フェドセーエフ指揮N響 水曜夜のクラシック

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ムソルグスキー:展覧会の絵


N響が水曜の夜にクラシックやるよという連続企画の一つだそうです。N響のホームページを見たら、「喧噪をくぐり抜け、煩わしい日常をかわして、コンサートホールの座席に身を預けよう。そしてほんものの音楽だけが叶えてくれる夢の時間に心をはばたかせよう」とありました。僕も、特に子どもが生まれてからは、なかなかコンサートに行く時間もなく、こうして非日常を味わって夢の時間に心はばたかせるのも良いなあと、うんうんと頷いて文章を読んでいましたが、続きの文「余韻が残るほてった頬に春の夜風が心地よい。もう少しこの名残りを胸にとどめたいから、公園通りの隠れ家バーに寄ろうか」ってとこを読んで、何が春の夜風だここ最近の東京は春なんか一瞬ですぐ猛暑猛暑、こっちは隠れ家バーになんて寄る暇もなくお家に直行だぞ!と勝手に憤慨中です。


【フェドセーエフ指揮N響 水曜夜のクラシック】(2017年5月24日、NHKホール)
ショスタコーヴィチ/祝典序曲 作品96
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
アンコール 同曲3楽章コーダ
リムスキー・コルサコフ/スペイン奇想曲 作品34
チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32
アンコール ハチャトゥリアン/ガイーヌよりレズギンカ


指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー


それほど長くない曲ばかり4つ、それも、どれも僕の好きな曲で本当に楽しみにしていました。そして期待を裏切らないコンサートになり、大満足です。ショスタコーヴィチの祝典序曲、ついにこの曲を生演奏プロオケで聴くことが叶い嬉しい限りです。祝典序曲は、大学生のとき吹奏楽団で、自分が選曲会議に出して、実際に自分が指揮して演奏することのできた、数少ない曲で、思い出深い曲なのです。ファンファーレ、金管が冒頭から外さなくて一安心、外したらTKNホーンと呼んでやろうとか思っていましたが、冗談はさておき、どっしり構えたいかにもフェドセーエフらしい演奏でしたね。


ウォーミングアップを終えて、さてチャイコン、ベレゾフスキーを最後に聴いたのは4年前のラヴェル左手のための協奏曲ですが、本日も暴君ベレゾフスキーは良くも悪くも聞かん坊でしたね。1楽章から、全くもってオケとソロが合わず「お、今日は歴史的駄演をキめるかな」とひやひやしながら聴いていました。重厚にやりたいフェドセーエフ&オケと、超速でやりたいベレゾフスキーの対決は、結局ベレゾフスキーが全く引かないので、指揮者もオケもがんばって追随する形に。管楽器はボロボロ、正直ピアノもミスが目立つんですが、それ以上にベレゾフスキーの意志(というか我儘)の強さが圧倒的で、これがヴィルトゥオージティだと言い張っているような演奏です。その上、際どいほどに儚い弱音の美しさも、ベレゾフスキーのロシア・ピアニズムなんですよね。もう完全に「この弱音、君たち活かしてくれるよね?」とか「僕はこのテンポでやるから早く付いてこいよ?」と問いかけているようでした。当然、活かしきれず、付いてこれずですよ(笑) 開いた口が塞がらないとはこのことです。


多分ですが、ベレゾフスキーもこの死ぬほどやり尽くされた曲で何か変わったことにチャレンジしてみたかったんでしょう。3楽章でやっとこさ、折れた指揮者とオケがなんとか食らいついていましたかね。弦は相当がんばっていました。管は死亡。オケ不要のベレゾフスキー大サーカスでした。ブラボーはブラボーですが、N響のファン層には受け入れがたい演奏でしょうね、ベレゾフスキーのファンはガッツポーズでしょう。ちなみにフェドセーエフも演奏後は満面の笑みで、ソリストを称えるしかありません。アンコールに、3楽章コーダを再演。さすがフェドセーエフ、こうでなくては。オケは(当然)さっきより上手に演奏、ピアノはちょっと疲れてましたね、まあこうされたからにはベレゾフスキーもさらに熱を込めないといけないですし、いじわるしたらいじわるで返された仲良し音楽仲間で微笑ましいです。怪演を聞かせてもらいました。


怪物が去った後は、順調にフェドセーエフの世界を堪能です。スペイン奇想曲はスペイン風味皆無、重い重いロシア音楽でした。各々ソロも良かったのです。ただマロのソロはイマイチ雰囲気に合わず残念。まあ逆にどうしたらこのスペイン色の濃いソロをスペイン風味ゼロの演奏に合わせられるのか謎ですが。しかし全体としては、チャイコでアクセル全開に吹かしたおかげか、アンサンブルも良くソロも上手く、素晴らしい演奏でした。良いコンディションで臨めたフランチェスカ・ダ・リミニも、フェドセーエフのファンならこれを聴かずにはいられない超定番ですが、期待を裏切らない、よく落ち着いて濃厚で、涙ちょちょ切れるドラマを奏でてくれました。コントラバスぶおんぶおんですよ。途中からN響がモスクワ放送響に聴こえてきました(脳内補完で)。うおおーN響もこんな風に弾けるのかーと心の中で叫びました。


アンコールはレズギンカ、太鼓叩いてお祭り騒ぎ。これを見に来ました。迷打楽器奏者サモイロフ氏直伝(嘘)のリムショットを生で聴ける喜び。竹島さんブラボーです。迷トランペット奏者ゴンチャロフ氏直伝(嘘)の奏者はいませんでしたが、とにかくフェドセーエフのファンには文句なしの(そしてベレゾフスキーのファンにも文句なしでしょう)素晴らしい時間でした。また聴きたいですね。

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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