ヴィラ=ロボス:ヴァイオリン・ソナタ全集

ヴィラ=ロボス ヴァイオリンとピアノのためのソナタ・ファンタジア第2番:潤沢な幸福


ヴィラ=ロボス ヴァイオリンとピアノのためのソナタ・ファンタジア第2番
「ブラジル風バッハ」でおなじみのヴィラ=ロボスは、ブラジルを代表する作曲家。リオ・デ・ジャネイロ生まれの彼は、クラシックにブラジルの民族音楽の語法を取り入れた作風で聴衆を魅了した。
また多作家でもあり、さらにはオーボエ以外のほぼすべてのオーケストラ楽器を演奏できたとも言われている。なかなかの鬼才である。
パリ留学の際には、ルービンシュタインやヴァレーズといった大物から賞賛されたという。
今回紹介するのはソナタ・ファンタジアという名前だが、いわゆるヴァイオリン・ソナタである。ヴァイオリン・ソナタは全4曲あり、そのうち1番と2番がソナタ・ファンタジアと性格付けられている。
普通のヴァイオリン・ソナタよりも自由な形式で書かれていることを示唆するが、形式以上に内容の自由度が高い曲だ。
ブラジルの民族音楽だったり、伝統音楽の枠を外れながら表現する感情だったりと、聴いていて面白味に満ちている作品である。
1914年に作曲された曲で、この年はヴィラ=ロボスが結婚した翌年である。その幸福感が音楽にあふれているのがわかる。
ドイツ的な旋律美というわけではないが、曲を通して、それこそブラジル的な、情熱的な旋律が魅力的だ。
ヴィラ=ロボスを語る際、ブラジル風バッハともう一つ、ブラジルのセレナーデとも言われる「ショーロ」が代表的だと思われるが、この作品も「ショーロ」にリズムを軸として展開する。ロマン派以前のクラシック慣れしていると、よく言えば非常に耳に新しい、悪く言えば耳に優しくない、そのような作品だ。
概して南米音楽は強烈なものだ。それはヒナステラの音楽を紹介したときにも書いた。しかし、このヴィラ=ロボスのソナタ・ファンタジアは、そういった強烈さもありながら、幸福感に満ちているという、一風変わった音楽といえるだろう。


20分ほどの長さで、3楽章構成となっている。
第1楽章アレグロ・ノン・トロッポは、ピアノの躍動感ある伴奏から始まり、ブラジル民族音楽の要素をリズムに取り入れた旋律がヴァイオリンで奏でられる。色彩感はまるでフランス音楽のようだが、もっともっと強く、鋭い。情熱の音楽である。
第2楽章ラルゴは緩徐楽章。伸びやかな旋律は、異国情緒を香らせながら、それこそ幻想的な美しさに満ちている。ピアノの和音やアルペジオも、まるで町のはずれでギターを弾く流しのような趣き。どこか物憂げな雰囲気もあるが、それがまた良いスパイスになっている。
第3楽章ロンド・アレグロ・ファイナル、ピアノの轟く伴奏に乗って、ちょっと変わった舞踏風の旋律が奏でられる。高音を気持ちよさそうに奏でられる旋律、という表現が良いのかどうかよくわからないが、そこにはやはり幸福感があるといえるだろう。とめどなく高音域を漂うヴァイオリンの旋律、美しく散りばめられたピアノの音色……どこまでも情熱的で、鮮烈な色を持ちながら、常に喜びを感じているような音楽。
なかなか聴く機会のない曲ではあるが、僕はたまたまブラジル人ピアニストのクラウディオ・ソアレス氏、同じくブラジル人ヴァイオリニストのクラウディオ・クルス氏の演奏会で聴いたことがある。
彼らのドビュッシーやバッハも素晴らしかったが、やはりこのヴィラ=ロボスは格別に良かった。
ブラジルならではの色彩感というものがあるのだろうか。そういうものを音として的確に表現されると、この音楽はよりいっそう素晴らしいものになる。
いわゆるサンバなどのブラジル音楽も良いだろうが、しっとりと瑞々しい音楽で、ブラジルらしい情熱や幸福感、勢いを感じるのも、またこの上ない経験である。

ヴィラ=ロボス:ヴァイオリン・ソナタ全集 ヴィラ=ロボス:ヴァイオリン・ソナタ全集
ヴィラ=ロボス,ジェニー・アベル(ヴァイオリン),ロベルト・シドン(ピアノ)

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