チャイコフスキー:弦楽四重奏曲全集


東京・春・音楽祭に行くのも5年ぶり、京都フランス音楽アカデミーの素晴らしい演奏会以来です。今回もそのときのような素晴らしい音楽体験ができることを期待して、まあボロディンSQなのでよりいっそう期待が膨らみますね。


【ボロディン弦楽四重奏団 ~結成70周年記念:ロシア音楽の潮流を聴く】
(2015年4月3日、東京文化会館小ホール)


ボロディン:弦楽四重奏曲第2番 ニ長調
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番 ハ短調 作品110
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 作品11
アンコール
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏のための2つの小品より エレジー
ボロディン:スペイン風セレナード


年度始めのこの忙しい時期に、サイン用のCDを持ってくるのも忘れ、財布にもお金はなく、おろしていたら開演に間に合わないという、バダバタで飛び込んだ小ホール、これが非常に良席で、前列のど真ん中、何列目かまでは忘れましたが、開演してものの数十秒、1曲目のボロディン2番1楽章でもう思わず涙ぐんでしまいました。東京文化会館小ホールは舞台と客席が近いからいいですね。もうボロ2だけでも聴く価値あり、このために来たと言っても良いようなもんです。研ぎ澄まされた音、心の琴線に触れる歌い方、それでいて精密なアンサンブル、これこそ名カルテット。特に印象深い第1ヴァイオリンのアハロニアンさん、フレーズの高音の処理が絶妙で、感情的になり過ぎず、常に品位がありました。この方はモスクワ音楽院卒業後、レオニード・コーガンに師事したとプロフィールに書いてありましたが、もう見てすぐに納得。彼一人だけ弾き方がコーガンの弾き方そのものでした。かっこいいのなんの。冷静と情熱の間、なんてのがありましたが、まさにそれ。いやあ惚れ惚れしました。

レオニード・コーガン ~ ボルドー・リサイタル 1964 & ショスタコーヴィチ : ヴァイオリン協奏曲 第1番 (Bordeaux Festival 1964 & Shostakovich Violin Concerto No.1 / Leonid Kogan) (2CD) [輸入盤] [日本語解説付] [Live Recording]

アハロニアンの師、レオニード・コーガン


この全体に良い意味で睨みを利かせる、正確無比な第1ヴァイオリンがあってこそ、ときにオーバー気味なヴィオラやチェロの遊びが引き立つのです。チェロのバルシンさん、ピツィカートの多彩さと正確さ、これも素晴らしかったですね。ショスタコーヴィチの8番は、ボロディンSQと言えばタコ8というくらい、彼らの十八番です(といっても、有名な録音の頃のメンバーには、当然現役メンバーは一人も未加入でしたが)。この過去の名手たちがボロディンSQの名声を築いた曲を演奏するのは、現役のカルテットにとっては挑戦であり続けるでしょうし、またそれが宿命なのでしょう。しかしその名声を傷つけることのない、果てしない一体感を味わえる演奏でした。素晴らしかった。各人の個性的な味わいもあり、一体感もあり、これぞ真のカルテットの風格です。アンコールも2曲もやってくれて、大満足の演奏会でした。


前半にボロディンとショスタコで、後半にチャイコの1番だったのですが、休憩中に空きっ腹にビールを入れてから聴いてたので、チャイコについてはあまりコメントのしようがないですね。そもそも、ボロディン2番とショスタコ8番の後のチャイコ1番ってのも、ちょっと興ざめと言いますか、ベートーヴェンの第九やった後にモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークやるようなもので(大げさかな)。チャイコフスキーの弦楽四重奏曲はどれもとてもきれいな曲で大好きですし、それこそボロディンSQの録音でもよく聴く愛聴盤がありますが、やはり圧倒的名曲2つと比較してしまうと、中身がスカスカなのが悪目立ちしてしまいますね。スカスカなのはもちろん悪いことではないですし、そういうのを聴きたいときだってあるんですが……。まあそんなプログラミングの話を差し引いても、とにかく上手いボロディンSQだったので良いんですけどね。やはり段違いに上手いのは正義です。

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