定本 物語消費論 (角川文庫)


何が言いたいかというと、もうタイトルで全て語っているので、これ以上でも以下でもないのだが、その補足説明のような文章になるだろう。真面目にアニメ文化について論ずるつもりなど毛頭ない。あくまで独り言、エッセイである。


僕はかねがね「ストーリー重視のアニメは1クール12話で終わらせないで欲しい」ということを口にしてきたのだが、この思いが決定的になったのは、何を隠そう「アイカツスターズ!」全100話を視聴してからである。僕はクラシックオタクかと聞かれれば、仕方ない肯定するけれども、別にアニメオタクであるとは自他ともに認めないところである。興味深いアニメがあれば見てみる、とそのくらいのものだ。

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ここ数年、いや、ここ十数年は、アニメと言ったら深夜アニメのことで、それ以外のアニメはめったに視聴しなかったと思う。ジブリ映画とか、細田守作品とか、映画くらいかな深夜アニメ以外では。いやDVDか何かで昔のアニメも見たか。それら全てが面白かったとは言わないものの、中にはとても感動するものもあったし、笑えるものもあったし、癒やされるものもあった。その殆どが12話完結か、24話、うまく続編が出来れば36話、48話くらい。これは制作側の都合もあるので仕方ないのはわかっているし、例えば日常系アニメと言われるものなんかは12話でも良いし、逆にダラダラ何話続いてもいい。そういう類のものもあるのはよく承知しているつもり。


そういう東浩紀が『動物化するポストモダン』というクソ本名著でデータベース消費だとドヤ顔で主張するようなゆるーいアニメなら良いんですが、しかしですね、ファンタジーやバトルものや群像劇など、要はストーリーをしっかり見せたいアニメについては、これは絶対に長編の方がいい。昔からわかっていたはずだが、どうもそういう長編アニメに触れない時期が長かったせいか、感覚を失っていたように思う。自称クソポストモダニストの言葉で言えば、消費する物語が欠落しているのではなくて、素晴らしい物語があるはずがあまりに短すぎて物語にアクセスする間もなく終わっちゃうんですよ。僕自身も、12話1クールというアニメのサイクルに触れ過ぎてしまったように感じる。それが普通に感じるようになっていたわ。それでもそれなりに楽しんでいたつもりが、季節ごとに移り変わっていくアニメをアホみたいに眺めていただけだったのではないか……。


頼む、最低12話というサイクルを壊してくれ、長編にしてくれ、語り切るのに必要な話数を用意してくれ……僕はアイカツスターズを2年間で100話見て、心底そう感じた。久しぶりに、長く続くアニメを見た。子どもの頃以来かもしれない。学生の頃レンタルDVDをイッキ見することはあっても、こうして毎週毎週1つのアニメの続きのために、この日のこの時間を楽しみにしていた生活が年単位で続く日々というのは、本当に小さい頃に毎週アニメを見てワクワクしていた日々以来だと思う。1週間後の話に行くまでの間に、インターネットでアニメの関連情報を目にし、キャラクターについて思案したり(本当にキモいなあと我ながら思う)、そういう「会えない時間が愛を育む」みたいなことを経て、キャラクターへの思い入れも大きくなるし、作品への愛情も増大してくるのだと、改めて気付かされた。


せっかく魅力的なストーリーや、魅力的なキャラクター、設定、世界観があるのに、いくらなんでも12話では短過ぎる。オリジナルのアニメで、1クール2クールでうまく完結できるように作っているものならともかく、特に原作があるもので丁寧にアニメに置き換えた結果12話では終わらないであろうものを、詰め込み詰め込み12話で終わるようにしているのは、流石に見ていて厳しいなあと感じるものも多かった。以下にちょっと例を挙げたい。


【短くて良かったもの】
・涼宮ハルヒの憂鬱

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原作のライトノベルも読んだが、ほぼ違和感なくアニメ化されていると思う。アニメは1期が14話、2期は24話だが、2気は内容が1期とかぶる部分もあるし、あの「エンドレスエイト」を含むのであまり考えないことにする。いわゆるセカイ系でストーリーも大事だが、キャラクターや設定も大事なアニメだと思うし、バランス良く、短くまとまっていて良いものだと思う。

・あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない

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ノイタミナの完全アニメオリジナルなだけあって、必要なものが必要なだけ揃っている。たった11話で、である。もはや映画1本見たのと同じくらいじゃないか。実際CMやら主題歌を除けば20分×11話で220分。これでも「短くてわけがわからん」とならないのは、設定が現実に近いもので、専門用語や世界観の理解に時間を取られないからだ。


【短くて残念だったもの】
・境界の彼方

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原作はラノベ。キャラクターはめちゃめちゃかわいいし魅力的だし、ファンタジー的要素もあり群像劇的な面もある。素材は良いのに、あまりに語りが短くてもったいないと感じたのは、このアニメが最初だったかもしれない。それぞれの要素は良いのだが、設定や世界観の説明に使える時間が短いだけに、こっちの話も知りたかった、この人についてもっと語って欲しい、もっと時間をかければこのキャラクターに感情移入できたのではないか、とモヤモヤしてしまった。めっちゃかわいいのに……。

・ノラガミ

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原作は漫画。キャラクターも魅力的だし、何より数が多い。声優陣も豪華だ。とにかく登場人物が多いと、短い話数で語り切るのは難しい。1期12話、2期13話と、それでも深夜アニメとしては頑張った方である。


【長くて良かったもの】
・夏目友人帳

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アニメは6期までやっている。すごい。人気があるからこそできるものだ。80話くらいあるのだろうか。原作は漫画であるが、アニメのおかげで人気が出たのではないかと思う。

・デュラララ

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1期が2クール、2期が3クールで合計61話ある。とにかく登場人物が多いので、正直これでも足りないんじゃないかと思うくらいである。原作は見ていないがラノベで13巻あるようだ。


とにかく先にクールという枠組みがあり、そこに当てはめて作るから、物語へアクセスできないうちに終わってしまうのだ。固い言葉で言うと、メディアミックスで展開することが運命付けられている現代においては、原作者や一次創作者は決してデータベース消費を前提としているとは限らないわけであって、ただアニメというメディアは何十年前と比べると物語へのアクセスができないような表現の仕方一辺倒になっているふしがあるのではないか、と思うわけである。音楽でも小説でも、何かのコンテストでなければ、長さの制限はないだろう。そういう制限が生む魅力があることは理解しているが、ただの足かせでしかないのでは意味がない。


僕が幼い頃に夢中になって見ていたアニメを思い起こしてみると、ドラゴンボールは153話あってドラゴンボールZは291話、さらにGTも見ていたから、これは相当長い。ドラゴンボールは逆に冗長過ぎだという意見は子どもの頃から友人たちの間でも話題にはなっていた。また今週も話進まないよね、と。しかし、それでもワクワクしたし、面白かったのだ。スラムダンクは101話。やはりこのくらいあると、キャラクターにも愛着がわく。クールな雰囲気に憧れていた当時は流川が好きだった。幽遊白書が112話、ツヨシしっかりしなさいが112話、みどりのマキバオーは61話、忍空も55話、とっても!ラッキーマンも50話、ぼのぼのが48話、花さか天使テンテンくんだって43話、他にも挙げるなら、これはリアルタイムではないが、機動戦士ガンダムも43話、Ζガンダムが50話。このくらいあると、やはり作品への愛が生まれる。


「だったら長編のアニメだけ見れば?」という提案はナンセンスである。そんなことは言われなくてもわかっている。そうではなく、今12話24話で無理やり終わらせているアニメを、必要なぶんだけ長編にできるといいのになあと、かなわない夢を語っているのである。そう、かなわないのだ。大人の事情で。作品数も増えたし、お金の問題とか、権利の問題とか、色々あるよね。それでも、夢は見るものじゃない、かなえるものだよ、と超名作アニメであるアイカツスターズで学んだので、こうして書いてみるのである。業界の偉い人の目に留まることだって、万が一あるかもしれない。もしあれば、そこんとこヨロシクお願いしますよ。

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