ブラームス:交響曲第4番、ハイドンの主題による変奏曲、ハンガリー舞曲 (J. Brahms : Symphony No. 4, Haydn Variations op. 56a, Hungarian Dance No. 5 / Christoph Eschenbach (cond))


エッシェンバッハの公演を聴くのは、2015年のウィーン・フィルの来日公演以来です。ちょうどその年は映画「セッション」を見た後に行ったので、エッシェンバッハはウルトラ怖いおじさんにしか見えませんでしたが、ウィーン・フィルが一流なのはもちろん、N響は日本が世界に誇る超々一流オーケストラですから、指揮者が「ファッ○ンテンポ!」とか言って椅子投げたりすることもないでしょう。NHKホールは駅から遠いもので、いつも急ぎ足で向かうことになってしまい、その分ヱビスが美味いのですが、たまにはゆっくり優雅に飲みたいものです。


【NHK交響楽団 ベートーヴェン「第9」演奏会】
(2017年12月23日、NHKホール)
ベートーヴェン 交響曲第9番 二短調 作品125「合唱つき」
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
ソプラノ:市原 愛
アルト:加納 悦子
テノール:福井 敬
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:東京オペラシンガーズ


エッシェンバッハのベートーヴェンというと、ついあのクソ遅いピアノ・ソナタばかり思い浮かぶのですが、珍しくちゃんと下調べしたところ、N響第九には初登板ですが、エッシェンバッハは今年第九を振りまくっていることが判明。4月にフランス国立管、6月にワシントン・ナショナル響、本当なら5月にもロンドン・フィルとやるはずがキャンセルになって大野さんが代振りになりましたね。さらに言えば、昨年末はソウル・フィルでもやってますので、これはもう、エッシェンバッハは第九大好きおじさんと言えよう。ちょっと調べただけでも、2002年にロンドン・フィル、2004年には北ドイツ放送響とフランス国立管とパリ管、2006年にはフィラデルフィア管、2010年にワシントン・ナショナル響とやってますので、第九に思い入れがあるとどこかに書いてありましたが、嘘ではなさそうです。予習としてフィラデルフィア管(2006年)とナショナル響(2017年)を聴いてみました。フィラ管の方は取り立てて言うほどのこともないのですが、ナショナル響の最近のライブはなかなか楽しかったですね。エッシェンバッハがナショナル響音楽監督としてのフェアウェルライブとして2016シーズンラストにやった第九だそうで、このくらい楽しませてくれたら良いなあと期待も込めつつ。数年前でしたかね、エッシェンバッハがナショナル響の音楽監督契約を更新したというニュースにレブレヒトさんがブログで激おこしてましたが、それも今は昔。


結論から言うと、思っていたよりはかなり楽しめました。ナショナル響とやった第九は音響上の演出過剰な感じがしたのですが、N響は保守的なオケだという認識もあるんでしょうか、全体としては随分20世紀的な雰囲気でしたね。1楽章は特に言うことなしのああN響が第九の1楽章やってますね的な感じでしたが、どうやら僕が聴きに行った2日目公演は初日とは随分違ったテンポで始めたんですってね。面白いね。2楽章も流行より駆けず落ち着いたN響らしい演奏。基本的に堅実なんですが、たまに面白いことしたりエッシェンバッハが動きで魅せてくれるので、目で見て楽しめます。そんな1,2楽章が霞む、素晴らしい3楽章。思わずうるっときそうになりました。こういうときに素直に泣かないで堪えるのが僕の性なのでカタルシスがないのですが、これは良かった。4楽章は合唱が入ると、東京オペラシンガーズのときはいつも思うのですが、爆音なんですよね。ぐうの音も出ない上手さなんですが、とにかくでかい。そんでいつも思うんですが、このデカさの合唱でやるんなら、もうとにかく爆演の大団円!みたいなものしかそぐわないんじゃないかと。エッシェンバッハが古き良きどっこいしょ的ベートーヴェンに軸足置きつつ、所々ピリオドっぽかったり新版使ったりするのは全然良いんですが、僕はもうこの大音量の合唱が入ると、今まで聴かせてくれた小技はいったい何だったんだ、何のためにベーレンライター使ってんだよという邪念も浮かびます。結局は長めのパウゼで引っ張る演出だけが功を奏す結果になるというか……。まあ4楽章は今までの1~3楽章「のような音楽ではなく」なので、別に構わないですし、多くの人が大合唱の大迫力を求めているんでしょうし、少なからず僕もただ音圧に吹っ飛ばされたいなあという欲もあるんですけどね。ソリストも無難な男声と随分好みの分かれそうな女声(特にソプラノ)で、そういう意味ではどちらにも振り切れず。やはりハイブリッドというのは良い面もあれば悪い面もあるなあとしみじみ。昨年ブロムシュテットは東京オペラシンガーズ、一昨年のヤルヴィと4年前のデ・ワールトは国立音大でさもありなん。


色々書きなぐりましたが、繰り返すと、結論としては思っていたよりはかなり楽しめました。エッシェンバッハがやはり第九大好きおじさんだということがよくわかりました。多分ね。表情とか、指揮の様子とか、すごく楽しんでいるように感じました。そういうものからしか生まれない音楽もありましょう。ピッコロの菅原さんが寝落ちしてるのも見えちゃいましたが、こういうのってちゃんと起きるんですよね。電車乗ってるときの居眠りなんかも、なぜか降りる駅の手前でふっと目が覚めたり。ああ、あと、低弦が歓喜の主題弾き出したら後ろの席から「ほら、知ってるでしょ、知ってるでしょ」と囁き出した方、振り返ってないのでどんな同行者に言ってたのか知りませんが、せめて大合唱が始まってから言ってくれれば良かったものを。それはさておき、第九大好きおじさんは来年タングルウッドで第九やるので要チェックですね。まあ覚えてたら聴こうか(笑)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、第12番「葬送」、第14番「月光」 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、第12番「葬送」、第14番「月光」
エッシェンバッハ(クリストフ),ベートーヴェン

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