アルベニス ピアノ協奏曲第1番「幻想的協奏曲」:ロマン派にサングリア添えて

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アルベニス ピアノ協奏曲第1番 イ短調 作品78「幻想的協奏曲」


ブログを続けて12年が経っていた。2008年7月10日が最初で、当時小学1年生だった子が高校卒業しているくらいである。光陰矢の如し。だからもう、昔書いた内容を忘れていることも多く、下手したら書いていないくせに書いたような気になっているような曲も何曲もある。
アルベニスはまさにそれで、大好きな作曲家だが、実は初登場となる。なんか勝手に書いた気になっていた。「イベリア」や「スペイン組曲」などの作品で有名なイツァーク・アルベニス(1860-1909)はスペインの作曲家、ピアニスト。4歳でピアノリサイタルを行う神童で、アメリカやライプツィヒにも勉強に行き、その後ブリュッセルで学び、リストに弟子入りしようとハンガリーへ赴いたがリストはヴァイマールにいるため空振り。スペインに戻ってからはピアニスト、作曲家として活躍。1883年に生涯の伴侶となる妻のロジーナ・ホルダーナと結婚し、1886年には息子が生まれるている。
その翌年、1887年に作られたのが、このピアノ協奏曲。第1番と付いており、この時点では第2番以降を目論んでいたのだが、1909年に48歳で亡くなったアルベニスの残されているピアノ協奏曲はこれが唯一のものである。
「幻想的協奏曲」(Concierto fantastico)という副題についても、詳細は不明。3楽章構成の伝統的なスタイル。25分ほどで、録音もそこそこある。僕の好きな録音、Auvidisレーベルから出ていたマルグリット・ロンに師事したピアニスト、エンリケ・ペレス・デ・グスマンの独奏で、マヌエル・ガルドゥフ指揮バレンシア管(1991年録音)も、最近配信されていることを発見した。Auvidisレーベルはnaiveに買収されてから、他の傘下レーベルも含め配信にどんどん追加されている。マヌエル・ガルドゥフ(1940-)は知名度は低いが、マルケヴィチに師事したスペインの名匠で、東フィルも振ったことあるそう。


1楽章、冒頭の序奏の雰囲気は、ラロのスペイン交響曲を彷彿とさせる。オクターブで動く旋律のかっこよさに開始早々しびれる。ロマン派のピアノ協奏曲らしく、途中でピアノ独奏によるテーマの提示があるが、これがまた絶妙。美しいアンダンテ。お国ものらしい、期待通りのエキゾチックさ。この曲全体に言えることだが、やはりイ短調というのがよく効いている気がする。ヴィルトゥオーゾではなくリリカルで、旋律やハーモニーをたっぷりと楽しめる。
メランコリックな2楽章は他のピアノ協奏曲の追随を許さない独特な良さがある。特にピアノ独奏で奏でられるフレーズで、一瞬にしてスペインの歌を感じられるものがある。この瞬間のためだけに聴いていると言っても過言ではない。Rêverie e Scherzo(夢想とスケルツォ)の副題の通り、2つの部分からなり、リズミカルな後半パートも実に美しい。ギター的なリズムを弾くが、ピアノの音色だとちょっと独特な大人しさというか、ハツラツとしておてんばなギターに対して慎ましく奥ゆかしい魅力がある。
3楽章では1楽章冒頭の力強い序奏が再び現れる。ワルツ風のテーマが反復、展開しながらドラマティックなクライマックスへと突き進んでいく。ショパンやチャイコフスキーのようなロマンティック協奏曲。スペインらしさは強烈ではないが、確実にエッセンスとして機能している。この曲の伝統的な協奏曲としての良さと、ローカルな音楽性の良さが、互いに引き立てあっている。
そういう意味では、やはりこの曲はロマン派のピアノ協奏曲のリストに名を連ねるが、まだスペインのクラシック音楽の顔という感じではない。ラロのスペイン交響曲(1874)、シャブリエの狂詩曲スペイン(1883)など、スペイン音楽はフランス人の手の中というイメージの19世紀末音楽界に一石を投じ、スペイン人によるスペイン音楽をフランス人に見せつけたのは「イベリア」(1905-09)であり、ドビュッシーも手放しに絶賛した。またの機会に「イベリア」も取り上げよう。

ラロ スペイン交響曲:スペイン風の楽しみ

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック・ファンです。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、つまりひたすら聴くだけ。演奏することにはほぼ興味・情熱はありませんが、それでもときどきピアノを弾いたり、バンドでドラムを叩いたりシンセサイザーを演奏したり、あるいは作曲・編曲をしたりします。more

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