ロータス・カルテット シューマン:弦楽四重奏曲全3曲


カルテット好きを自称していながら、なんだかんだで生でプロの演奏を聴くのは年に1回くらいです。大して肥えた耳ではありませんのであしからず。でも好きですよ。そしてそれ以上に、シューマンが大好きです。そうそう、休憩中に、久しぶりにアップルタイザーなんか飲んでしまいました。アルコールを躊躇させるほどの、前半の演奏の満足度と後半への期待度というやつですよ。


【ロータス・カルテット シューマン弦楽四重奏曲全曲演奏会】
(2018年3月26日、Hakuju Hall)
シューマン
弦楽四重奏曲第1番 イ短調 作品41-1
弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 作品41-2
弦楽四重奏曲第3番 イ長調 作品41-3


ロータス・カルテットのシューマンと言えば、言わずと知れた名盤があります。当然これを念頭において聴く訳ですが、そもそもシューマンの弦楽四重奏曲というものが、まず大変マイナーな作品であるということ。同時代の作曲家たち、例えばショパンやリストは、シューマン以上にピアノ音楽に心酔していきますし、ワーグナーはオペラ専門と、ロマン派の作曲家たちからは割と見捨てられているジャンルなんですよね。メンデルスゾーンとブラームスの傑作カルテット群の穴埋めというか、シューマンはちょうどその過渡期にあたる弦楽四重奏曲と見なされ、どうも日の目を見ない。さらに言えば、シューマンの作品の中でも、「室内楽の年」に書かれた作品としてはピアノ四重奏曲やピアノ五重奏曲という超名曲に向けた準備作品のように扱われがちで、正当な評価がされない傾向も感じます。それらはそれらで事実として、今回こうして本腰を入れたものというか、がっぷり四つで組むものに触れられるのは大変嬉しいですね。


2003年録音のロータス・カルテットのシューマン演奏は、なめらかな口当たりで同質感の強い音が特徴で、いかにもロマン派の音楽らしい懐っこさと精緻なアンサンブルが特徴だなあと感じていました。それからもう15年も経ちますから、色々と変わって当然だと思います。ルバートや遊びの少ないインテンポ演奏は変わらずですが、楽器間のフレーズの受け渡しや、微妙な音量バランスの工夫など、はっとするような絶妙な音楽作りに目が行くのは、生演奏だからという理由だけではないでしょう。古典的な形式美、スケルツォ楽章の溌剌さと緩徐楽章の歌のギャップ、そして何より変奏曲楽章の変化の付け方の巧みさ、これは絶妙でしたね。パンフレットにも、全曲通して聴くことで2番の魅力は俄然と際立ってくると書いてありましたが、まさにその通りで、シューマンの弦楽四重奏曲は実は2番が白眉だったのかと改めて気づきました。聞かせどころの多いこと。1番という美味なる前菜と3番という甘美なデザートに挟まれたメインディッシュのように聴けました。いやー、新しい発見がある演奏会は素晴らしいですね。


僕は、シューマンはやはりピアノの人であって、つまるところクララというピアニストのための音楽なんだと思っていますし、弦楽四重奏曲にしても、どうしても基本は和声ありきの旋律メインという形になってしまい、カルテットの醍醐味である対位法的な魅力が希薄なのですが、僕自身は心の底からシューマンのピアノ作品を愛しているので、むしろピアノチックな表情が現れるのは微笑ましいなあなんて思っていたんです。しかし、もちろんそれもあるのですが、やっぱり弦楽四重奏でないといけない部分もあるなあと、ちょっとお勉強しました。元も子もない感想ですが、個人的には良い機会でしたね。


コンサート終わりに、家族と合流して上野公園でお花見をしました。夕刻から夜桜の入りくらいまで、良い演奏の後に見る桜はまたひとしおですね。

ロータスカルテット~弦楽四重奏名曲紀行~ 杉並公会堂ライヴ ロータスカルテット~弦楽四重奏名曲紀行~ 杉並公会堂ライヴ
ロータス・カルテット,ハイドン・モーツアルト・プッチーニ・バーバー・ラヴェル・他

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