フジファブリックの「若者のすべて」が教科書に載ると知って驚いた元若者の気持ち

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フジファブリックの「若者のすべて」が音楽の教科書に載るというニュースを知って、驚いてブログを更新している。このブログは最近はまったり進行で時事ネタ反応速度も遅いので、異例中の異例である。フジファブリックが教科書! メジャーデビュー以来のファンとしては、2年前のMステ出演のときよりも更に驚きというか、喜びもひとしおである。しかし、ただ大喜びするだけではない、何とも言い難い感情も持っているので、それを何とかして言語化してみようという試み。


「若者のすべて」はもちろん大好きな曲だ。たくさん聴いたし、カラオケでもよく歌った。そういう僕の個人的な好きという感情とは別に、この曲はフジファブリックの曲の中でも「代表作」というか、顔役というか、とにかく、バンドの人気そのものを超えて流通量が多くなり過ぎちゃった感があって、なんかビビっちゃうんだよね。いや、もちろんフジファブリックはいまや超メジャーなアーティストだけど。昔は「フジファブリック好き」って言っても「誰?」がデフォだった。だからラジオで夏の終りに流れるようになったり、コンビニでもかかったりしたときには驚いちゃった。フジファブリック、そんなに大きくなっちゃって、お母さん嬉しい……みたいな親心のような。と言っても、それももう10年近くそういう状況かしら。それはそれで全然、良いんですけど、この「若者のすべて」流通量増加の理由はなにか。教科書に載るレベルなので曲が良いのはもちろんだが、最大の理由はBank Bandによるカヴァーだと思う。小林武史もインタビューで「本当に良い曲」と語り、アルバム『沿志奏逢3』の核になったというこのカヴァーが、個人的にはちょっと微妙なのだ……これを話すと長くなるけど、良い機会なので話そう。


「若者のすべて」は2007年のシングルで、2008年のアルバム『TEENAGER』に収録。このアルバムも含め、若かりし頃の僕はフジファブリックを聴きまくっていた。まあ今もハートはティーンエージャーだけど。それはともかく、とにかくフジファブリックの曲の「ちょっと変」だけどすごく共感もあってエモいところに惹かれていた。桜の季節、赤黄色の金木犀、陽炎、どれも普通のJ-POPのようなふりをした普通じゃない感じ、そこが良かった。いわゆる凄い音楽、尖った音楽はたくさんある。けどフジファブリックの音楽は、そこまで尖っていない、どこか緩さがあって、そのせいで「俺は凄い音楽しか聴かない」みたいなスカしたやつからは無視されて、だからといっていわゆる人気のJ-POPの通り一遍な雰囲気もしていないから「流行歌しか知らない」みたいな人からも特別好まれることもなく。なんかそんな鋭さと緩さの混在する矛盾した音楽が、自分の中の優柔不断さを許してくれているような気さえしていた。「若者のすべて」はそんな中でも圧倒的に良い曲で、すぐ好きになったし、正直、次のアルバム『CHRONICLE』でもこれを超えるものには出会えなかった。なお今は『CHRONICLE』は大大大好きな一枚である。



2009年の志村の訃報は衝撃だった。この年の訃報としてはマイケル・ジャクソンよりも個人的には大事件だった。フジファブリックは終わってしまうのかと思ったけど、それからも力強く続いていて、本当に感謝というか尊敬というか、嬉しくてしかたない。今でも追っかけて聴いている。今のフジファブリックも大好きだけど、志村全盛期のフジファブリックの楽曲について言えば、やっぱりいわゆるJ-POP向きではなく、オルタナ臭全開って感じで、その中で数少ない「J-POPとしても」出来がいい曲が「若者のすべて」なんだと僕は認識している。だからカヴァーにいたっても、ロックミュージシャンではなく、良質なJ-POP職人である桜井和寿や槇原敬之がカヴァーしたがるのは、ものすごくわかる。万人受けしやすいから、万人受けさせたいアーティスト向けでもあるし、当然教科書向けでもあるから、載るべくして載ったと言ってもいい。なんて、後からなら何とでも言えるんだけどね。


ただ重要なのは「J-POPとしても」の「も」で、フジファブリックのファンは「若者のすべて」のJ-POPとしての品質の高さに惹かれてるんじゃないのはもちろん、逆にありきたりなJ-POPのような中にあるちょと変なところ、それはつまり強烈な志村らしさで、オルタナの代名詞である泣き虫ロック=志村のヘタウマに心打たれてるんだと、そのように思う訳である。すべてのファンの心を代弁するような主語の大きい話をするつもりではないが、こう思うファンも多いと思っている。だから、言っちゃえばまあ、Bank Bandの「若者のすべて」はJ-POPとして魔改造された完全体みたいなものなんですよね。桜井さんが歌った方が志村が歌うよりずっと上手いしね。ただ、もはやあれは、超高品質なJ-POPであってロックではない。J-POPとしては「若者のすべて」が皆の欲しがるところだろうが、そこのフジファブリックのファンのあなた、ねえ、あなたも、そこのファンのあなたも、みんな、フジファブリックと言えば、志村正彦と言えば、「茜色の夕日」でしょ。そこ、そこなのよ。


独断と偏見か、まあそれはそうかもしれない。いやね、別に志村と言えばどっちの曲かとか、そんなのは勢いで書いただけでどうでもいい。僕は「若者のすべて」ばかりが出世していくのが悔しいというか、嫉妬しているのかもしれない。でも、菅田将暉が「茜色の夕日」を弾き語りしているのを見て、ああこの人は本当にフジファブリック好きなんだなって思ったし、カウントダウンジャパンの奥田民生の涙の「茜色の夕日」はもう言うまでもないし、「志村が音楽やめるんだったらその曲俺にくれ」でおなじみの氣志團によるフジフジ富士Qの「茜色の夕日」カヴァーとかも、もう、Bank Bandが「若者のすべて」を歌うのとは本当に文字通りの意味で「次元が違う」んだよね。どっちの曲が良い悪いなんていう話ではないし、別に桜井和寿に恨みがあるわけでもない(むしろ高校生の頃、クラスの野郎どもでミスチルのOverとかをカラオケで熱唱したのはかけがえのない思い出だ)、一方はJ-POPレジェンドであり教科書であり、他方は魂の叫び、つまりロックであると。


「若者のすべて」に触れる高校生が増えるのは嬉しい限りだ。そこからぜひ、原曲やアルバム『TEENAGER』、ライブDVDへと触れる人が一人でも増えてほしい。その教科書に載っているフジファブリックの「若者のすべて」は文字通り教科書的な音楽だ、教科書に書いてあることは大事にしろよ、そして、教科書の外にも大事なものがあるんだぜ。10代の諸君、真夏のピークが去った頃は、きっとこれからもこの曲が流れて、夏の終りを告げることだろう。でもね、大人になると、「短い夏が終わったのに今、子供の頃の寂しさが無い」。


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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