メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第1&第2番、他


メンデルスゾーン チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58


聴いた瞬間から「なんだこの爽やかな曲は!」と一目惚れ。これは好き。ものすごく好き。メンデルスゾーンは史上最高のメロディーメーカーである。さすがメンデルスゾーン!
と興奮気味に聴いて、少し落ち着いた頃になぜこんなに惹かれたのかと考えてみた。この爽やかな第1主題は、僕の好きな曲であるシューベルトのピアノ・ソナタ第20番D959の4楽章第1主題の冒頭と、シューマンの交響曲第1番の4楽章のある部分のハイブリッドのような主題であることに気づいた。調性は違うけど、これ伝わるかな……あまり伝わらないかと思うが、まあ別に構わない。僕個人の感覚である。
シューベルトのソナタD959は1839年に出版、この年は交響曲「グレート」の自筆譜をもらったメンデルスゾーンがシューベルト作品復興として初演した年でもある。また、シューマンの第1交響曲は1841年に作曲され、メンデルスゾーンの指揮によって初演されている。そしてこのチェロ・ソナタ第2番は1843年作曲だ。これらの作品に関わりがあるかどうかの証拠は全くないが、雰囲気だけでいえば当たらずとも遠からずというところだろう。
また1843年という年は、メンデルスゾーンがライプツィヒ音楽院(現メンデルスゾーン音楽演劇大学)を開校した年だ。作曲科・ピアノ科教授はシューマン。お、なんか段々近づいてきた気もする。
1842年には「夏の夜の夢」や交響曲第3番「スコットランド」、1844年にはヴァイオリン協奏曲ホ短調など、傑作が多く輩出された時期であることは事実だ。


4楽章構成で、演奏時間は25分ほど。初演はイギリスで、友人のチェロ奏者アルフレード・カルロ・ピアッティによって行われた。
冒頭で触れた僕の大好きな1楽章、旋律のダイナミックな動きはもちろん、ピアノも和音の連打が快いグルーヴ感を生み、うねるアルペジオもほとばしる勢い。
2楽章はスケルツォ、チェロはピツィカートで可憐な表情を見せる。実はこういう音楽こそがメンデルスゾーンらしいというか、幻想的で、無言歌のような優しい旋律もあり、非常に魅力的な楽章だ。
3楽章はアダージョの緩徐楽章、メンデルスゾーンの敬愛するバッハの横顔を彷彿とさせるコラール風のピアノ伴奏が、アルペジオでロマンの香りをまとう。まるでバッハのカンタータのようなチェロのメロディ。当然バロックよりもややリリカルに寄る音楽になるが、それこそが魅力。
4楽章はモルト・アレグロ・エ・ヴィヴァーチェで、音楽は愉快にドライヴする。チェロとピアノの追いかけっこ、攻防も激しい。常に流麗で、熱量もあって、それでいて退屈にならないような緩急の付け方も絶妙。あの1楽章にしてこの4楽章あり。
こんな風に書いていくと、やはりメンデルスゾーンの絶頂期に書かれた、いわゆる「脂ののった時期の傑作」とライナーに書かれがちなのも納得できる。しかし、中には反対に、ベルリンとの確執やライプツィヒ音楽院開校にまつわる過労でストレスの多かったメンデルスゾーンが、温かい子ども時代を思いチェロ奏者である弟の助言を受けてソナタを書くに至ったのだと推察しているものもある。それを裏付けるかは不明だが、この時期は傑作の数の割には、自筆譜を見るとかなりの苦労の跡があったり、時間がかかっていることがわかったりするらしい。
僕には正解を出すことはできないが、とにかく、初期ロマン派音楽の良いところがぎゅっと詰まっている、こんなに素晴らしい曲があるのだから、少しでも広めたいと思う。ということでここに書き記しておこう。

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