ベートーヴェン: 中期弦楽四重奏曲集 弦楽四重奏曲第7番~第10番

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第10番「ハープ」 変ホ長調 作品74


世に数多ある弦楽四重奏曲のうち、ベートーヴェンのものは極めて重要で、またベートーヴェン好きな人でも、「弦四好き!」という人でないと案外取っ付きにくかったりする。
というのも、たった4人の奏者による音楽なのに、交響曲並みに難解な音楽とされているからだ。確かに簡単な音楽ではない。ということで、敢えて難しい話から始めよう。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全16曲は、その作曲時期で初期・中期・後期と分類される。
作品番号18の6曲(第1番から第6番)が初期、第7番から第11番までが中期、第12番と大フーガを含む第13番から第16番までを後期と呼ぶ。
つまり、今回取り上げる第10番は、中期作品ということになる。
中期作品でも、第7,8,9番は連作の「ラズモフスキー」セットなので、第10番は、1~6番、7~9番というある程度まとまりのある作品群のものではなく、初めての独立した作品と言える。
「ラズモフスキー」が作られてから3年後の1809年にこの作品は完成するが、次の第11番を作曲した後14年間は、ベートーヴェンは弦楽四重奏を手掛けることをやめてしまう。
何にしてもそうだが、「中期」作品というからには、初期と後期の間にあって、非常にコメントしがたいものだ。古典派とロマン派に挟まれたシューベルトのように。
しかし、ベートーヴェンの中期カルテットは、やはりラズモフスキーの3曲が色んな意味で一番大きなウエイトを占めているだろう。これについてはまたの機会に語りたい。
それでも、第10番「ハープ」は、中期の作風から抜け出し始め、後期作品への橋渡しとなるような位置にある、なかなか重要な作品なのである(と僕は思うのだが)。
以上、難しい話だったが、まあそういった背景知識なしでも、ベト弦四の中では割と聴きやすい名曲だと思う。


何といっても、「ハープ」の呼び名の表す通り、1楽章の随所で見られるピッツィカートが、可愛らしくもありまた上品でもある雰囲気を醸し出している。
だがここで「ハープ」という呼び名にあまり捉われてはいけない。本当のところ言うほどハープじゃないし、言っても1楽章だけだ。だから別に「何がハープなんだか解らない…」なんて嘆く必要は全くない。
打って変って2楽章はアダージョ、これはベートーヴェン特有の深い瞑想という感じではない。もっと軽い気持ちで聴ける、それでいて様々な色艶が現れる美しい楽章だ。その色艶は、大きな音楽の流れを背景・伴奏として時々半歩前へ出るようなソロが担っている。
3楽章は運命の動機のようなものも見られ、これはテンションが上がる。生演奏でなくても、4人の奏者たちの対話が最もイメージしやすい楽章だ。
そして4楽章、変奏曲だが、ここではチェロ好きが泣いて喜ぶ、美しいチェロの旋律・対旋律に注目したい。そして、これも案外軽い終楽章である。ラズモフスキーなんかと比べるとぐっと軽い。
軽いのが良いかどうかというのは人それぞれだが、あまり気負わずに聴けるという意味では大変ありがたい存在である。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴き始めようと思うと、ラズモフスキーや大フーガ付きなどの重みのある曲の録音がメジャーに出ていたりして、難しいなあなんて思うかもしれない。
あるいは、CD何枚組の全集や初期作品集・中期作品集・後期作品集など、これまたどーんと重たいイメージがしてしまうものだ。
さすがにモーツァルトやハイドンのようには軽いもんじゃない。でも、ベートーヴェンの弦楽四重奏だって、もっと気軽に楽しめる作品なのだ。
そういう意味でこの第10番をオススメしたい。そしてこのブログでも、無限に広がるカルテットの楽しみを紹介していくつもりだ。

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タカーチ弦楽四重奏団,ベートーヴェン

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