アッテルベリ:交響曲 第9番 Op.54「幻想的交響曲」/交響詩「河 - 山から海まで」 Op.33


アッテルベリ 交響詩「川」 作品33


クルト・アッテルベリは20世紀初頭に活躍したスウェーデンの作曲家。彼はいわゆる職業作曲家ではなく、ストックホルムの特許局の職員を長く務めていた。音楽以外の収入がメインだが、学生時代からオーケストラに入り、交響曲や歌劇の作曲も行い、王立劇場からも委嘱を受けるなど、作曲家としても大活躍であった。
また、特許局での仕事を活かしたのか、スウェーデン著作権協会を設立。スウェーデンの音楽界では相当名の知れていたアッテルベリだが、彼が一気に世界的知名度を得ることになった出来事が、1928年にニューヨークのコロムビア社が主催する「シューベルト没後100周年作曲コンクール」に優勝したことである。このコンクールの募集要項が、「モダンな精神を感じさせ、かつシューベルトの交響曲のように旋律の力を示した管弦楽作品」というもので、これはまさしくアッテルベリの作風を端的に表現していると言えるだろう。
そんな交響曲作曲家であるアッテルベリの音楽の魅力を、20分で味わうことができるのが、この交響詩「川」(原題はÄlven: från fjällen till havet, 「川:山から海へ」)である。
このブログで幾度と無く、僕は川をテーマにした音楽が好きだと語っているが、この曲ももちろんその1つ。
1929年から30年にかけて作曲された作品で、アッテルベリがコンクールで受賞した直後の時期に当たる。最も脂の乗っている時期と言っても良いだろう。
故郷の川をテーマにした交響詩というと、誰しも頭に浮かぶのはスメタナの『モルダウ』だが、アッテルベリもやはり同じように、『モルダウ』への意識はあったはずだ。
上で述べたように、アッテルベリも旋律を活かした音楽作りをする人物だが、この曲では『モルダウ』のような息の長い単音の旋律はあまり登場しない。むしろ、美しい短い音の小片が、幾重にも重なりあって、ひとつの音楽を構成している。
それらの小片は、互いに無関係な小片同士ではあるのだが、アッテルベリは大量の音の断片を集めて上手く構成することで、川という自然風景の雄大さやスケール感を失うこと無く交響詩に纏め上げているのだ。


曲は途切れることなく進むが、いくつかの場面に分けられている。1.山と森を通り抜けて、2.大きな湖、3.滝、4.静かで広い流れ、5.港、6.山からの海を越えた眺め、7.外海に向かって、とそれぞれシーンの名前が付けられている。R.シュトラウスのアルペンシンフォニーの川バージョンと言ったところだろうか。小さな紀行音楽のようである。
どの場面を聴いても、誰もが納得できるほどに、気持ちのよい描写音楽。静と動のギャップ。少しやり過ぎなくらいが、アッテルベリの音楽の特色だ。この曲を含め、交響曲なども、初めて彼の音楽を聴いた人は、まるで映画音楽なのではないかと思うこともあるだろう(実際にアッテルベリの音楽のそういった側面は彼の生前、特に世界的に知名度が出てからは批判の対象にもなっていた)。
特に面白い部分は、やはり川が港町を流れている場面である。基本的に、ここ以外は全て自然の描写だが、ここでは船の警笛の音や、船乗りたちの陽気な歌、波止場で人々がごった返している様子などが描かれている。これらの巧みなテクスチャは、アイヴスの音楽の影響もあるとは思うが、アッテルベリの創造性の高さを証明していると言えるだろう。
開かれた大海へ出たときの感動はひとしおだ。これでもかと感動を煽るオーケストラ。このフィナーレで感動しなければ、もうアッテルベリの音楽は聴かない方が良い。
この作品の面白いところは、音楽を構成する沢山の要素が、具体的な何かを示しているものもあれば、そうでもないものもある、ということがはっきりとわかることである。この曲に「厳密性」は無い。あるのは自由な創造性だけだ。レスピーギのローマ三部作なども殆ど同じ年代に作曲されているが、それと比較すると、アッテルベリの交響詩はかなり曖昧さを含んでいる。
そもそもアッテルベリは、シューマンの「ライン」やシュトラウスの「ドナウ」、グローフェの「ミシシッピ」にスメタナの「モルダウ」などのように、ある特定の川を表現している訳ではないのだ。
だからこの音楽では、彼は「川」をテーマにして、スウェーデンの大自然そのものを表現しようとしているのではないだろうか。そんな風に考えてこの曲を聴くと、アッテルベリの持ち寄った音の断片たちは、どこまでも魅力的で懐の深いものに思えてくるのだ。

アッテルベリ:交響曲 第9番 Op.54「幻想的交響曲」/交響詩「河 - 山から海まで」 Op.33 アッテルベリ:交響曲 第9番 Op.54「幻想的交響曲」/交響詩「河 – 山から海まで」 Op.33
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