Pletnev Plays Schumann

シューマン アラベスク ハ長調 作品18


ショパン・イヤーということでショパンについて書いたが、同時にシューマン・イヤーでもあった2010年。
もし一番好きな作曲家を一人挙げろと言われたら、相当悩むのだが、僕はシューマンと答えると思う。ということで、シューマンについても新しい記事を書こう。
「アラベスク(Arabeske)」つまり“アラビア風”という題名を音楽に用いたのは、シューマンが初めてだったようだ。
イスラムの唐草模様を表す言葉でもあるアラベスクは、聴けばやはりそういった綺麗な模様を思い浮かべてしまう。それはきっとシューマン自身もそうだったのだろう。
このブログのプロフィール欄でシューマンの「森の情景」が特に好きと書いているのだが、シューマンのピアノ曲にはやはり思い入れがある。
僕の好きなシューマンのピアノ曲は、組曲形式のものがたくさんあるのだが、そうではなく単一の小品として、とりわけ多くの人から愛されているのが、このアラベスクだ。
ピアノを弾く人にとっても、リスナーにとっても、これほど愛らしい小品はないと言っても良いだろう。


5分から7分程度の短い曲だが、短い動機ひとつにしても、また全体の曲の構成にしても、ある規則性を感じる幾何学模様を思わせる。
つまり、この曲を聴いた瞬間から、また何度も聴けば聴く程、シューマンがアラビア風の模様から得たアイディアを形式的な面で巧みに取り入れたことがわかる。
こういう巧みさだけでは、こうも愛される小品として世に残らなかっただろう。もちろん、この作品には、シューマンのもう一つの天性があふれている。
それはどんなものか。ショパンのピアノ曲に「詩情」があると前の記事で書いたが、シューマンのピアノ曲には「うた」があるように思う。
この曲は1839年の作品であり、クララと結婚してから4年程経った頃である。翌年にはシューマンは「詩人の恋」や「リーダークライス」など歌曲を多く生み出し、いわゆる「歌曲の年」に入るのだ。
彼のピアノ曲に、ひときわ愛の「うた」が込められるような条件は、もう十分満たされていると見ていいだろう。
それは優しさやちょっとした憂鬱さが代わる代わる顔を出す様子として描かれ、最後のコーダでは愛にあふれた歌がひとつの極まりを見せる。あまり特記されることがないのだが、このコーダの美しさがこの作品の大きなポイントだ。
込められた愛のうたが、あらゆる人に伝わってくる。そんな曲である。
だからこそ、ピアノ教室の発表会で、プロのピアニストのコンサートで、それはメインでもアンコールでも、ずっと演奏されてきた。
演奏する方も聴く方も誰もが、このエキゾティックでロマンティックな音楽から、愛らしい模様を見て感じることだろう。

Pletnev Plays Schumann Pletnev Plays Schumann
Robert Schumann,Mikhail Pletnev

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