことだ。
この作品は彼を讃える曲となっている。
3楽章構成、Ⅰ.シンプリシタス Ⅱ.子守歌、Ⅲ.ロンド・ア・ラ・サンバ
とあり、特にボサノヴァの要素を含んだシンプリシタスは人気が高い。


「素朴なもの」を意味するシンプリシタスは、哀愁を帯びた抒情的な美しいメロディーから始まる。
一転するとボサノヴァ風の和音を持した伴奏に移り、より情熱的なパッセージと自在なリズムの変化に耳が惹かれる。
再び哀愁のメロディーに帰り、静かに曲を閉じる。
子守歌は、シンプリシタスよりさらに素朴な、気さくな表情の歌。
それだけに、ギタリストの表現が問われる、技巧ではないが、こういう曲はかえって難しいものだ。
ロンド・ア・ラ・サンバ、つまりサンバ風ロンドということ。これが独特な雰囲気で面白い。
サンバのリズムが加わると、今度は1楽章と違った類の情熱を見せてくれる。
悲哀を帯びた情熱が1楽章ならば、3楽章は喜びと楽しさに満ちた情熱といったところか。
曲の結びも非常にかわいらしいく、最後まで常にうきうきしたような、えも言われぬ異国情緒と楽しさがある。
ジャジーな雰囲気やボサノヴァ風な香りもあるが、ポピュラー音楽と決定的に違うのは、作曲家としての職人技が見られるところだ。
ベースラインと旋律の予期的関係や構成の上手さ、リズムの生む意外性など、実は精緻に組み立てられている。
ジョアン・ジルベルトやA.C.ジョビンも良いが、このバーデン・ジャズ組曲には、クラシックギター作品ならではの芸術的魅力があふれている。

郷愁のショーロ~35周年記念アルバム 郷愁のショーロ~35周年記念アルバム
荘村清志,アジャーラ,ケンプフェルト,レノン,イルマル,レイス,バリオス,ジョビン,ピアソラ,猿谷紀郎,フッソング(シュテファン)

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