クラシック音楽の楽曲に関する話題を中心に、芸術について考えたこと、哲学・文学・美学などのちょっとアカデミックな話、聴きに行った演奏会や観に行った展覧会、うちの猫ちゃんのことやクラシックCD聴き比べ、その他日常の諸々を含め、適当な文章を書き綴っていきます。「ボクノオンガク」というブログ名は、よくあるパソコンの音楽フォルダ名“My Music”の和訳と、小澤征爾さんの本『ボクの音楽武者修行』から。

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クラ ピアノ三重奏曲「象徴的な旅」:船上の作曲家

クラ ピアノ三重奏曲「象徴的な旅」:船上の作曲家

クラ ピアノ三重奏曲「象徴的な旅」 ジャン・クラ(1879-1932)というフランスの作曲家をご存知だろうか。作曲家であり、海軍士官でもある。第一次世界大戦では相当の活躍をしたそうだ。 そちらの方の詳しい話はまたそちらのオタクの人に任せるとして、音楽家としてのクラの、珠玉の名曲を紹介しよう。 海軍の職務をこなしつつ作曲活動に勤しんだクラは、生涯に渡って歌曲や室内楽を作った。歌劇などの大編成ものも残 […]
伊福部昭 蒼鷺:“枯淡の境地”を排す

伊福部昭 蒼鷺:“枯淡の境地”を排す

伊福部昭 蒼鷺 伊福部昭の弟子である松村禎三は、伊福部の歌曲の真髄は「ギリヤーク族の古き吟誦歌」「サハリン島先住民の三つの揺籃歌」「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」の3つであると語っている。これには全くの異論もないし、直弟子による貴重なお言葉として多くの人が納得させられている。機会があればこれらもぜひ聴いてみていただきたい。 ということで、今回は敢えてその3つは外して、伊福部最晩年の作品である「蒼 […]
ペンデレツキ ピッツバーグ序曲:ヒューマニティに物申す

ペンデレツキ ピッツバーグ序曲:ヒューマニティに物申す

ペンデレツキ ピッツバーグ序曲 クシシュトフ・ペンデレツキ(1933-)はポーランドの作曲家・指揮者である。ごく大雑把に彼の音楽について説明すると、トーン・クラスターや微分音や特殊奏法などを取り入れた前衛的な作風から、1970年頃に新ロマン主義的な標題音楽へと転向、カトリック教徒であり宗教音楽も多く書き、客演で自作他作含め指揮もする、というちょっと面白い音楽家だ。今日取り上げる曲は、一応吹奏楽の名 […]
コープランド クラリネット協奏曲:ビタースウィート・リリシズム

コープランド クラリネット協奏曲:ビタースウィート・リリシズム

コープランド クラリネット協奏曲 アーロン・コープランドの曲について書くのは、なんと2009年7月のエル・サロン・メヒコの記事以来ということで、うむ、まあこりゃ年も取るわけだ。 さて10年近く前の自分はいったい何を書いているかというと、コープランドの曲はなんとなくそれらしい雰囲気を楽しむのが良い、中身は空っぽと、ずいぶんな物言いである。そんなことを書いてから今まで色々なコープランドの曲を聴いてきた […]
メンデルスゾーン チェロ・ソナタ第2番:19世紀半ばのおいしいところ

メンデルスゾーン チェロ・ソナタ第2番:19世紀半ばのおいしいところ

メンデルスゾーン チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58 聴いた瞬間から「なんだこの爽やかな曲は!」と一目惚れ。これは好き。ものすごく好き。メンデルスゾーンは史上最高のメロディーメーカーである。さすがメンデルスゾーン! と興奮気味に聴いて、少し落ち着いた頃になぜこんなに惹かれたのかと考えてみた。この爽やかな第1主題は、僕の好きな曲であるシューベルトのピアノ・ソナタ第20番D959の4楽章第1主題の […]
中田喜直 女声合唱組曲「美しい訣れの朝」:涙、涙の合唱曲

中田喜直 女声合唱組曲「美しい訣れの朝」:涙、涙の合唱曲

中田喜直 女声合唱組曲「美しい訣れの朝」 「夏の思い出」や「ちいさい秋みつけた」、「雪の降るまちを」など美しいメロディの歌曲で知られる中田喜直(1923-2000)の作品を取り上げよう。 今挙げた四季をテーマにした有名曲を思い浮かべてもわかるように、中田先生は日本の誇る偉大なメロディ・メイカーである。あれ、春の歌がないぞと思った方、「早春賦」という曲をご存知でしょうか。これは中田喜直の父、中田章の […]

歌詞置き場14

美しい訣れの朝 阪田寛夫 「あなたはいつも」 あなたはいつも背をまげて 街を歩く 左肩をさげて 夕日のなかを あなたはいつも靴をひきずり  坂をのぼって帰ってくる 幾百千の足音から あなたがわかる あなたはいつも顔じゅうの汗を げんこでふく 若かった頃も 歳をとったいまも あなたはいつも病の私に おせじを使う   つやがいいから もうなおるという あなたはいつも背をまげて 街を歩く 左肩をさげて  […]
リスト 死の舞踏:『死の舞踏』が聴きたい

リスト 死の舞踏:『死の舞踏』が聴きたい

リスト 死の舞踏 S.126 「死の舞踏」という名が付く作品は色々あって少々紛らわしい。 今回取り上げるリストのピアノと管弦楽のための曲(S.126)は、1847-62年に改訂を繰り返しながら完成したもの。1865年にはピアノ独奏版(S.525)、年代は定かではないが2台ピアノ版(S.652)にも編曲している。 なお、サン=サーンス作曲の管弦楽曲「死の舞踏」は1874年。リストより後の作品だ。そし […]
ベリオ オーパス・ナンバー・ズー(作品番号獣番):邦訳のおかげで

ベリオ オーパス・ナンバー・ズー(作品番号獣番):邦訳のおかげで

ベリオ オーパス・ナンバー・ズー(作品番号獣番) 子ども向けの曲を取り上げるのも、僕も人の親になったということで、まあいささか気恥ずかしさもあるが、あとはブログの右側に並ぶ作曲家のカテゴリに新しく1人加えたかったからというのもある。 ルチアーノ・ベリオはイタリアの作曲家で、多作家として知られるが、特にそのキャリアの初期では声楽や管楽を巧みに扱う作風で、特に管楽器奏者たちには貴重なレパートリーになっ […]
ストラヴィンスキー イタリア組曲:極彩色で描き出す

ストラヴィンスキー イタリア組曲:極彩色で描き出す

ストラヴィンスキー イタリア組曲 この曲はストラヴィンスキーのバレエ音楽「プルチネルラ」(1925年作)から抜粋して、1933年に室内楽用に編曲されたものだ。編曲された組曲を「イタリア組曲」と呼ぶ。 元は40分ほどあるバレエのためのオーケストラ音楽だが、15分ほどの長さにまとめ、チェロとピアノ、ヴァイオリンとピアノなどなど、様々な編成で演奏される人気作である。 実は、僕は最初にこの曲に触れたのは、 […]
瀧廉太郎 憾:白鳥の無言歌

瀧廉太郎 憾:白鳥の無言歌

瀧廉太郎 憾 オリラジの中田敦彦が滝廉太郎にまつわる都市伝説をテレビで語った際に、この曲の存在がにわかに世に広まったという感じがする。まとめると以下のような内容だ。 瀧廉太郎は素晴らしい歌曲を残し、ドイツ留学中に若くして結核で夭逝した。しかし、実は瀧廉太郎は文部省に「消された」のである。文部省は瀧廉太郎の才能を妬み、歌曲を作曲者不明の唱歌としてパクって使うために結核に罹患させたのであり、瀧は世を恨 […]
シューマン 幻想曲 ハ長調:ファンタジーとは一体?

シューマン 幻想曲 ハ長調:ファンタジーとは一体?

シューマン 幻想曲 ハ長調 作品17 ドイツのボン市がベートーヴェン死後10年を記念した像を設立する計画を出したのが1835年。ベートーヴェンへ敬愛の念を抱いていたシューマンも賛同し、作品の収益を寄付する目的で「フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ、ベートーヴェンの記念のためのオーボーレン 作品12」と題した曲を作ろうと取り掛かったのが1836年。結局これはいくつかの出版社から出版を断られてし […]