ゴルトマルク 序曲「イタリア」にて:“イタリア”、“ワグナー”、“ブラームス”

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ゴルトマルク:「田舎の結婚」/序曲「春に」

ゴルトマルク 序曲「イタリア」にて 作品49


カール・ゴルトマルクはロマン派の作曲家。ハンガリー出身のユダヤ人だが、音楽はウィーンに根付いていると言っていい。初期はハンガリーの子どもが歌うような民謡をもとにした音楽を作ったが、後期になると国民楽派のような音楽ではなく、古き良き伝統的なドイツロマン派の音楽を残した。特にオペラは名作として名高い。
ワーグナーの影響を受け、ウィーン初となるワグネリアン団体を発足させた。その一方で、ブラームスとも親交が深かった。オペラを作らなかったブラームスは、もしオペラを作ったらゴルトマルクのような音楽になると思う、と語ったそうである。
オペラが名高いといっても、ゴルトマルクの知名度はそう高いとは言えない。彼のヴァイオリン協奏曲が、他の有名作曲家の協奏曲の録音とカップリングになっていて耳にしたことがある、というくらいなものかもしれない。
今回紹介する曲は、ゴルトマルクの作品の中ではそれほど有名ではないが、オペラよりも気軽に聴ける演奏会用序曲である。ぜひここで、彼の作品に触れてみていただきたい。
そこでキーワードとなるのが、“イタリア”、“ワグナー”、“ブラームス”の3つである。


ゴルトマルクは、1878年にブラームスと共にイタリア旅行に出かけている。ブラームス亡き後の1903年、ゴルトマルクは再びイタリアを訪れ、聖チェチーリア音楽院の名誉会員となる。これをきっかけとして、1904年、序曲「イタリアにて」が作られたのである。
当時としてはかなり古風なスタイルな音楽ではあったが、雰囲気は明るく、管弦楽法も卓越しており、なにより魅力的な芸術の都イタリア風のメロディーのおかげもあって、聴衆の反応は非常に良かった。
低音の弾むリズムから始まる朗らかな旋律は、古典派寄りの格調高い響き。明るく楽しい、旅行者の目に映るイタリアだ。あふれる太陽の光がまぶしい。音階のオブリガードも陽気さを引き立てている。カーニバルだろうか。踊っている者もいるようだ。
少し音楽は落ち着き、より柔らかな、より抒情的なダンスへと音楽は変わる。可愛らしい踊り子が容易に想像できる。
テンポがさらに落ちると、日も落ちて月夜の音楽。ロマンティックだ。個々の楽器も際立って、美しい夜の出逢いの情景を描く。もちろん、これらはすべて想像だが、こんな感じで大体あってるだろう。
再び日が昇り、明るい太陽の音楽が再構成される。毛色は違えど、終始明るい音楽で、非常に聴きやすく、親しみやすい。
この作品はイタリアの太陽の美しさ、その太陽に照らされる芸術の都の美しさを示していると言えるだろう。そして、ワーグナーのような、情感たっぷりで大げさすぎるくらいの表現や描出。
そうした音楽要素の基礎にあるのは、ブラームスのような、ドイツ伝統のオーケストラ音楽。
ともすれば古臭い古典的なスタイルの音楽と取られたかもしれないが、ロマン派の明るいイタリアンな雰囲気を、確固たる古典派由来の音楽で表現したこのオーケストレーションは、さすがはゴルトマルク。ウィーンで管弦楽法を教えていたというだけはある。
楽しく聴ける序曲。これも隠れた珠玉の名曲だろう。

ゴルトマルク:「田舎の結婚」/序曲「春に」 ゴルトマルク:「田舎の結婚」/序曲「春に」
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“ゴルトマルク 序曲「イタリア」にて:“イタリア”、“ワグナー”、“ブラームス”” への1件の返信

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