京都をイメージとした作品集

外山雄三 京都幻想


「管弦楽のためのラプソディ」で有名な日本の作曲家、外山雄三の管弦楽曲。
何といっても上述の曲はインパクトが強い。どっこいしょ!って感じの音楽だが、こちらは全くそんな感じではなく、静的な和の趣きが佇む音楽である。
まあ「管弦楽のためのラプソディ」も大好きな曲なので、それについての思いのたけはまた今度熱く語ることにして、今回は知名度こそ劣るが、なかなかの名曲と思われる「京都幻想」を取り上げることにする。
京都市文化事業基金によって委嘱され、京都市交響楽団が演奏する「京都をイメージとした作品」の1つであり、外山雄三の他には、間宮芳生、三善晃、團伊玖磨、林光、新実徳英、細川俊夫といったお歴々が並ぶ。
まあ基本これらはいわゆる現代音楽であって、ちょっと取っ付きにくいというのもあるし、ぶっちゃけ「え、何が京都なの?」っていうのもある。
現代芸術とは難解なものである。僕も美術館でトマトと亀の置物を置かれて「ギリシアの悲劇」と題された作品を見た時はうーんと唸ってしまった。
話が逸れたが、中でもこの外山の「京都幻想」は、京都の民謡を直接モチーフとして使用している作品であるため、ある程度聴きやすい。
他の委嘱作品などを考慮しても、この企画は「in京都」の芸術制作というより「from京都」の芸術発信という構想を感じるが、この作品からはしっかりとした京都のイメージが受け止められるのだ。


使われている民謡は岩滝町の「追分」、美山町の「ねんねしなされ」、そして「一条戻り橋」である。
このうち並々ならぬ重きが置かれているが、「一条戻り橋」だ。
「一条戻り橋、二条の生薬屋、三条酒屋に、四条の芝居~」と続くこの歌はわらべ歌であり、それぞれの名物が歌われている。
ノスタルジックな雰囲気を持ったわらべ歌と、鳴り続ける鐘の音が、この曲全体の雰囲気を作り出しているのだ。
思うに、京の都というだけあって、京都と言えど都とそれ以外では大きく違うものである。
追分や子守歌といった一般的な民謡を、都の伝統的な唄がまとめこみ、ひとつの統一性ある情趣を生みだす。この作風と京のイメージが重なりあっているかのように思われる。
一条戻り橋には数多くの伝説がある。『撰集抄』では、この橋のたもとで父を亡くした修行僧の子が父の葬列に出会い、祈りを捧げると、父が生き返ったという記述がある。
『平家物語』には、この橋で鬼が女に化け、渡辺綱を捉えて愛宕山の方へ飛んでいったという話が収められている。
民謡ひとつでちょっと話を膨らませな気もするが、様々な伝承は「幻想」に相応しいだろう。
京都は僕にとって色々な思い出のあるところで、そういう意味で少し特別な思いを持って聴ける音楽でもある。
情緒や温度、距離感など、すべて独特な風情を持って聴く者と対峙する、この不思議なイメージは、僕の京都のイメージとも相違ない。

京都をイメージとした作品集 京都をイメージとした作品集
京都市交響楽団 小泉和裕,外山雄三,林光,新実徳英,細川俊夫,石井眞木,小泉和裕,京都市交響楽団,赤尾三千子

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