Pno Trio/Son Vln/Adagio for Vln & Pno/+

タイユフェール ピアノ三重奏曲


タイユフェール、先日更新したオネゲルと同じくフランス6人組のひとりで、名前を聞いたことがある人は多いかもしれないが、曲を聴いたことがある人は相当のクラシック・ファンでもかなり少ないのではないだろうか。
ほとんど演奏されることはない作曲家だが、縁あって音源を紹介してもらい、彼女の(タイユフェールはフランス6人組の紅一点です!)音楽に触れる機会があった。
なるほど女性らしいたおやかさというものを備えているなあなどと思ったが、実はタイユフェールは案外激しい方だったようだ。
パリ音楽院の学生時代は、ピアノ科の試験の最中、無意識にバッハを移調して演奏して試験官である院長フォーレを驚かせたり、オルガン科で即興演奏の学習中によりにもよってストラヴィンスキー風を選んで教授の逆鱗に触れたりと、なかなかの“おてんば”だったようだ。また、気球の免許なども取得している。
なによりかの名ヴァイオリニスト、ジャック・ティボーとは愛人関係にあったと知ったときは驚いた。
僕はピアノ三重奏曲というスタイル(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ)が大好きで、シューベルトをはじめシューマン、ベートーヴェン、モーツァルト、メンデルスゾーン、ドヴォルザークといった有名所はもちろん、ラヴェル、ドビュッシー、ショーソンといったフランスもののピアノ三重奏曲はかなりお気に入りである。
また女流作曲家のピアノ・トリオではロベルト・シューマンの妻、クララ・シューマンのピアノ・トリオも愛聴している。こちらもまことに良い曲なので、いつか取り上げるつもりだ。
そういう意味で期待を込めて聴いた曲だが、どうだったかというと、案外掴み所が難しく、ぱっと聴いてすぐに惚れるというものではなかった。全体の雰囲気はいかにもフランスらしくてそこはすぐに好感を持ったのだが。


4楽章形式で伝統的なピアノ三重奏曲だが、演奏時間は12~13分ほどと短く、非常に聴きやすい。
1楽章Allegro animato、聴いてすぐに、印象派風の不思議に漂う空気感に包まれる。3つの楽器がそれぞれ厚い層をもって重なり合い、周囲の景色を一瞬にして上書きしてしまうようだ。
ころころと変わる調性に、はじめのうちはちょっと不慣れで違和感を感じるかもしれない。しかし何度も聞いていく内にそれは楽しめるようになる。
2楽章Allegro vivaceはメロディーがややはっきりしている分、すぐに楽しめる楽章だろう。弦楽の旋律を支えるピアノの和音の変化などは興味深いところだ。3楽器のリズムが揃うところなどは、分厚い和音で聞いていて力を感じる。
緩徐楽章となるのだろうが、3楽章Moderatoは一番毒気のない楽章だろう。しかし、なんだろう、全身を委ねたくなるような音楽ではないと言ったところだろうか。緩徐楽章には全身を委ねたくなる音楽も多いが、この音楽には、もっと言えばタイユフェールという女性には、すべてを許してはならないような気がしてしまう。
もっとも嫋やかな楽章には違いないが、僕個人としてはこういう女性は少し苦手かもしれない。ただ、こういうのが好きな人もいそうではある。
4楽章Trés animéは少しおどけたような雰囲気も感じる。しかしその道化もプーランクなんかと比べるといっそう辛辣で、動きのゆっくりしたところへと場面が移っても、どことなく刺々しい感じが常につきまとっているようだ。
全体を通して、そういうちょっと近寄り難いオーラを漂わせている音楽である。当然、それは魅力に違いない。
すべてを委ねたくなるような人もいれば、遠くから眺めているだけで美しい女性もいるだろう。どちらかと言うと後者な音楽。
僕もまだまだタイユフェールについては勉強不足である。いずれは、眺めるだけでなく、深いお付き合いをしてみたいものだ。

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