ロッシーニ序曲集

ロッシーニ 歌劇「絹のはしご」序曲


ブログで記事を書くにあたって、僕はロッシーニの数ある歌劇の中で、まず「泥棒かささぎ」を選んだ。次に選ぶのはこの「絹のはしご」である。
なぜ「泥棒かささぎ」を書いたかはそちらの記事を見ていただきたいのだが、ウィリアム・テルとセビリアの理髪師については、ちょっと語りがたいというのもある。
両方とも、知名度、名曲としての風格、申し分ないのだが、特に思い入れがないため、どうも筆を持つ手が進まない。
ではその点、この「絹のはしご」には相当の思い入れでもあるのかというと、別にそれほどのものはない。
しかし、テルと理髪師を除いて何か書くとしたら、泥棒かささぎを書いてしまったので、絹のはしごになるのは必然と言える。
“必然”と強い言葉を使っても何の問題もないくらい、この曲はロッシーニの歌劇序曲の中で突出して美しい名曲なのだ。
意味なくこの曲を選んだという訳ではない。


筋書きは実にくだらない(といっても歌劇にはそういうくだらないものが多いのだが)ドタバタ・ラブコメディと言ったところ。
ヒロインのジュリアは後見人のドルモンに隠れて、毎晩窓から絹のはしごを下ろし、夫ドルヴィルと密会を重ねていた。それを知らないドルモンは、ジュリアをブランザックという男と結婚させようとするのだが、このブランザックというやつもまた面倒なことに、別の女に恋をしてしまい……というストーリー。
最後は結局みんな上手くいって大団円、という一幕もの。一幕というこの短さのせいか、ほとんど歌劇として上演されることはない。しかし序曲はしばしば取り上げられる名曲だ。
印象的な冒頭のメロディーはやはり弦楽。やはり、と言ったのは、何となくだが、この下降する旋律は、絹のはしごを窓から垂らしているイメージなのだ。その絹のはしごがさらっと垂らされる素材感・優美な雰囲気は、弦楽器であるべきだろう。
あとは取り立てて言うこともない、むしろケチの付けようがない、ロッシーニらしい豊かな感情が現れる旋律。テンポも小気味良く、引っかかるところは何も無い。
こういう曲は特に書くことがなくて困るのだ。あまり批判的なことを書くのは少し無粋にも思える、それだけ純粋な美を湛えている音楽だと思う。
やりすぎた感がないのがロッシーニの良さだろう。プッチーニではこうはいかない。そういえばまだプッチーニの記事をひとつも書いていないな。ロッシーニと甲乙つけ難いくらい好きではあるのだが。
まあ、僭越ながら一言申し上げれば、木管楽器の技量が問われるオーケストレーションとなっているように思える。
もちろん、それだけに卓越した木管奏者が吹けば、この曲の魅力は倍増する。素朴な美しさを味わいたい。

ロッシーニ序曲集 ロッシーニ序曲集
シャルル・デュトワ,ジョアキーノ・ロッシーニ,モントリオール交響楽団

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