交響組曲「東京」&團伊玖磨:三つのノヴェレッテ

外山雄三、三枝成章、石井眞木、芥川也寸志 交響組曲「東京」


ちょうど2年ほど前、このブログで外山雄三の「京都幻想」という作品を紹介した。京都市交響楽団のために、外山雄三の他に、間宮芳生、三善晃、團伊玖磨、林光、新実徳英、細川俊夫らが作品を寄せたプロジェクトによる作品で、いわばご当地クラシックである。
僕も京都という街にそれなりに思い入れはあるが、せっかく東京に住んでいることだし、東京のご当地作品も紹介したい。
交響組曲「東京」は、FM東京開局15周年記念委嘱作品で、外山雄三、三枝成章、石井真木、芥川也寸志の四氏による、4曲の組曲。それぞれ順番に、東京の春夏秋冬を表現しようという話だったようだが、どうもその辺りは作曲者によって解釈はあやふやで、明確に季節を表しているものもあれば、そうでないものもある。
当時のFM東京代表取締役だった大野勝三氏は、世界の名だたる都市にはその都市の楽曲があるが、東京にはそれがないということの寂しさを感じていたとのこと。そこで、東京出身の、日本を代表する作曲家諸氏に、東京の楽曲を依頼したのだ。
第1曲が外山雄三作曲「こもりうた」、第2曲が三枝成彰作曲「Summer」、第3曲が石井眞木作曲「秋のヴァリアンテ」、第4曲が芥川也寸志作曲「アレグロ・オスティナート」。
もしこの四氏の音楽を聴いたことのある人だったら、それぞれの曲のそれぞれの人らしさに納得するだろう。そして、驚くほどにこの4曲の間に有機的な繋がりがないことに気づくはずだ。
だが、むしろそこが東京の特徴と言えるかもしれない。
東京の人の多くは、純粋に東京生まれの東京育ちという訳ではないだろうし、日本のどこよりも、様々な地方の人、様々な国の人が集まっている都市だろう。東京出身の四氏の個性が、特に融和もなく端然とそこに居るという佇まいは、この都市の様子そのものだ。1985年の作品だが、その点は普遍性を保っているように思われる。


外山作曲の第1曲は、彼が東京の春を思ったときに浮かんだ、水仙や沈丁花などの春めいた香り、山手線の窓から入ってくる新緑香る風、そして、そんな空気の中を過ごした子ども時代のノスタルジーから、「こもりうた」と設定された。
外山音楽ファンの期待を裏切らない、日本の心を感じる歌が、この曲でも高らかに歌われる。
三枝作曲の第2曲は、この組曲の中で最も異質な楽曲。チャイコフスキーとワーグナーに対する挑戦らしい。なるほど、チャイコフスキーの幻想曲とワーグナーの管弦楽法からの影響はすぐにわかる。ホットな音楽ではあるが、「Summer」なのに夏らしさは微妙なところ。さすがガンダムの三枝氏、思わず「エゴだよ!」と言いたくなるが、「この三枝をなめてもらってはこまる」。他の3人とは異なるジャンルも手がけるだけはある。
石井作曲の第3曲「秋のヴァリアンテ」は、僕が秋が好きだからという理由もあるが、これはなかなか深みのある楽曲だ。
西洋音楽史上の「秋」と思しき19世紀後半~20世紀初期の手法を用いた主題と、それを現代風に変容させるという試みは、現代の東京の街の在り方を思わせる。秋の美しさを湛えた主題は、主題そのものとして演奏されず、変奏の中に埋もれ、分断されて登場する。このあたりも、考え抜かれた音楽である。
そして僕も大好きな邦人作曲家芥川の担当した終曲「アレグロ・オスティナート」は、名前の通り、芥川得意のオスティナートが心地良い、和風モダンな音楽。
この曲の元ネタは、「エレクトーンGX-1とオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」の第3楽章であり、この協奏曲は演奏はされるものの録音はないようで、こうして交響組曲「東京」の録音が出ることは僥倖である。
東京の何かを描いているという訳ではなく、滝野川区(現・北区)に生まれ東京音楽学校で学び、さらには先祖は徳川に仕えていたということもあり、生粋の江戸っ子である芥川が、東京への愛をもって作った作品である。
四者四様の音楽が作り出す「東京」は、和の音楽が混沌として存在する、実に興味深い情景だ。

交響組曲「東京」&團伊玖磨:三つのノヴェレッテ 交響組曲「東京」&團伊玖磨:三つのノヴェレッテ
外山雄三,三枝成章,石井眞木,團伊玖磨,芥川也寸志,東京都交響楽団,中村紘子

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