ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番

ショパン ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21


今年はショパン・イヤーだというのに、彼の作品を取り上げないで1年を終えるという訳にはいかない。
ショパンの作品の中でも、協奏曲というのはやや「特別」なものだ。
それは彼の協奏曲が、他のピアノ独奏曲よりも優れているから、という理由ではない。むしろショパンの音楽の真骨頂はピアノ独奏曲にあると言える。
ではなぜ協奏曲が特別か。ショパンの音楽を愛し、その記念すべき年を祝うにあたって、オーケストラとピアノというこの大きな形態は、ソロコンサートと比べて見た目の華やかさや音響の壮大さが、ひときわ祝祭的なものだ。
ステージ上で、普段より多くの音楽家たちがショパンの音楽を奏でる様子は、ピアノ・ファンのみならず、すべての音楽好きにとって、自然と笑みがこぼれてしまうものだ。
やはりこういう記念すべき年の音楽にこそ、このピアノ協奏曲は適していると言えるだろう。
ショパンはピアノ協奏曲を2曲しか書いていないが、その両方とも実に素晴らしい名曲である。
第1番よりも先に出来上がったこの第2番は、弱冠19歳のショパンが、当時ワルシャワ音楽院の声楽科に通っていた少女コンスタンティア・グラドコフスカへの恋心を表した作品で、青春真っ盛りの「純愛モノ」と言えよう。
本当に純愛である。当時ショパンは彼女と話したことすらなかったのだから。彼女に心惹かれたショパンは、友人ヴォイチェホフスキに宛てた手紙に、彼女のことを想いながらこの曲を作ったと書き残している。


インパクトとしてはどうしても1番に劣るのだが、非常にロマンティックで詩情あふれる魅力が2番の特徴だ。
第1楽章はよく協奏曲風のソナタなどと説明されるが、まああまり難しく考えなくても良いだろう。弦楽を中心としたヘ短調の第1主題、管楽器が活躍する変イ長調の第2主題は、それぞれ恋愛ならではの「気恥ずかしさや緊張感」と「秘めたロマンティックな想い」を表しているようだ。
また1番でも同じようなことを述べたが、まるでピアノ曲かと思うほどの豊かなピアノ独奏もショパンらしい味わいである。
第2楽章のラルゲットはまさしく純情の表れである。ときに激情も見せる、不安定で、それでいて憧れのような恋心。ここは殆どピアノの独壇場である。初演はショパン自身のピアノによって行われたが、まさしくピアニストは、ここではショパン彼自身になる。
僕はバラード1番が好きなので、ここで似た旋律が出てくる部分がやはりたまらなく好きだ。
そんなショパンの想いは第3楽章でポーランドの舞曲風に綴られる。コル・レーニョの上にピアノが乗る部分は独特な雰囲気だ。
印象的なホルンの奏でをサインに、華麗なコーダに突入する。ここで1楽章でもサインになっていたホルンを思い出すと同時に、ヘ短調で表された胸の苦しさをも思いだす。
コーダでは一転してヘ長調になり、明るさを伴って、今までの抒情的な音楽に花を添えるのだ。
心の内に秘めた想いや、恋心の激しさ、そういった様々なものが、単にヴィルトゥオーソというだけでなく、また内省的にもなりすぎず、非常に美しく表現されている。
ショパンがピアノの詩人と言われる理由もわかる。構成はやや粗いかもしれないが、ここには紛いも無く、美しい青春の情景がある。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番 ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
ブーニン(スタニスラフ),ショパン,コルド(カジミェシュ),ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

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