Chopin

40年ぶりの来日ということで、ずいぶん歴の長いファンでなければ、初来日コンサートのような感覚なのではないでしょうか。僕も音源は聴いたことがありましたし、リストのソナタの素晴らしさも知っていましたので、ロ短調ソナタをやるプログラムを見て「これはぜひ」と思った次第です。よくぞ呼べたなと、IMCさんグッジョブですね。「シャルル・リシャール=アムランを育てた巨匠」というフレコミで集客も見込めるということでしょうか。


【アンドレ・ラプラント ピアノ・リサイタル】
(2018年4月21日、東京文化会館小ホール)


ショパン 幻想曲 op.49
ショパン ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 ≪葬送≫
リスト 巡礼の年 第2年「イタリア」より ペトラルカのソネット 第104番
リスト ピアノ・ソナタ ロ短調
アンコール
シューマン 子供の情景より第1曲「見知らぬ国と人々について」
バッハ(ブゾーニ編) アダージョ BWV564


まずは雪の降る町をで有名なショパンの幻想曲から始まる。唸った。ラプラントが。ああ、この人も唸るタイプか、カナダのピアニストは唸る伝統か……などとどうでも良いことを思ってしまいましたが、聴く方も唸るくらい、精密な音楽作り。そもそもショパンを持ってくるのに幻想曲とソナタ2番とは、その重苦しいチョイスに驚く。一つ一つの音の長さ、保ち方、重なり方に、尋常ならざる丁寧さを感じる。ショパンの作品の中でも華やかさを押し出すものではない選曲をするのは、そういう丁寧な響きの製作を見せるためだったのか、と。実に良い。最近聴いたアンデルジェフスキのバッハのようだ。しかしバッハならまあわかる。そういうアプローチをするのは。しかしショパンとリストである。そういうアプローチでしか見えないショパンとリストの音楽性もあるのだと、改めて説得される。美しい……。ソナタ第2番もそうだ。なんと幅の広い演奏なんだろう。彼は決して楽曲の枠組みの中から飛び出ることはない。その制限の中で無限のミクロコスモスを表現する。圧倒的な葬送行進曲。久しぶりに、pでなくて、fの美しさを堪能できた葬送行進曲だった。そして驚くべき終楽章、あれは聴いた人でなければわかるまい。


リストも同じだ。リストはショパンよりもずっと彼の音楽的アプローチの仕方が似合っていたように思う。もちろんショパンも素晴らしいのだが、個人的な好みとしてはもっとはっちゃけたショパンも好きなのだ。ということで、後半1曲目の巡礼の年、これが良かった。澄み切った響き、勢いに任せず、丁寧に丁寧に音を積み重ねて聴かせる演奏にはただただ拍手。巡礼の年のみのプログラムも聴きたいなあと思いましたね。ロ短調ソナタも期待通り、素晴らしい演奏に感激です。こちらはもっと技巧的ですが、超絶技巧もさることながら、構成を意識した音楽作りに、いちいち目が覚めるような発見があり打ちのめされてしまった。アンコールのシューマンもたっぷり聴かせ、最後のバッハ、時が止まるような演奏とはこのことでした。


この日はNHKホールで、引退を表明しているマリア・ジョアン・ピリスとブロムシュテット指揮N響のコンチェルトが同じ時間帯のマチネであったようで、そちらに行かれたピアノファンも多かったのではないでしょうか。ベートーヴェンの4番というなかなかの良プロ。もちろんピリスも行きたかったのですが、ラストコンサートのピリスのベートーヴェンと、40年ぶり来日のラプラントのリストだったら、天秤にかけたら個人的にはラプラントでしょうね。ピリスだったらモーツァルトが良いです。ハイティンク指揮ロンドン響とやったモーツァルトは非常に良かった。

Liszt Liszt
Andre Laplante

Analekta

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