シャガール展 東京藝術大学大学美術館

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東京藝術大学美術館にて開催されているシャガールの展示を見に行きました。


シャガールとロシア・アヴァンギャルドの繋がりに着目した展覧会ということで、ロシアの前衛芸術家デアルマレーヴィチやゴンチャローワ、カンディンスキーらの作品との比較を通して、シャガールのロシア的作品とシャガール独自の作品を見て行こうというものです。


シャガールというとパリのイメージが強いですが、第一次世界大戦によってロシアに帰国を強いられます。故郷ヴィテブスクにて、彼は最愛の妻ベラ・ローゼンフェルトと結婚します。このとき28歳でした。
ベラをモチーフにした絵画も多く作られ、「緑色の恋人たち」や「灰色の恋人たち」(上の絵)はそうです。夫婦の親密な関係を描いています。背景の色合いが両者とも絶妙でした。


ロシア・アヴァンギャルドの作品も同時に公開されていて、この展覧会の作品のほとんどはパリのポンピドー・センター所蔵のものです。左はカンディンスキーの「アフティルカ 赤い教会の風景」、左はゴンチャローワの「パンの売り子」です。カンディンスキーのこんなに穏やかな自然的作品があったのかとちょっとした発見。ゴンチャローワはロシアのネオ・プリミティヴィスムの代表的画家です。売り子の表情や手、パンは思わず見入ってしまいました。


最愛のベラを亡くしたのがシャガール57歳のとき、しばし筆を持つ気力も失っていましたが、彼は1933年の作品「サーカスの人々」を半分に切り、片方に「彼女を巡って」(左)と名付け、新しい作品としました。頭が上下逆さまなのがシャガール自身で、暗い全景の中央には、明るい故郷ヴィテブスクが描かれています。
シャガールはパリで再婚し、その再婚相手ヴァランティーナ・ブロドスキーが描かれているのが、「日曜日」(右)という作品です。エッフェル塔やノートルダム寺院などが描かれていますが、シャガールの頭の隣にはヴィテブスクの風景も描かれています。やはり故郷というのは常に彼の頭にあったのでしょうね。


今回印象深かったもの2つ。左は1911年、初期の作品である「ロシアとロバとその他のものに」。パリ時代のものですが、頭の飛んだ(ロシア語とイディッシュ語で夢想するという意)農婦と雌牛がロシア風の建物の上にいます。ネオ・プリミティヴィスムとロシアへの思い、そしてキュビスム的な描き方とフォービズム的な色彩、色々なものが複雑に絡み合いながらロシアへの郷愁を描く、名作でしょう。これは美しいですね。
右は「イカルスの墜落」という最晩年の傑作です。これは感動しました。イカルスが太陽に向かって飛び、翼が溶けて墜落するシーンですが、何といっても周囲の人々の表情。実に穏やかです。まるで死を看取るかのような、不思議な温かさを感じました。シャガールは故郷の人々の中へ降りていくのですね。色彩感と構図も温かみを感じるものでした。


他にも、ジャン・プーニーという画家の「理髪師」という作品も印象深かったのですが、画像が見つからず。
そして最後に、「魔笛」の舞台芸術の展示も素晴らしかった。こういうのはクラシック好きにはたまらんですな。ファンタジーに歴史考証は必要ないのだから、自分の空想で描くというシャガールのスタンスには脱帽です。夜の女王がどーんと載っているクリアファイル買ってきました。何に使おうか……

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