ドビュッシー:小組曲

ドビュッシー 小組曲


今年はドビュッシー生誕150年という記念すべき年なので、連続でドビュッシーの曲を取り上げよう。
「小組曲」という、人気も高いこの作品は、僕がドビュッシー好きになったきっかけ「かもしれない」曲だ。
「かもしれない」というのは、何がきっかけでドビュッシーを好きになっていったのかわからないからというのと、もう一つ、この曲は僕が小さい頃、母が知人と弾くために練習していて、家でよく耳にしていた曲だからだ。
自然と何度も聞いた曲はやはり残るものだ。この曲のもともとの親しみやすさも伴い、僕にとっては非常に近しい曲である。
先にも書いたが、ピアノ連弾のための作品で、ビュッセルによる管弦楽編曲も評判が良い。ピアノよりもこの管弦楽版が好きだという人も多いだろう。
先に紹介した交響詩「海」は、印象派音楽の最たるものだったが、この曲はそういう印象派独特の雰囲気とは離れた、メロディーのしっかり聞き取れる音楽。それがまた、可愛らしくて聞きやすくて、本当に美しい名曲なのだ。
前半2曲はポール・ヴェルレーヌの詩集「艶やかなる宴」から題名を取っており、後半2曲はルイ14世の時代へと思いを馳せているものだ。
ドビュッシーの研究者フランク・ドーズは、小組曲について、これに先立って作られた、同じくヴェルレーヌの詩を基に作曲した歌曲「忘れられたアリエッタ」と対照的であること、ビュッセルの管弦楽編曲によって、アラベスクよりもポピュラーな曲になったということを指摘している。
小舟にて(En Bateau)、行列(Cortège)、メヌエット(Menuet)、バレエ(Ballet)の4曲からなる組曲。10分強くらいの長さで、どれも短いが、珠玉の名曲とはこのことだ。


ポール・ヴェルレーヌの詩集「艶やかなる宴」から題名を取った第1曲「小舟にて」は、組曲中もっとも有名な曲だ。よくBGMなどにも用いられ、聴いたことがある人も多いだろう。
これより少し前に作曲された、フォーレの組曲「ドリー」の第1曲によく似た構造をしている。気になる方はぜひそちらも聴いてみて欲しい。ドビュッシーが影響を受けたであろうことは明らかだ。
第2曲の「行列」は、組曲中で僕の最も好きな曲。
「管弦楽のための映像」のイベリア第3曲「祭の日の朝」を思わせるような、祝祭的なムードとその中を進むマーチングバンドの音。遊ぶ子供らの行進。これが一体何の行進を表しているかはよくわからないけれども、いずれにせよ幸福感があるのだ。
後半の2曲でルイ14世の時代へと思いを馳せることとなったのは、ヴェルレーヌの詩の内容と関わっている。詳しく知りたい方はぜひ原典に当たってほしい。
第3曲の「メヌエット」、これはやや古風な趣きだが、ドビュッシーらしい繊細で可愛らしい音楽に仕上がっている。一度聴いたら忘れられないテーマの旋律に注目したい。
そして第4曲の「バレエ」、エネルギッシュな舞曲で、管弦楽的な(という喩えはオケ版では通用しないが)広がりを持つ音楽。ルイ14世の時代に、劇場で流行っていた音楽が基になっているという。
20代のドビュッシーが、まだ印象主義に走る前の音楽であり、またヴェルレーヌの影響、フォーレの影響など、先達である芸術家たちから受け取ったものを基に生み出した音楽でもある。
僕は今こうして各々の曲の解説を書いているけれども、もともと物心がつく前に聴いていて、惹かれた曲たちである。こうした解説など、本当は(それこそ僕にとって)無駄なのだ。
それだけ美しく、心を捉える音楽である。「小さくて可愛らしい」という形容は、この組曲のためにあると言っても良い。
一般に印象派の音楽は子どもには難しいかもしれないが、この曲なら当時子どもだった僕にもわかりやすかったのだろう。ぜひ、心を無にして聴いて、ドビュッシーの可愛らしい音楽の魅力にひたっていただきたい。

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