ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集


ウィーン・フィルの来日コンサート、今回はティーレマンとのベートーヴェン交響曲チクルスと、ブッフビンダー弾き振りのピアノ協奏曲チクルスということでしたので、迷わずに協奏曲に。いや、実際は少し迷ったのですが、まあティーレマンだから別にいいや、ということで(笑) 何時でしたっけね、数年前にNHKでティーレマン&WPhのベートーヴェンチクルスを放送していましたね。まああれを聴いたら、あくまで僕の好みの問題ですが、別にいいやってなりますよ。もちろん、ウィーン・フィルが折角来日するので、ウィーン・フィルを目的に聴きに行くのなら、意味はあると思いますが、僕はたまたま今年、ウィーンのコンツェルトハウスでもウィーン・フィルの演奏を聴く機会に恵まれたので(しかもマゼール指揮で)、これはもうティーレマンよりブッフビンダーだろうと。お金と時間があったら、全部聴けばまあそれが良いに越したことは無いのですが、高いしねえ……。


【プログラムG】(2013年11月13日、サントリーホール)
ピアノ&指揮 ルドルフ・ブッフビンダー
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
(アンコール) ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」から第3楽章
シュトラウス/グリュンフェルト オペレッタ「こうもり」メドレー


ピアノはスタインウェイ。コンマスはキュッヒル。なるほど確かに、協奏曲のときは、しかも今回は弾き振りですし、ホーネックよりキュッヒルの方がより適任なのかもしれませんね。第1番はブッフビンダーの指揮からスタートで、前にどこかの文章で読んだ通り、自分自身に音を集めるように振るんですね。それが特に、第1番のような正しく古典派な作品には非常に良い効果をもたらしていて、舞台の上でちょっと大きな室内楽を展開しているかのような、一つの触れがたい完成された美を生み出していくんですね。ウィーン・フィルも、音を聴衆に届けると言うよりかは、ブッフビンダーを中心として音楽空間を作っているという方が相応しいような演奏でした。まあ、それでもサントリーホールでは音は四方八方に飛んで行くわけですが。


さて、僕の大好きな「皇帝」、どのくらい好きかというと、このブログを始めたのは5年くらい前なのですが、最初に紹介したのが「皇帝」です、というくらいに好きなんです(ブログ開始当初なので、まったく中身のない文章なのですが……笑)。まあ、クラシック音楽を聴くようになったきっかけの曲なので、思い入れがあると同時に、僕はベルリン・フィルの演奏を偏愛していたので、昔はなかなかウィーン・フィルの音で「皇帝」を受け入れるのは難しかったですね。まあそんな話は置いておいて、まるで第1番とは別人のようなブッフビンダーのピアノに驚きです。1番ではウィーン的な音というか、優雅で品のある音だったのですが、皇帝では音の輝き、煌きがいっそう増して、スタインウェイのピアノの持つ良さを最大限に活かしていました。やはり「皇帝」はこうでなくっちゃ!


1楽章冒頭からすでにその眩しいほどの音が迸っていました。感情の起伏の大きさをどこまでも表現できるスタインウェイの音があるおかげで、弾き振りでは難しいであろうアゴーギクなどの調節は無用の長物と思わせるほどです。かえってある程度メカニカルなテンポが、ベートーヴェンの構築性の高さまでを表現可能にしています。また、だからこそ、ほんの一瞬だけ見せるピアノのテンポの揺れが、あふれた感情の現れとして聴衆の胸に響くんですね。嗚呼、2楽章の喩えようのない美しさ……。3楽章では唸っていましたね。乗りに乗った、本当に熱演でした。もう一つ付け加えたいのは、3楽章のホルンソロの絶妙さ。優しく柔らかく、それでいてどこまでも響くような、バランスの取れた音。これを聴けただけでもウィーン・フィルを聴きに来た甲斐があるというものです。


アンコールでは悲愴の3楽章と「こうもり」のアレンジ。ブッフビンダーってすごいヴィルトゥオーゾだったんですね。知りませんでした。「こうもり」だなんて、ウィーン好きな人には良いチョイスですよね。嬉しくなりますね。キュッヒルをはじめ、ウィーン・フィルの団員たちも、ブッフビンダーを絶賛しているようでした。演奏からも、演奏後からも、お互いのとても親密な間柄が見て取れて、こちらもホッコリ。素晴らしい演奏会でした。そして、ちょうど新しいペンケースを探していたのですが、ちょうど都合よくここで売っていたので、買って帰りました(笑)

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ブッフビンダー(ルドルフ)

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