プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番&第5番


新年コンサート初めは、ガヴリリュクのピアノ・リサイタルから。年の始からバリバリとスクリャービンやラフマニノフを弾くのを聴くってのも良さそうだなあと思って期待していました。熱いプログラムにワクワクが止まらないね!


【アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル】
(2018年1月8日、紀尾井ホール)
バッハ:イタリア協奏曲 BWV971
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K. 330
ショパン:バラード第2番 へ長調 Op. 38
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番 Op. 53
ラフマニノフ:前奏曲集 Op. 23より 第1番、第5番
前奏曲集 Op. 32より 第12番
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op. 36 (第2稿)
アンコール
ラフマニノフ/コチシュ編::ヴォカリーズ Op.34 No.14
ムソルグスキー:展覧会の絵より「キエフの大門」
メンデルスゾーン/リスト編 ホロヴィッツ版:真夏の夜の夢より「結婚行進曲」
ショパン:12の練習曲より、Op.10-3「別れの曲」、Op.10-8、Op10-12「革命」


こうやって並べて書くと、アンコールの曲数に年始の大盤振る舞い感、嬉しくなりますね。そちらは後にして、まず紀尾井ホールに入ってお手洗いに向かったら、藤田真央くんとすれ違い。紀尾井のトイレは大物とすれ違うことが多いようです(笑) 藤田くんもガヴリリュクもジャパンアーツですしね。僕が席に着いたら斜め前に藤田くんが座ってて、おお、さすがは良い席を取ってもらえるんだあなんて思いつつ開演を待っていました。


1曲めイタリア協奏曲、これはまだまだ、エンジンをふかすための曲といったところ。案外落ち着いたテンポで真面目なバロック、アンティパストとしては美味なものです。次のモーツァルトが、これがまあ目ン玉飛び出るかと思うような快演で驚きました。1楽章の第1主題からなんと鮮やかな色彩あふれる語り口なんでしょう。ちょっと大げさ過ぎて、真面目な独墺の正統モーツァルトとは対角線上にありますが、これが楽しいことこの上ありませんでした。完全に引き付けられましたね。そんなモーツァルトの後のショパンバラード2番も、もう冒頭6小節で今までと違ったロマン的な世界が開けていくような、薄いレースのカーテンを優しく開いて木漏れ日が差し込む窓の外を見せてくれるような、本当に引き込まれます。それからはもうガヴリ、ではなく、かぶりつくようにして聴き入ってしまいました。その後は特にプレスト・コン・フォーコのとこなんかは情緒不安定なほどでちょっと好みのショパンという感じではなかったのですが、好み云々を吹き飛ばすだけの説得力はありました。


休憩終わりのスクリャービン、拍手も鳴り止む間もなく椅子に座って即スタート。前半とは全く別のモードに入りましたね。ただただ美しい……ガヴリリュクの作るスクリャービンの世界観に圧倒されます。オール・スクリャービンでもいいのにと思うほど。僕の言葉ではこれ以上彼のスクリャービンの良さを表現できません。ラフマニノフの前奏曲と、その流れからのソナタ2番も、これだけ良いスクリャービンとショパンが弾ける人にラフマニノフが弾けないわけがない。まるでホロヴィッツが憑依しているかのようなメカニカルな技巧と、ホロヴィッツを上回るかのようなロマンティシズム全開のガヴリリュクワールド。お手上げです。でもまあ個人的にはスクリャービンの方が良かったかなと。


アンコールも奮発してくれましたが、1曲目のヴォカリーズが最高でした。コチシュ版ってところがね、一筋縄ではいかないよと。その後、多分2曲目のキエフの大門あたりか、あるいはラフマニノフの時点で既にそうだったのかもしれないがピアノの弦が切れてしまい、超絶技巧を披露するだけの結婚行進曲もしばしそのまま弾いていたものの切れた弦が共鳴してちょっとお聞き苦しい状態に。ただただ流麗な音を追うだけが魅力の曲で残念……と思って聴いていたのですが、5曲目を弾き終えたらガヴリリュクがおもむろにピアノの中を覗き込み、切れた弦をえいやと引っ張り出してから、ごめんねみたいなジェスチャーをして、ささっと革命エチュードを弾いて締めくくる。素晴らしい。ベレゾフスキーほどではないにせよ、まあ弦が切れても不思議ではないパワフル演奏でしたし、というかアンコールでようこんなに激しいの弾くもんだなと舌を巻きましたが、次々とヴィルトゥオージを発揮されて恐れ入ります。ガヴリリュク、また聴きたいですね。

Alexander Gavrylyuk in Recital 2007 Alexander Gavrylyuk in Recital 2007
Alexander Gavrylyuk

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