伝説のチェリスト・ジャクリーヌ・デュ・プレ

エルガー チェロ協奏曲 ホ短調 作品85


秋も深まって寒さを感じるような季節になったとき、つい聴きたくなってしまう曲のひとつに、エルガーのチェロ協奏曲がある。
少々重苦しいくらいのチェロでちょうど良い。じっくりと音に浸るのが心地よい季節に聴くのが良いように思う。
1919年、エルガー62歳の作品で、円熟したエルガーの音楽の魅力がたっぷり詰まっている、人気の高い名曲である。
1911年の作である交響曲第2番が振るわなかったこと、また第一次世界大戦の影響もあり、愛国的な楽曲を生みだすことに尽力していたエルガーが、真の意味で高度に芸術音楽的な作品として成功を収めたのが、このチェロ協奏曲であった。


秋と言っても鮮やかな色を想像するようなものでは決してない。しかし、地味な色だがその色艶は尋常ではない程の美しさを見せる。
チェロの独奏から始まる1楽章、その冒頭のカデンツァが、晩秋・初冬の空気と相まって、身体を震わせる。
エルガーらしさと言っても過言ではない“Nobilmente”を十分に感じ、張り詰めた空気の振動と少し悲哀さえ感じる高貴さを体感すれば、音楽とはこうも深いものかと思い知る。
2楽章、ペルペトゥーム・モビーレ(無窮動)には、一体何を急いでいるのかと尋ねたくなるような、物悲しい様子がうかがえる。音楽はは時折立ち止まるが、それが一層効果的だ。
哀愁を帯びた旋律が堪能できる3楽章をこの曲の白眉に推薦するファンも多いだろう。チェロは絶えず歌い続けるが、決して出過ぎた真似はしない。静かに佇んで、それでいて凛とした存在感を示す。
4楽章もそうだ。この曲は爆発がない芸術なのだ。特に最後のチェロ独奏が再現される部分は、重厚であり激しい情感もあり、さらにオケの慟哭も勿論あるが、非常な感動を湛えつつも、ある特有の空気感が保持され続けている。これを芸術と呼ばずにどうしようというのだ!
聴き終えて、「人生の晩秋」という言葉がふと過る。さもありなん。
それにしても、どこまでも英国らしい音楽である。
ドヴォルザークやシューマンのチェロ協奏曲と並び、チェロ協奏曲の名曲として数えられるが、それらだって深みのある曲である。しかしエルガーのものは深さの角度が違う。別次元の深みに到達している。
渋い、本当に渋い。それは英国の空気であり、そこが素晴らしい。

伝説のチェリスト・ジャクリーヌ・デュ・プレ 伝説のチェリスト・ジャクリーヌ・デュ・プレ
デュ・プレ(ジャクリーヌ),フォーレ,ブルッフ,エルガー,パラディス,シューマン,ロンドン交響楽団,ウィリアムス(ジョン),ムーア(ジェラルド),ジェイスン(ロイ),エリス(オージアン)

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