ピアノ五重奏曲

カプースチン フルート、チェロとピアノのための三重奏曲 作品86


新年最初に取り上げるのは、クラシックの枠からちょっとはみ出ているかもしれない、カプースチンの作品。
カプースチンというとピアノの独奏曲が有名だが、彼の室内楽や協奏曲もなかなか興味深い。
特にこの作品は、聴いた瞬間に惚れてしまった。カプースチンはこんなにオシャレなのか、と特に3楽章は吃驚。
フルート、チェロとピアノのための三重奏曲は、1998年の作品。意外な編成だが、伝統的なピアノ三重奏曲のヴァイオリンがフルートに入れ替わったものである。
しかし、伝統的なピアノ三重奏と言うよりも、チェロとピアノはジャズ・トリオ(ピアノ、ベース、ドラム)を担い、フルートがトランペット、チェロがサックスのように活躍し、まるでジャズ・クインテットでセッションしているかのような雰囲気である。
3者が皆忙しく様々な役を入れ替わり立ち替わりこなす様子はすさまじく、それはすべてカプースチンが精密に設計したものであるから驚きである。


第1楽章のアレグロ・モルト、重厚なピアノの和音が飛び込むと、フルートが軽やかに高音を口ずさみ、最後に気取ったようなチェロが現れるとさあ役者は揃った。
しばしの準備体操の後、ピアノのジングルとスウィングルな前奏に導かれ、テーマに入る。
フルートはだいたい主役を主張し、甲高い音で攻撃的な姿勢をとる。チェロはピッツィカートでウォーキング・ベースになりすましたり、優雅な弦奏を醸したりと忙しい。
そんな2人を上手く支えてエスコートしながら、実は常に一番目立つ役者であり続けるピアノ。効果的なブレイクも、絶妙なグルーヴも、ピアノが鍵となっている。ラストは徐々に消えてゆくかと思うと、強烈なフィニッシュで3人は主張し続けるのだ。
一転して第2楽章アンダンテは緩徐楽章。三者三様に夜の雰囲気を奏でる。
フルートによってメイン・テーマが提示されると、今度はチェロがそれに応え、さらに情熱的に歌う。増してフリー・ジャズの趣きだが、そうはなりきらない予定調和的な音楽が、落ち着きとも不安ともとれない、宙ぶらりんな空気を作りだしてしまう。
後半はフルートとチェロだけの掛け合いもあり、全体としてピアノは抑え気味である。だがそれらは全て終楽章への布石である。
そして第3楽章はアレグロ・ジョコーソ、押さえこまれていたピアノが弾けるように飛び出して、3楽章のテーマをひとりで奏できる。
出遅れたのを悔むように、フルートは必死で自己主張する。以降、ピアノvsフルート&チェロで小競り合いをしつつテーマを奏でるが、やはりピアノが一歩リード。
それでも負けじと、チェロはあらぬ高音を引っ掻き、フルートはむきになって倍音を鳴らす。
所々で1楽章、2楽章の回想も交えつつ、ピアノの下降系アルペジオを合図に、遊びの時間の残りわずかなことを知らされると、3人は一層激しさを増す。
クライマックスはどんどん勢いを付けて、気づいたら3人横並びで、手まで繋いで、繋いだ手をぶんぶん振り回しながらこっちに向かって来るじゃないか!!

ピアノ五重奏曲 ピアノ五重奏曲
カプースチン(ニコライ),ザゴリンスキー(アレクサンドル),ステプチェンコ(スヴェトラーナ),コルネーエフ(アレクサンドル),チェルノフ(アレクサンドル),スペクトル(ウラディーミル),ルビンシテイン(マリーナ)

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