ドビュッシー、ラヴェル、ルクー:ヴァイオリン・ソナタ

ルクー ヴァイオリン・ソナタ ト長調


1870年に生まれ、1894年にわずか24才という若さでこの世を去った、ベルギーの天才作曲家ギョーム・ルクーの、最も有名な作品と言える。
彼はベートーヴェンやワーグナーの音楽と出会い、その魅力に心奪われ、作曲を目指したという。
いつもベートーヴェンの弦楽四重奏のスコアを持ち歩いていたとか、バイロイトで「トリスタンとイゾルデ」を聴いた際失神して担架で運ばれたとか、その傾倒ぶりを示すエピソードが語り継がれている。
その才能を見出したヴァランという和声の教師が、フランクの下へ彼を送り、フランクも懇意にしたそうだ。
フランク亡きあとは、弟子のダンディをして「彼はほとんど天才」と言わしめ、デュカスにもまた「年長の作曲家たちが羨まねばならないほど素晴らしい円熟味の持ち主」と讃えられるなど、まさに早熟の天才だったのだ。
ルクーは1891年、ローマ大賞に応募するが、次席という結果に満足せず受賞を辞退。しかしそのとき、ベルギーの大ヴァイオリニストであるイザイが彼の作品を聴いて感銘を受け、ルクーにヴァイオリン・ソナタを依頼する。
同郷の名手との出会いは、ルクーの名を後代まで残すこととなるこの名曲を生み出す契機となった。
1892年、死の2年前だが、早すぎる彼の晩年の作品であるこのヴァイオリン・ソナタが完成する。初演はイザイ夫妻によって行われた。


この曲を初めて聴いたときは正直びっくりした。こんなに素晴らしい曲を作った人がこんなに知られていないなんて、と。
特に1楽章の冒頭から、その感動は一瞬にしてやってくる。曲が始まったその瞬間から、ヴァイオリンは聴く者の心を不思議なオーラで包み込むのだ。
やさしい序奏、情熱的な主題、転調を繰り返しつつも、そのオーラは常に不変で、定まった世界観の中を漂流する。
2楽章はベルギーの民謡がモチーフになっている。息の長い旋律が、さらに世界の奥行きを拡げていく。
またしてもルクーらしい情熱的な旋律に帰する3楽章は、波打つようなピアノの上を力強く歌うヴァイオリンが非常に印象的だ。1楽章の序奏のテーマも現れ、特にコーダでは、まるでこの曲は1つの夢だったかのような、完結した世界の中を漂ってきた感覚だ。
1楽章の冒頭の感動と、3楽章で再現される感動は、この曲の絶頂と言って良いだろう。フランク直伝の循環形式が、ルクーのこの独特な香り立つ世界を最後まで保ち続けているのだ。
夭折したルクー、短い人生ではあったが、その才能の高さと、その知遇を得ることとなった多くの音楽家たちとの出会いが、この名曲を後世にまで伝えてきた。
フランク、ダンディ、イザイ・・・彼らがルクーを見出したことは、音楽史上の僥倖だったことは、論を待たない。
現代に生きる者として、ルクーの音楽そのものが、出会えて良かったと思えるものだ。
本当に良い音楽に出合った。こういう愉しみがあるから、クラシックから離れられないのだ。

ドビュッシー、ラヴェル、ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ドビュッシー、ラヴェル、ルクー:ヴァイオリン・ソナタ
カントロフ(ジャン=ジャック),ドビュッシー,ラヴェル,ルクー,ルヴィエ(ジャック)

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