メンデルスゾーン ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 MWV Q26:傑作への道程

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メンデルスゾーン ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 MWV Q26


メンデルスゾーンという作曲家は人気のある作曲家だが、あまりメンデルスゾーンの熱烈なファンという人に会ったことがない。バッハならバッハ、ベートーヴェンならベートーヴェンで「その作曲家ならなんでも聴きたい」という人は結構いるけど、メンデルスゾーンおたくという人は、他の有名作曲家に比べて少ない気がする。
ファンの多い曲というと、交響曲第3~5番、真夏の夜の夢、あとは序曲がいくつかと、ヴァイオリン協奏曲。強いて言えば無言歌集やピアノ三重奏曲に、弦楽四重奏曲と弦楽八重奏曲、これくらいかしら。僕は結構、メンデルスゾーン好きなので、割と色々聴いてみている方なんだけども、まだまだ開拓しがいがあるなあと感じている。このブログでは珍しく過去6曲も取り上げており、
スコットランド、イタリア、華麗なるロンド、ピアノ三重奏曲第1番、チェロ・ソナタ第2番、吹奏楽のための序曲について書いている。ぜひご覧ください。
早熟の天才だったメンデルスゾーンは38歳で早逝するも、750作品以上残していると言われている。僕は少しでも、メンデルスゾーンのマイナーな作品を世に広める手助けができたらと思い、今回はヴァイオリン・ソナタを紹介したい。


メンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタは未完の1作を除くと3曲あり、そのうち作品番号が付いて出版されたのは1曲だけ。一応、完成した3曲について概説しておこう。
1820年作曲のヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 MWV Q7、これは11歳の頃の作品で、モーツァルト風のとても良い曲だ。これだけで天才だとわかる。当時はドイツの有名な音楽教師ツェルターの元で学んでおり、そのときの課題だったのではないかと指摘されている。
1825年作曲のヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 作品4、唯一Op.(作品番号)付きのソナタは、メンデルスゾーンの最初の出版譜である3つのピアノ四重奏曲と併せて出版。彼の友人でありヴァイオリンの師でもあるエドゥアルト・リーツに献呈。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」の影響も見て取れる。
さて、今回紹介したいのが、1838年作曲のヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 MWV Q26、メンデルスゾーンが音楽家として一定の評価を得た後の作品だ。完成作はすべて3楽章構成でキーがFという共通点がある。この最後のソナタは、先の2曲より格段に完成度が高く、録音や演奏もそれなりの数がある。


このヴァイオリン・ソナタの作曲当時、メンデルスゾーンはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長、指揮者を務めていた。コンサートマスターはメンデルスゾーンより1つ年下のフェルディナンド・ダヴィッド。メンデルスゾーンは彼と演奏するために、このヘ長調のソナタを作り、実際に演奏したという記録が残っている。ダヴィッドは1845年にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の初演で独奏ヴァイオリンを務めた奏者だ。
しかしメンデルスゾーンは作品の出来に満足せず、1楽章を改訂に取り掛かるが、結局これは頓挫することとなる。その後、未発表のまま月日は流れ、1953年にユーディ・メニューインが再発見し、校訂、出版に至った。メンデルスゾーン自身が出来栄えに満足せず、またたとえ彼がヴァイオリン・ソナタという形式をさほど重視していなかったとしても、後世の人にとっては他のソナタよりもこのソナタこそが、モーツァルトでもベートーヴェンでもなく、「メンデルスゾーンらしい!」と思わずにはいられない、そんな音楽である。
メンデルスゾーンの手稿をメニューインが校訂した際は、かなりメニューイン風味が強く付いたと説明している文を読んだことがあるが、2009年にベーレンライターの原典版が出ている。それ以前の録音はほぼ全てメニューイン版だろう。原典版が出て以降は、旧版は「メニューイン版」と書かれていることもある。
1楽章Allegro vivace、この曲の冒頭では、僕がチェロ・ソナタ第2番を聴いて惹かれたときと同じような、音楽を聴く喜びを感じた。この楽章は歓喜に溢れている。喜びに満ちたヴァイオリンの旋律に、華やかなピアノのパッセージが美しい。2楽章Adagioはメンデルスゾーンの多くの楽曲の緩徐楽章とはまた一味違う。言葉で表現するのが難しいのだが、やや辛口というか、優しさが足りない(?)というか、メロメロに甘い雰囲気ではない。ちょっと劇的な感じもするし、それでもメンデルスゾーン風の一流のリリシズムも感じる。これはやはり、メンデルスゾーンの有名作品ではなく、「ヴァイオリン・ソナタ」という、この2つの楽器の組み合わせこそが、彼をしてこのような楽想を生ませたのだと思う。
3楽章Assai vivaceは、パガニーニさながらの技巧的なヴァイオリンを楽しめる。いわゆる無窮動、忙しく走り回るヴァイオリン。アダージョ楽章もそうだが、おそらくダヴィッドとの共同作業で助言もふんだんにあったのだろう。彼らの友情、音楽家としての尊敬は相当深いものだったそうで、それが結実したのが有名なヴァイオリン協奏曲だ。このソナタを書いた頃には、既にダヴィッドのためにヴァイオリン協奏曲を書くとメンデルスゾーンは伝えている。傑作の完成に至るまでの道程と捉えると、このソナタを聴く楽しさもまたグッと大きくなるというものだ。


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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