ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番&第5番(2015リマスター)

ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ短調 作品31


アンリ・ヴュータンは先に取り上げたイザイの師であり、フランスで活躍したベルギーの作曲家である。
ルクレールやド・ベリオらから始まる「フランコ=ベルギー楽派」確立の立役者と言っても良いだろう。
「ヴァイオリン協奏曲史」に燦然と輝く(と僕は勝手に礼賛するのだが)フランコ=ベルギー楽派の系譜は、このブログでも取り上げたイザイやスペイン交響曲で有名なラロの他に、ブルッフ、ヴィエニャフスキと続き、ヴァイオリン協奏曲の地位を固めてきたのである。
ヴィルトゥオーソ・ヴァイオリン・コンチェルトという言葉があるように、ヴィルトゥオーソはヴァイオリンと言う楽器にこそ最も相応しい。
ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を「三大ヴァイオリン協奏曲」と呼ぶこともあるが、ヴィルトゥオーソ・ヴァイオリン・コンチェルトは、三大協奏曲とはまた違ったヴィルトゥオーソとしての一境地を拓いたのである。


ヴュータンの協奏曲第4番は、彼の作品の中でも人気の高いもののひとつであり、何といってもその機械的超絶技巧と感情的な美しさの両方を持っている点が人気の由来である。
2楽章の優しさとほのかな哀しみを感じる旋律は、ソロの高音と伴奏の低音が合わさって深みを増し、またヴァイオリンとクラリネット、ヴァイオリンとホルンといった管楽器との掛け合いも聴きどころである。
やはり3楽章が白眉。はっきりしたリズムや音階の運動があるスケルツォは、ヴィルトゥオーソを感じるのに最適な素材なのかもしれない。高速の上下運動が完璧に決まれば、失神ものの魅力が味わえる。
そして4楽章が、この協奏曲を取り上げる理由となったものを含んでいる、つまり、感情的なものと機械的なものの混在という点だ。
一瞬聴くには何気ない旋律の中に、超高音域や跳躍が現れ、それこそ機械が演奏するのを聴いたら気にも留めないような自然な流れの旋律に超絶技巧が潜んでいるのである。
また、精密さを要される細かな動きが、ごく心地よい音楽の背景として延々と続く部分など、技巧的作業が自然な音楽の流れの中に調和して存在する良い例だろう。
ヴュータンの協奏曲が魅力的なのは、そういった形として「ヴィルトゥオーソ」を体現させる曲として、音楽を作ったからなのかもしれない。
技巧と情感が相乗効果のように魅力を引き出す曲とも言えるのだろうか。ともあれ、この曲の美しさは本物である。
その証拠に、4楽章を聴いてその旋律を愛せない者はおそらくいないだろう。

ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番&第5番 ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番&第5番
パールマン(イツァーク),ヴュータン,バレンボイム(ダニエル),パリ管弦楽団

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