プレイズ・アンコール


ゲルハルト・オピッツは「ドイツ・ピアノ界の正統派を代表する演奏家」と評されています。その通りでしょう。僕は高校生の頃、自分がブラームスの練習をしている時期にオピッツの録音に出会い、それ以来長く愛聴しています。カプリッチョやラプソディ、パガニーニの変奏曲などは特に当時気に入って聴いていました。今でも彼のブラームスを聴くと、高校時代の通学電車の中を思い出します。当時はMDウォークマンで聴いていました。懐かしいなあ。


【ゲルハルト・オピッツ シューマン×ブラームス連続演奏会(第2回)】
(2016年12月16日、東京オペラシティコンサートホール)
シューマン:森の情景 作品82
シューマン:ピアノ・ソナタ第1番 嬰へ短調 作品11
ブラームス:3つの間奏曲 作品117
ブラームス:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 作品1
アンコール
ブラームス:6つの小品 作品118より第2曲 間奏曲 イ長調


シューマンの森の情景は、これも僕は個人的に思い入れのある曲ですが、奇をてらうこともなく、まさに堂々たるドイツ正統派、柔和な音色と芳醇な響きでシューマンの世界観を描き出してくれます。そういえば、真剣に(というか曲集の中で)予言の鳥を弾くのを久しぶりに聴きました(笑) ソナタも迫力ある演奏。師のケンプに似たものを感じますね。つまり、言葉でその魅力を伝えるのは大変難しいということです。ケンプの名盤だってそうでしょう。


僕は前から2列めの真ん中あたりで聴いていたのですが、シューマンが終わって休憩に入り振り向くと、まあ空席の多いこと。僕にとってオピッツは高校生の頃からのヒーローですが、そんなもんなのでしょうか。もちろん、超人気ピアニストではないでしょうし、コンチェルト以外のソロはチクルスばかりで招聘されているようですので、そこまで集客できないのは理解できるのですが……。とりあえず、招聘元のPCMさんに頑張ってもらうしかありませんね。KAJIMOTOとジャパン・アーツの二強時代になってしまった今、神原の後釜であるPCMさんを陰ながら応援しましょう。まずはスマホ対応サイトになってください!笑


ブラームスの間奏曲は、知る人ぞ知る名曲で、もちろん内声の複雑な絡み合いが魅力なのですが、そういう単打で繋いで繋いで得点するような曲の中に突然のクリーンヒットを打つような、旋律に自信のないブラームスとは思えないようなお涙頂戴の超名旋律が現れるという、そういう曲だと認識しています。たっぷりと滋味深い演奏を堪能しました。打って変わってソナタ1番、若きブラームスの情熱ほとばしる素敵な曲です。オピッツのブラームス全集での録音でもブラームスかくあるべしというシンプルで力強い演奏でしたが、やはりライブは熱が違いますね。最初なんかあまりにも気迫がありすぎてちょっと指も空回りしていましたが、オピッツの演奏はすぐに波に乗り、ゲルマン魂よろしく、不屈の精神でブラームス音楽の権化となりました。構築力と、ブラームスのピアノ作品に特徴的な狂おしい情熱が見事なまでに表現されていました。終楽章のテンポの速さはCD以上でしたね。隣席のご婦人も驚かれていましたよ。感激しました。


オピッツは小柄なのですが、体格は良くて巨匠風に白ひげをたくわえ、まるでサンタのおじさんでした。ブラームス全集のCDにサインをもらって、ちょうど自分へのクリスマスプレゼントになりました。いつか生で聴きたいと思い続けていたのですが、ついに実現して嬉しい限りです。また聴きに行きたいですね。

ブラームス:ソロ・ピアノ作品全集 ブラームス:ソロ・ピアノ作品全集
オピッツ(ゲルハルト),ブラームス

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