チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」


最近はまずコンサートに行けそうな日にちを選び、その日にやっているものの中で興味深いものに行くというスタイルになり、しかもマチネ限定で探しているので結構難しいのですが、来日オケの日程と自分の予定を見ていてぴったり来たのがジョルダン率いるウィーン響でした。素晴らしい! それで確か急いでチケットを取って温めておいたので、直近になるまで曲目も席も何もかも覚えていませんでした。お、そろそろだなと思ってサイトを確認したら運命とブラ1というカレーとハンバーグみたいなプログラムで、チケットを確認したらP席で、おお、チケットを取ったときの僕はどういうチョイスをしたのかと自分でちょっと驚いてしまいました(笑)


【ジョルダン指揮ウィーン交響楽団 来日公演】(2017年12月3日、サントリーホール)
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
 アンコール
 ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
 J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ
 指揮フィリップ・ジョルダン


ジョルダンは非常にきびきびとした指揮をしますね。動きが大きくかつ俊敏で、特に腰をぐっと落とすスタイルです。パパとは違いますね。宣材写真の通りの動きをするので思わず笑いそうになりました。この容姿で、このかっちょいいスタイルの指揮ですので、女性ファンも多そうです。僕も休憩のときにロビーで「ジョルダンさんがかっこいいわ!」という女性の声を聞き、そりゃそうだよなあと。全国の吹奏楽部の顧問をしている先生方が指揮のときにぐっと腰を落としてがに股になると本当に見ててみっともないなあと思ってしまうんですが、このくらい容姿に自身がある方なら、または足が長ければ、がに股で指揮をしても女性からもかっこいいと言われるようですのでご参考になさってください。


ベートーヴェンの第5番は全楽章ともアタッカで、テンポもスイスイ、あれよあれよという間に終わり、長い序曲を聴いているかのようでした。悪い意味ではなくて、テンポを変にいじらずに、大胆なダイナミクス調節で旋律を歌わせるので、「おお、ここで落とした」「ここで上げたぞ」と音の大小の面白さを追っているだけでも時間が瞬く間に過ぎていきます。それも不自然に聞こえないのは、ウィーン響にまだローカルさというか、温もりのある音色が残っているからかな、などと思いました。聞きながら、これはベルリン・フィルあたりでやったら面白いんだろうけどあまりにも機械的になりそうだなあ……なんて。またそんなダイナミクスレンジ調節をきっちりインテンポの中で行っているからこそ、1楽章につき1度くらいでしょうか、まるでそこにフェルマータでもあったのかと思うようなフレーズ終わりの長めの沈黙も効果的に聴こえましたね。奏者の熱量も感じましたし、素晴らしい演奏だったと思います。ベト5でティンパニ叩いていたのは多分アシスタントティンパニ奏者のThomas Schindlだと思いますが、よくジョルダンに「もっと出せよ」と煽られていたので、ソリスト紹介のとき彼には周りの奏者たちからひときわ温かい目線と拍手が送られていたのが印象的でした。


前半終わって舞台転換のときに、どうやらティンパニの右2台の位置が逆だったようで、休憩終わり頃に焦ってステマネの人が動かしていました。オケが舞台上に出てくると、ブラームスで叩くのはSchindlではなく、ウィーン響ティンパニの大親分ミヒャエル・ヴラダー先生のようで、彼も舞台に上がりティンパニの前に座るや、結構焦ってチューニングしているのを見て、僕は若干ひやひやしていました。そのせいでブラームスの冒頭のジョルダンの指揮を目に焼き付けるのを忘れてしまい実に悔しいのですが、ヴラダーはなんとか間に合って、あの冒頭のCのティンパニ連打をクールにぶちかました、という感じでしょうか。C連打をしつつ少しチューニングいじってたので、勝手に心配してしまいましたが、まあそこはプロ中のプロですから、出音としては問題ないんでしょう。僕がP席前列ど真ん中にいたのでつい見てしまっただけで、多分ほとんどの人には気にもされなかったはず。


ブラームスもベートーヴェンと同じアプローチで、このカレーとハンバーグという王道メニューをきちんと飽きないような味付けで調理していました。つまりインテンポで、ダイナミクスレンジ調節で歌って、目の覚めるような新しいハーモニーを作り、時折見せる息の詰まるフェルマータ……上手く調理していますね。スコアをクリアに浮かび上がらせる流行の演奏とはまた少し違って、ジョルダンの作為が見えるのが楽しいですね。そして嫌らしくならないのは、彼の磨かれた感性のおかげでしょう。ベートーヴェンでは不調気味だったホルンも復活し、木管も上手くて特にファゴットはめちゃ上手い、ヴァイオリンソロもメロメロに美しく歌い、フルートソロも爆音朗々(僕はここは抑え気味の方が好きなんですが)、とても色彩豊かです。特に3楽章は良かったですね。ジョルダンも手振りに変えて、オケも室内楽的な響きから徐々に大オーケストラの響きへ拡大していく様は見事でした。


アンコールはハンガリー舞曲5番とトリッチ・トラッチ・ポルカ。最後までジョルダン節炸裂。トリッチ・トラッチ・ポルカでも、スネアのSchindlさんは「もっと来いもっと来い」と煽られてました(笑)これを聴いちゃうと、早くウィーン・フィル振って頂戴って思いますよ。ニューイヤー登壇お待ちしております。

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フィリップ・ジョルダン,パリ・オペラ座管弦楽団

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