猫語の教科書 (ちくま文庫) 猫語の教科書 (ちくま文庫)
ポール ギャリコ,スザンヌ サース,Paul Gallico,灰島 かり筑摩書房
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ポール・ギャリコ『猫語の教科書』


今まで読んだ猫に関する本の中で、一番印象に残ったのがこの『猫語の教科書』です。それからはバイブルと化しています。 裏表紙に書いてある紹介文を引用してみましょう。

ある日、編集者のもとへ不思議な原稿が届けられた。文字と記号がいりまじった、暗号のような文章。“£YE SUK@NT MUWOQ”相談を受けたポール・ギャリコは、それを解読してもっと驚くはめになる。原稿はなんと、猫の手になる、全国の猫のためのマニュアルだった。「快適な生活を確保するために、人間をどうしつけるか」ひょっとしてうちの猫も?


だってさ。つまり著者は名前も知らない猫なんです。ギャリコは翻訳したんです。頑張ったんでしょうねえ。これを書いた非常に頭の良い猫さんのプロフィールも載っています。「交通事故で母を亡くし、生後6週間にして広い世の中に放りだされる。1週間ほどの野生生活を経て、人間の家の乗っ取りを決意。いかにして居心地のいい家に入りこむか、飼い主を思いのままにしつけるか、その豊かな経験を生かして本書を執筆。四匹の子猫たちを理想的な家庭へと巣立たせた後は、いっそう快適な生活を送り続けている」とのこと。


猫は人間より上位にいる、というのは、多くの猫好きな人が感じることです。人間に忠誠を誓ったりする動物とは異なります。いや、もちろん忠誠を誓う猫もいるでしょうよ。ただ、「猫さんたちは人間をどう見ているか」、という視点は素晴らしいですね。第1章 人間の家をのっとる方法、第7章 魅惑の表情を作る、第16章 これはしちゃダメ、と猫から猫へ、人間との付き合いについて指南しています。


第12章 じょうずな話し方、から、印象深い部分を。
「人間は主にことばで意志の疎通をはかりますから、朝起きてから寝るまで休みなしにペチャペチャやっています。(中略)このため人間は、猫のことばを人間の言葉に翻訳して理解しようとしますが、もちろん人間語では猫語ほどたくさんのことを伝えることはできません」、「ありがたいことに人間にも、まあ少しは知性らしきものがありますから、猫のいろいろななき方、いろいろなニャーオがいったい何を意味するのかがまんづよく教えてあげれば、理解するようになります。もちろん猫の世界には、人間とはまったく違ったコミュニケーションの方法がありますよね。でも人間はことばに頼るしかないので、猫もそうせざるを得ません」


面白いことを言いますね。人間のコミュニケーションなんて、猫さんたちから見たら非常に幼稚なものに見えるのかもしれませんね。人間驕るべからず。自信満々に人間の「コミュニケーション」論を語る文化人も多いですが、猫さんには鼻で笑われますね。フニャッって。風刺も入っていますが、基本的には猫を愛しているだけの本です。しかし時に猫をはじめ様々な動物は、言葉でないコミュニケーションを示すようにも思います。


第14章 愛について、なんかもなかなか深いことが書いてあります。あと所々に挿入されている写真が可愛いですね。写真にはコメントが付いています。なんてったって、これは猫のための人生もとい猫生の手引書なんですから。何より、この本がただのファン・ブックではなく、文学作品として素晴らしいから僕は感銘を受けた訳です。文章全体もそうですが、特にオチには、しっかりとした文学性を感じます。