ワシントン ナショナル・ギャラリー展 国立新美術館

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国立新美術館で開催中の「ワシントン ナショナル・ギャラリー展」に行ってきました。


コマーシャルで「これを見ずに、印象派は語れない」と言っていますが、さもありなん、素晴らしい展覧会でした。


マネの「鉄道」やルノワールの「踊り子」、セザンヌの「赤いチョッキの少年」など、有名作品も多く、特に今回圧倒的なインパクトを受けたのはモネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」です。実物見れて一番良かったのはこれですね。後は余り知見はなかったカサットの作品を見れたこと、マネ、モリゾ、ゴッホなど好きな画家の作品も見れたこと、スーラの点描を間近で見れたことも良かった。ワシントンとかあんまり行きたいと思ったことないから今日見れて良かったかも(笑)


“印象派登場前”までと題されたコーナーでは、パリ郊外のバルビゾン村で写実的に風景を描いた「バルビゾン派」や、「写実主義」の画家たちの作品を展示していました。

 

ギュスターヴ・クールベという写実主義の画家の「ルー川の洞窟」です。真ん中の人間の小ささと何処までも続くような巨大な洞窟、絵上部の光に照らされている部分と、光を飲みこんでしまうような絵下部の暗黒さ、こういった対比が巧みに使われています。

 

 

「空の王者」の異名を持つウジェーヌ・ブーダンの作品、左は「オンフルールの港の祭」、右は「トルーヴィル近郊の洗濯女」です。青空と白雲の表現に優れた「外光派」の画家として、印象派に大きな影響を与えた人物です。どちらの絵も、雲の描き方が恐ろしく上手いですね。見とれてしまいます。「オンフルールの港の祭」では、その空と雲が、鮮やかな色彩の旗と相まって、非常に美しいですね。

 

マネの「鉄道」は、上の半券の写真からもわかるように、この展覧会のメインのひとつでもあったようですが、これもやはり傑作でしょう。女性、少女、葡萄、と3つの対象が、自然な印象を作り出しています。この女性は、マネの「オランピア」や「草上の昼食」でも登場する娼婦ヴィクトリーヌです。それにしても、「鉄道」などと名づけられてはいますが、曖昧な題名ですね。しかし、自然な印象とはいえ、写真とはまた違い、そこにはっきりと画家の意図が存在することは感じられます。


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印象派前のコーナーの次からは印象派の中心的画家たちの作品に移ります。モネ、ルノワール、ピサロ、ドガ、モリゾ、カサット、この展覧会の白眉とも言える作品の大群には思わず見とれてしまうものが多かったですね。

 

その明るい雰囲気に思わず目を奪われたのが左の絵、ルノワールの「ポン・ヌフ、パリ」です。ポン・ヌフは17世紀に完成されたパリにもっとも古くから存在する橋で、街のわかりやすい目印であり、1850年代に大幅に改造されました。1872年のこの作品は、新しいパリを描いた、ルノワールの最も喜びに満ちた作品です。右の絵は「踊り子」、これも名高い作品ですね。ドレスのスカートが背景に溶け込んで行くような、いかにも印象派といった優雅で美しい絵です。

左の絵、モネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」は、今回最も感銘を受けた作品です。陽の光の一瞬の効果、まさしく印象派の特徴が前面に現れ、圧倒的な美しさを湛えているのに加え、今までモネの作品の中で深い意味を持たなかった人物像が、ここでは夫人と息子であるという点で、ある種特別な作品になっています。戸外で一気に描かれた作品であり、大胆で自由な筆致・色づかいでありながら、また繊細な美しさも併せ持ち、ただただ嘆息するのみです。右の「太鼓橋」、これはジャポニズムの影響もうかがえますが、画面の奥へと誘われていくような遠近法と水面の描き方は巧みです。

 

 

左はドガの「舞台裏の踊り子」、右はカサットの「青いひじ掛け椅子の少女」です。ドガにとって踊り子という題材は非常にポピュラーなものだったようです。シルクハットの男性は、裕福なオペラ座の定期会員なのでしょう、舞台裏でお気に入りの娘にちょっかいを出しているのですが、どうも冷たくあしらわれているみたいですね。日常の打ち解けたひとときを描いています。右のカサットの作品は、この他にも2つありましたが、今回の展覧会で出会えてよかったと思えるものでした。様々な種類の青、退屈そうな少女の表情(犬も!)、鑑賞していて楽しい作品でした。


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最後はポスト印象派以降が特集されていました。セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、スーラ、ロートレックとビッグネームが並びます。ゴッホは好きな画家のひとりですし、自画像は目玉でした。

 

セザンヌ、そんなに好きな画家という訳ではないのですが、左の絵「アントニー・ヴァラブレーグ」からはやはり彼の力強く大胆な筆致や色づかい、厚塗りの絵の具からなる作品の持つ力を感じました。右は「『レヴェヌマン紙』を読む画家の父」という作品です。厳格な父に敢えて急進派の新聞を持たせた構図は、急進的な芸術へのセザンヌの思いが込められているようです。


セザンヌは好きではないなんて言っておいて絶賛ばかりなのですが、この「赤いチョッキの少年」も思わず見とれてしまった作品です。少し気恥ずかしそうに、それでいて気取ったポーズの少年、そしてこの色づかい。

耳を切り取ってからのゴッホの自画像を生で見たのは初めてでした。THE REAL VAN GOGHで見たのは1888年のものでゴッホ美術館にあるものでしたが、これは1889年8月に描かれたものです。これもまたひしひしと画家の力が伝わって来るものでした。顔面蒼白とはこういうことを言うのでしょう。激しい自画像です。背景の線も色も、すべてこの正気の沙汰でない顔を裏付けています。

印象派の特徴である「筆触分割」を突き詰めて行った結果「点描」に行きついたというジョルジュ・スーラの作品は上の2つが展示されていました。彼は入念に構想を練り、完成に時間をかけたため、作品数は多くはないそうです。左は「オンフルールの灯台」、右は「ノルマンディのポール=アン=ベッサンの海景」です。どちらも美しいですが、これを間近で見れたのはなかなか興味深い体験でした。

 

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