山縣万里 チェンバロ《ひとり琴 七弦 〜Masque〜》

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2020年2月を最後に、コンサート通いを自粛していたので、ずいぶん久しぶりです。近江楽堂でチェンバロのリサイタル、楽しみにしていました。

【山縣万里 チェンバロ《ひとり琴 七弦 〜Masque〜》】
(2021年10月25日、東京オペラシティ近江楽堂)

W.バード/鐘、運命、ウォルシンガム
G.ファーナビー/マスク、古いスパニョレッタ
G.ピッキ/バッロ、パッサメッツォとサルタレッロ
J.-H.ダングルベール/組曲、リュリの抒情悲劇アルミードよりパッサカーユ
O.レスピーギ/リュートのための古い歌と舞曲より


久しぶりにコンサートに行ける喜びを噛みしめつつ、チェンバロの音色を堪能しました。「マスク」がテーマという面白い選曲。山縣さんいわく「この1年半、常にそばにあって苦楽を共にしてきた、マスク。」ということで、本当にその通りですねという感じ。シェイクスピア時代の仮面劇や芝居に関わる音楽と、そこから派生して、舞踏会や舞台での踊りの音楽ということだそうです。


近江楽堂にチェンバロが2台。1つは鍵盤が一段で小型のもの、ヴァージナル的な音のものだそうで、もう1台はフレンチ式。前半はその小型のチェンバロを使い、仮面劇がテーマ。シェイクスピアの時代、例えば「ウィンザーの陽気な女房たち」に出てくるフレーズは、当時のバラードの歌詞をもじったもので、そういう流行歌が劇に用いられていたというお話や、それらが鍵盤の曲の題材になっているというお話など、解説付きでわかりやすい演奏会でした。まずはご挨拶的に、ウィリアム・バードから。 ウィリアム・バードの「鐘」については、ジェイコブ編曲のウィリアム・バード組曲にも含まれていますね。そちらの組曲はかつてブログに書きました。



続いてのピッキ、英国鍵盤史の重要資料であるフィッツウィリアム・ヴァージナル・ブックに、なぜかイタリア人で入っている音楽家です。バッロ、パッサメッツォとサルタレッロ。踊りの音楽ですね。次はイギリスの作曲家、ファーナビーによるマスク、古いスパニョレッタ。マススは今回のテーマそのまんま。前半最後はバードのウォルシンガム。これは当時シェイクスピアのハムレットで、演劇の中でオフィーリアが歌う歌(もとは流行歌でしたっけ?)があり、その旋律を元にした変奏曲なんだそうです。演奏の前に袖かどこかから、元歌が流れて来たのですが、それはこの当時のマッドソング(狂い歌)のCDを最近出したという山口紗知さんが歌ってくださったそうで、演奏会の最後に出てこられて紹介されていました。ここまで丁寧に元歌を聴いてからなので、バードの曲もいっそう楽しめました。


前半は仮面劇、後半は仮面舞踏会がテーマ。後半のチェンバロはフレンチ式、近江楽堂にあるやつですね。まずはダングルベールがリュリの舞台作品をチェンバロに編曲したものと、ダングルベール自身の舞曲などをまとめた組曲。これがまた、2台目のチェンバロの音や迫力とよく合って、特にリュリの曲(1曲めと最後かな)は元がオーケストラでしょうから、スケール感みたいなのも含め、とても素敵でした。前半のじんわり来る小品も素敵でしたが、こちらも華やかで素敵です。さすがはルイ14世の時代、さすがはリュリ、リュリってやっぱ凄いんだなと再認識。最後にレスピーギのリュートのための古い歌と舞曲より抜粋、もちろんシチリアーナもあります。そしてアンコールとして、クープランの「神秘の障壁」、この曲は諸説あるけど、クープランが舞台劇を観に行ったことと関連があると山縣さんが最近本で読んだそうで、それで選んだ曲だそうです。なるほど。しかしこうして色々聴いて最後にクープランを聴くと、やっぱりクープランは鍵盤の扱いが天才的なんだなと感じました。同じチェンバロで弾いても響きが全然違いますね。一風変わったテーマで、様々な作品を聴けて、とても楽しい演奏会でした。

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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