オネゲル:交響曲全集

オネゲル パシフィック231


オネゲルという作曲家がいる。Honeggerという綴りでオネゲルと読むのだから、フランス語はわからない。
いわゆる「フランス6人組」のひとりである。オネゲルは幸運にも、ミヨー、プーランクに並んで、“日の目を見る”方の3人であり、“日の目を見ない”方の3人である、タイユフェール、デュレ、オーリックについでも、順次取り上げていきたいという気概は十分にある。
それでもこうして前者の3人を先に取り上げてしまった。これはもうどうしようもないことなのだ。
御託は置いておいて、パシフィック231の話に戻ろう。オネゲルの代表作とも言えるこの曲は、原題を“PACIFIC (231) Mouvement Symphonique”といい、日本では「交響的運動」と呼ばれたりもする。まあ普通の管弦楽作品だ。
さてさて、パシフィック231とは何のことなのかというと、これは蒸気機関車の車軸配置のことらしい。車軸配置とは? まあ、この辺の詳しい話は、所謂「鉄道ヲタク」さんたちにお任せすることにしたい。僕はクラシックヲタクなので、ちょっと専門が違いますゆえ。
ただ、車軸配置の名称として、アメリカ式で「パシフィック」というものが、フランス式で「2-3-1」と呼ばれるそうで、つまりパシフィック=2-3-1なのである。あと間違っても、231を「にひゃくさんじゅういち」と読んではならない。コンサート会場ではきちんと「に、さん、いち」と読まないとモグリだとバレてしまうから気をつけましょう。
なんにせよ、この曲は鉄道ファンにとっては重要な音楽作品である、とクラシックファンの立場からは声高に訴えさせていただきたい。
両親がスイス人のオネゲルは、この曲をスイス・ロマンド管での活躍で名高い、僕のとっても大好きな指揮者エルネスト・アンセルメに献呈している。


この曲は、音響を楽しむ作品である、とまず断っておかなければならない。
これといった美しいメロディーはない。僕はあまりそういう曲を好きにならないのだが、もちろん好きになることもある。芸術として、美しいメロディーに対抗できるほどに精巧に作られていたり、魂を感じる音楽なら、やはり心に響くものだ。
蒸気機関車が発車して徐々に加速する、という描写を表す音楽はたくさんあるし、吹奏楽経験のある僕はスパークの「オリエント急行」やナイジェル・ヘスの「グローバル・バリエーションズ」、ウィテカーの「ゴースト・トレイン」などでそういう音楽を何度も経験しているが、やはり1923年にこれを作ったと考えると、オネゲルの才覚には戦慄する。
というかもう、言ってしまえば大体のそういう音楽作品はオネゲルの模倣と言ってしまっても大体差し支えない。
徐々に指定テンポは落ちていくのだが、リズムが細かくなっていき、早くなっているかのような効果をもたらす技法は、ウィテカーも全く同じように参考にているだろう。
ただ、メロディーの有無という違いはある。しかし、メロディーはなくとも、蒸気機関車の力強さが現れているオスティナートのリズム、そしてその一方で音の色彩が非常に豊かである点、まさしく蒸気機関車だ。
僕の故郷では最寄り駅にもよく蒸気機関車が走っていた。もちろん、当時の蒸気機関車とは違うだろうが、あの力強さにはワクワクするものだ。
鉄道ファンの中でも、発車メロディーや走行音などを研究なさる「音鉄」と呼ばれる部類の方々には、これはなかなか垂涎モノなのではないだろうか。
新幹線に乗るとウキウキしちゃん僕のような「プチ乗り鉄」にはよくわからない世界だが、鉄道関連クラシックの中の金字塔と言える。

オネゲル:交響曲全集 オネゲル:交響曲全集
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団,オネゲル,ボド(セルジュ)

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