ドヴォルザーク:「アメリカ」/スメタナ:「わが生涯より」

ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 作品96「アメリカ」


ドヴォルザークについて記事を書くのも久しぶりだが、最近別の所で「僕は西洋音楽の中に日本の、日本人の心のふるさとのようなものを見出すということに興味を持っている」といった内容の文章を書いたので、ここでその一例とも言える作品を紹介しよう。
まあ、そういった内容については、実はこのブログでは何度か取り上げている。ヴォーン=ウィリアムズの幻想的五重奏曲や、邦人作曲家のいくつかはそうだ。
これからも積極的に取り上げていって、考えを深めていきたいと思っている。
日本人がノスタルジーを感じるクラシック音楽として、アメリカ時代のドヴォルザークはその代表とも言える。
ドヴォルザークは1892年9月にニューヨーク・ナショナル音楽院の院長として渡米した。黒人霊歌やフォスターの歌曲に大いに影響を受け、交響曲第9番「新世界」を作り上げ、次に手がけたのがこの弦楽四重奏曲である。どちらもドヴォルザークを代表する作品であるし、アメリカから帰国する間際に書かれたチェロ協奏曲も人気の高い名曲だ。
新世界を書き終えたドヴォルザークは。アメリカでの最初の夏期休暇を、故郷ボヘミアからの移民が多いスピルヴィルという小さな町で過ごした。
ドヴォルザークのアシスタント兼秘書である、音楽院の学生ヨゼフ・ヤン・コヴァリックという人物の父親が、スピルヴィルで聖歌隊長をしており、彼の家に招かれたのであった。
コヴァリックの回想によると、「(ドヴォルザークは)同国人らの中にいるという実感が祖国を思い出させるとともに、故郷にいるような感覚にさえしたようだ」とあり、故郷の雰囲気を懐かしんでいたことがわかる。
ドヴォルザークはコヴァリック一家が演奏するために驚くべき速さで作曲し、1893年6月8日に着手してから6月23日にはもう完成させた。


1楽章、2楽章とも、五音音階が使われている。それが日本人にとっての親しみやすさの理由だが、単にそういった技法的な話だけをしても仕方ない。
やはり「望郷」というテーマがひとつ、そういった日本人の感じるノスタルジーに関わっていると思いたい。
ドヴォルザークはアメリカの音楽に刺激を受けながらも、やはりチェコ国民楽派を代表する作曲家と言うだけあって、故郷チェコへの思いも相当募っていた。
チェロ協奏曲作曲時などはもうホームシックが限界で、気持ちも身体もボロボロでアメリカを去るのだが、まだこの「アメリカ」四重奏曲の頃は精神的にも良好だった頃だろう。
そのあたりが音楽に反映されていると思われる。4楽章の浮くような心地よいリズムは本当に楽しい。ホームシック気味ではあったのかもしれないが、作曲背景と、そしてこの曲そのものから主に伝わるのは、異国で感じた「故郷の良さ、楽しさ、素晴らしさ」などのプラスな要素だ。
こういった望郷の念、ドヴォルザークの心が故郷ボヘミアを見ているような、そんな思いを音楽から感じるとき、僕はいっそう親しみを覚える。
西洋音楽の中に日本人の心のふるさとのようなものを見出してしまうくせがあるのだが、それは僕が「帰るべき場所」へと自然と赴いているようなものなのだろう。
この音楽には、日本人だからこそ感じうるノスタルジーが込められている。
それはドヴォルザークの選んだ手法がたまたまそうさせたという幸運と、そしてドヴォルザークの魂がそうさせたという必然性だ。

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