悲愴・月光・熱情・告別~ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ名曲集


ソワレは久しぶりです。子どもが小さいうちはソワレを自粛していますが、妻よりご高配を賜った次第であります。ありがたやありがたや。これは妻が偶然、偶然ですよ、家でチラシを見たことに加えまして、ブッフビンダーという名前を過去に聞き覚えあったことによって「ブッフビンダー、行きたいんでしょ?」という言葉を頂戴するに至ったのであります。いぇーい。


【ルドルフ・ブッフビンダー ピアノ・リサイタル】
(2019年9月23日、東京オペラシティコンサートホール)

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 「悲愴」 作品13
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 「ワルトシュタイン」 作品53
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 「熱情」 作品57
アンコール
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 作品31-2「テンペスト」より第3楽章
バッハ パルティータ第1番 BWV825よりジーグ


お彼岸だったので遠くにおりまして、家族揃って車で帰ろうと高速乗ろうとしたら掲示板に事故渋滞とあり、慌てて僕だけ電車に乗り、なんとか間に合いました。連休最終日、運転は気をつけないといけませんね。つくばエクスプレス久しぶりに乗りました。


さて、前置きは終わりにして、感想ですけども、いやー良かったですね。特にワルトシュタイン、圧巻の演奏。集中力も続き、ブッフビンダー節もノリノリでありつつ、ベートーヴェンらしい構造も崩壊もせず、洒脱であり高貴でもあり、ああ、これを聴きにきたのだと頷ける演奏でした。


3曲ともに、ブッフビンダーだからこそ許されるであろう、ウィーンの巨匠としての立場だからこそ文句が言われないであろう、まあ人を小馬鹿にしたような舐めた技のコンボが炸裂。絶妙なタイミングのペダリングが生むのは響きだけでなく、アーティキュレーションを際立たせますね。とまらないおしゃべり、ふと一呼吸を置く間、周囲の視線を引くようなゴテゴテなど派手装飾音、まあとにかくよく「語る」演奏でした。この高飛車な口調。ベートーヴェンを歌うピアニストは多いですが、シュナーベルのごとく「語る」スタイルはめっきり少なくなりましたね、いやー聴けて満足満足。


あまりにそういう口調が煩すぎるときもあるんですが、1曲目に悲愴を持ってきてくれたおかげで、若干慣らし運転でちょっと薄味な演奏だったのもあり、万人が感動できる2楽章になったように思います。あのメロディを純粋に堪能できたのもそれも良かったです。ワルトシュタインは先も言いましたがカンペキ。客席の寝息協奏曲を除けば満点です、花丸。というか、ワルトシュタインでもダメかーって感じ。知名度の話ね。寝るか、そうか。悲愴、熱情やるコンサートなら、やっぱり月光やるしかないのかと、無念な気持ちになりました。四方八方から寝息が聴こえてきました。僕の右隣のおっさんも。ああ、やだやだ。休憩明けて熱情、タメずにサラサラ弾くも謎の声部アピールやパッセージの面白さを強調するかのような変化球を出しまくり、ブッフビンダー成分濃い音楽に。その結果やや暴走してちょいミスもありましたが、まあご愛嬌と思わすだけのテクはあったでしょう。危ない橋渡り気味だったかもしれませんが流暢な語り口はキープし続け、3楽章の最後のコーダの最後の最後にシャレオツな抜け感、逆転ホームランで聴衆を黙らす、ずるいわあって感じでした。雑な感想ですみません、評論家じゃないんで勘弁してください。


アンコールは僕の大好きなテンペスト、これももうサラサラーッと、〆のお茶漬けか何かのよう。バッハはちょっと可愛げあるデザートのよう。「まだ拍手鳴るの?」とおどけるような仕草もありましたが、予定されたアンコールを事務的にこなしたのが本当でしょう。メイン熱情だけだし、サイン会は要らないからアンコールもう何曲かやってくれ……という気持ちでした。サイン会もなかなか面白かったようですが。また聴きたいですね。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&第3番(日本独自企画盤)
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