Mozart: Piano Concerto No. 9 & No. 27

モーツァルト ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」


今回はちょっと攻めて書いてみようと思い、変なことを書いても許してくれるであろうモーツァルトさんにしてみたのだ。
ベートーヴェンやブラームスについて適当なことを書いてしまうと、なんだか厳つい霊の祟りに遭いそうで恐ろしいが、モーツァルトはもともと適当な(しかし天才な)男なので、きっと大丈夫だろう。
モーツァルトのピアノ協奏曲は第1番から第27番まである。「ピアノの詩人」と呼ばれるショパン大先生はたったの2つ。その多作さは尋常ではない。
中でも人気のあるものは20番や21番、26番「載冠式」など、20番以降のものだろう。あまり番号の若いものの方は演奏されないのだが、この9番「ジュノム」は比較的演奏機会に恵まれる作品だ。
ジュノムとは、モーツァルトがこの曲を作ろうと思うきっかけとなった女性ピアニスト「ジュノーム嬢」(正しくはジュノーミ嬢)のことである。
この人物の詳細は不明だが、やはり一人の女性のために作曲したという経緯だけで、この曲への好感はぐっと高まる。
晩年のピアノ協奏曲の人気が高いのは、もちろんその完成度が高いからだが、この「ジュノム」はそれらに引けを取らない、内容の濃い作品である。ジュノーミ嬢はなかなか素晴らしいピアニストだったのだろうか。
さて、僕はモーツァルトのピアノ協奏曲の中で、この曲が最も好きである。
その理由はずばり、「序奏が美しい」からだ。もう始まって数秒の音だけで、得も言われぬ幸福と頬の緩みをもたらしてくれる、なんと美しい序奏。


「E♭、E♭・G・B♭・B♭・B♭」とオーケストラ、すぐさまピアノが答える「B♭E♭・F・G・B♭AGFE♭・D(トリル)・E♭」。
たったこれだけのことで、なぜこうも人を幸福にさせるのだろう。音楽の素晴らしさをしみじみ感じる。
当時のモーツァルトのピアノ協奏曲は、オーケストラによる主題の提示がしばらく続き、それからピアノが登場するという形式だった。こういうことについては以前ショパンのピアノ協奏曲の時に少し書いた(記事はこちら)。
こんなにすぐにピアノが登場するというのは、モーツァルトの中ではやや奇をてらったものだったのだろう。このオケによるたった6音の序奏の美しさに感動すると、すぐさまピアノによる愛らしい返答にさらに感動が重なる。
このド頭の感動は何なのだろうと思って考えてみたら、この曲と、僕の最も好きなクラシック曲である、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」との類似点だった。
「ジュノム」のピアノが早々に現れるという手法は、ベートーヴェンにも影響を与えたらしい。偶然にか、変ホ長調というところも共通している。
クラシック音楽を聴くようになったきっかけである「皇帝」、その「皇帝」に大いに影響を与えた「ジュノム」は、モーツァルトのピアノ協奏曲の中で最も強い印象を僕に与えた曲だ。
多くのモーツァルトの作品については言えることだが、有名な「アイネ・クライネ・ハナト・ムジーク」も、交響曲第41番「ジュピター」も、ややマイナーかもしれないがピアノ四重奏曲第1番も、ほんの一瞬の序奏に身震いするほどの美が存在している。
ほぼ序奏についてしか書いていないが、その序奏の美しさは、音楽の素晴らしさそのものだ。

Mozart: Piano Concerto No. 9 & No. 27 Mozart: Piano Concerto No. 9 & No. 27
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