ロロン ピアノ四重奏曲:ロマン派にスパイスひと振り

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Hommage to José Rolón


ロロン ピアノ四重奏曲 作品16


前回は超メジャー作曲家について頑張って書いたので、マイナーだけど素敵な曲を残した作曲家の話にしましょう。ということで、メキシコ生まれの作曲家、ホセ・ロロン(1876-1945)のピアノ四重奏曲を取り上げる。
メキシコの作曲家というとマヌエル・ポンセ(1882-1948)のほか、チャベス(1899-1978)やレブエルタス(1899-1940)などは名前を見かけたことがある人も多いかもしれない。彼らよりも先輩にあたるロロンは20世紀前半のメキシコ・クラシック音楽界の最も著名な大家である。
1903年からパリに留学し、モシュコフスキの下でピアノと作曲を学んだ。1907年にメキシコに戻り、地元で楽団を立ち上げ、1920年代からは作曲家としても名を上げ出す。
なお、ロロンについて調べていたら、中南米ピアノ音楽研究所(という名前だけど個人の趣味ページだそうです)に日本語のプロフィール等があったので、興味ある方は参考にどうぞ。
1927年には再びパリへ赴き、そこでデュカスやブーランジェに学ぶ。シェーンベルクやヴァレーズら新しい音楽を志した音楽家たちとも交流し、またファリャやロドリーゴなどスペインの作曲家とも触れ合った。
ピアノ作品が多く録音されており、同じメキシコの先輩に当たるローサスのワルツ「波濤を越えて」のパラフレーズ作品は有名な方で、シプリアン・カツァリスの録音も残っている。また、ヘンリク・シェリングもヴァイオリンとピアノで「メキシコ舞曲」を録音している。


ピアノ四重奏曲は1912年の作品で、ロロン作品の中では初期の方に当たる。4楽章構成で30分弱。後にロロンはナディア・ブーランジェの影響を受けた作風になるが、この頃はまだ後期ロマン派にラテン・アメリカのエキスが含まれるという感じだろうか。僕はピアノソロよりも先にピアノ四重奏曲を聴いて、良い曲だなと感動したので、まずはこちらを紹介したい。なお同時期の音楽では、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」や「マ・メール・ロワ」、デュカスの「ラ・ペリ」シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」などがある。
1楽章アレグロ・モルト・コン・ブリオ、チェロの印象深い歌声から始まる。繊細なメロディの重なり合いも美しいし、フランス室内楽らしい柔和な響きを感じつつもどこか色彩感が違うのが面白いところだ。和音と単音、長い旋律と細かなオブリガード、複雑な絡み合いとシンプルに揃ったリズム……そういったコントラストも見事だ。しかしそういう細部のこだわり以上に、この1楽章の全体的な雰囲気の良さに心惹かれた。
2楽章アダージョ、ピアノ独奏から始まる。受け継いで歌うのはヴィオラだろうか(スコアが無いので微妙だが)、弦楽器同士が寄り添う様子、時にオクターブで重なって旋律を奏でるところなど、実に愛おしい。
3楽章モルト・ヴィヴァーチェはスケルツォ楽章。かわいらしいし非常に洗練されており、メキシコらしさのような国民楽派的・民族音楽的要素はどうにも見当たらない(僕がわからないだけど一応あるのだろうけど)。ピアノによる目の回るような高速パッセージの連続に弦楽器のピッツィカートが入る部分は思わず唸る。
4楽章アレグロ・ジョコーソ・ヴィヴァーチェ、終楽章でもピアノが主題を提示する。8-6系のリズムに乗って奏でられる、跳躍のあるメロディの美しさ。ときに驚くような和声をワンポイントで使う洒脱さも良い。フィナーレも堂々。有名作曲家も顔負けの、後期ロマン派の良い室内楽を聴いたなあという満足感がある。
もっとわかりやすくメキシカンなのがお好みであればロロンの他の作品にも触れてみて欲しい。この曲は料理で言えば辛さ控えめ、ほんの少しのチリにライムを一搾りくらい。でもそのくらいでも美味しいのが、ロロンのピアノ四重奏曲の出来の良いところなのだ。

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック・ファンです。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、つまりひたすら聴くだけ。演奏することにはほぼ興味・情熱はありませんが、それでもときどきピアノを弾いたり、バンドでドラムを叩いたりシンセサイザーを演奏したり、あるいは作曲・編曲をしたりします。more

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