ハンガリー田園幻想曲~フルート音楽の愉しみ(日本独自企画盤)

ドップラー ハンガリー田園幻想曲 作品26


ドップラーと言っても、あの「ドップラー効果」のドップラーではない。このフランツ・ドップラーは19世紀にオーストリアで活躍したハンガリー人の作曲家だ。
フルート奏者でもあったドップラーは、フルート協奏曲やフルートのための小品を残しており、むしろ今日ではフルート作品以外にはあまりお目にかからない。
たまに目にするとすると、リストのハンガリー狂詩曲の編曲者としてであろう。リストと共同作業をとったこともあってか、ドップラーのフルート曲のピアノ伴奏などは、やはりどことなくリスト的なピアニズムが見られる。
この「ハンガリー田園幻想曲」も、フルートと伴奏(管弦楽またはピアノ)の作品であり、ピアノ伴奏にはそういう側面がある。それだけでなく、フレーズなどからも、リストのハンガリー狂詩曲第2番と似たようなものを感じる。
ドップラーの作品の中で最も有名なものだが、これは実は日本での人気によるところが大きい。
名フルート奏者マルセル・モイーズのSP盤が戦前の日本で人気を博していたのだが、その中にこの曲が収録されていて、来日するフルート奏者へのリクエストが多かったそうだ。ヨーロッパでの知名度が上がったのはそのおかげだと言っても良い。
人気にはもちろん、マルセル・モイーズの名演があってことだが、それに加えて、この曲の日本風な音楽に聴こえる部分の多さもまた理由のひとつだろう。
戦前の日本であれば、やはりそういう曲の人気が高まるのもうなづける。特にフルートという楽器は、日本古来の笛とも近い音色だし、なおさらだ。


10分ほどの長さで、長さもほどよく、メロディーも親しみやすく、非常に聴きやすい。
曲の構成は3つの部分からなる。モンティのチャルダッシュなどと同じようなわかりやすい緩急の形式だ。
東洋風な哀愁を感じるゆるやかな旋律から始まる。特に冒頭部分などは、思いっきり日本の追分。民謡そのまんまといった感じだ。
そしてそういう日本風な旋律が、フルートのソリスティックな演奏によって、繰り返し繰り返し現れる。前半のこういう部分が、まるで和装で民謡を朗々と歌っているような、そんな絵が浮かぶ。
このように、日本人には受け入れやすい音楽から始まり、中間部になるといきなり正統派クラシックの響き。聴いている者はごく自然に、東洋風から西洋風へ移動できる。
そしてクライマックスには、フルートの技巧が映えわたるチャルダッシュ。怒涛の勢いというほどではないが、様々な美しい旋律が、代わる代わるリズミカルかつスピーディーに演奏されるのは心地よい。
ハンガリーの作曲家というと、もう少し後の時代だが、コダーイやバルトークといったリストより民族色の強い作曲家も知られているが、ドップラーのこの作品からは、リスト時代のロマンティシズムと、コダーイやバルトークのような色の濃さが感じられる
それはハンガリーの民族音楽であると言い切ることはできないが、この東洋風のテイストが、東欧らしいと言えるのではないだろうか。
正直あまり資料のない作曲家で、確信をもって語るのが難しいのだが、楽しい曲であるのは事実。
朗々たるフルートの歌声や、様々に味の変わる楽しさに酔いしれたい。

ハンガリー田園幻想曲~フルート音楽の愉しみ ハンガリー田園幻想曲~フルート音楽の愉しみ
ゴールウェイ(ジェームズ),シューマン,ドリゴ,ブリッチアルディ,バッハ,ラフマニノフ,ドビュッシー,ビゼー,ドップラー,ゲルハルト(チャールズ),ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
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