ラモー 組曲二短調


ジャン=フィリップ・ラモーは、バッハやヘンデルと同時代の、フランスの作曲家である。
クープランと並びフランスのバロック時代を代表する作曲家で、ヴェルサイユ宮廷のために多くのオペラを書いたことで知られる。
彼は教会でオルガン奏者を務めていた父から鍵盤の手ほどきを受け、彼自身もまた教会でオルガン奏者として活躍していた。
現在でも名高い彼のオペラ作品の楽曲は、彼のクラウザン(ハープシコード)作品の楽曲を基にしているものも多い。
「一つ目巨人」「めんどり」「タンブラン」などの小品は、日本でもピアノ曲として人気のある作品だ。
この二短調の組曲が収められているのは1724年に出版された、クラウザン曲集の第2集で、これの他にホ長調のものがある。
ホ長調のものが一般的な舞曲であるのと異なり、二短調のものには標題が与えられているものが多い。
全部で10曲あるのだが、いくつか抜粋して紹介しよう。


第1曲の Les tendres plaintes は、「恋の嘆き」とも「やさしい訴え」とも訳される、情感たっぷりのロンドだ。
切なくも愛しいこの歌は、後にオペラ「ゾロアストル」に転用された。
第5曲の La follette 「いたずら好き」は、その名の通り、いたずら好きな可愛らしい妖精の様子を表すロンド。
トリルの使用と和声の運びが、憎めない雰囲気で心地よい。
第6曲の L’entretien des muses は「ムーサ達の対話」は、よく似た二声の音楽であたかも対話するかのように表現されている。
ラモーは音楽理論家としても有名であり、彼の音楽はそういう意味で精巧に出来ている。
第7曲の Les tourbillons 「つむじ風」は最も標題音楽らしい、ラモーの感性が光る作品。
嵐に舞い上がる塵を表現したロンドで、鍵盤を縦横無尽に走り回る風は、両手を交互に弾く「ルルマン」が使われて表される。
第8曲の Les cyclopes 「キュクロプスたち」は、作曲技法的にも一風変わった作品で、ギリシア神話に登場する一眼の巨人「キュクロプス」をモチーフにしたロンドだ。
分散和音が高音と低音を行ったり来たりして、巨人が鎚を打つ様子を表したり、せわしなく動く音階で生き生きとした巨人の様子を描いている。
ラモーの作品には、同じフランス・バロックの作曲家クープランのような繊細さや美しい旋律、音と音の連なり、と言ったものはあまりない。
むしろ理論に基づいた和音の配置や運び、そしてダイナミックな描写と動きで人々の心をとらえるものだ。
フランス音楽、バロック音楽というとどうも高尚な雰囲気ばかり先走るが、ラモーのこの組曲は、バロックの気品と親しみやすさを兼ね備えた、優しく、楽しい芸術だ。