ポンキエッリ イル・サント・ナターレ:小さな祈り、豊かな彩り

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ポンキエッリ イル・サント・ナターレ

ブログを始めたのが2008年8月、その年の11月にポンキエッリの歌劇「ジョコンダ」より時の踊りをテーマにしてブログ記事を書いている。なんとも悲しげな副題を付けており、実際のところ今でもポンキエッリは時の踊りくらいしか知られていない作曲家だと思う。


それでも吹奏楽界隈ではかつてはそれなりに知られていたようで、時の踊りの編曲版は盛んに演奏されていたし、吹奏楽のためのオリジナル作品もある。しかし今や吹奏楽界隈もクラシック作品に目を向けない傾向は大きく、ますます忘れ去られていく一方だ。そんな中、知られざるポンキエッリの音楽を世に出そうとする熱い試みもあり、2020年にリリースされた、世界初録音を含むポンキエッリのオルガン作品集は大変に素晴らしかった。ということで、ここでも紹介したい。


アミルカレ・ポンキエッリ(1834-1886)はクレモナ近郊のパデルノ・ファソラーノの教会音楽家の家に生まれた。パデルノ・ファソラーノは小さな街だが、偉大な作曲家にあやかり、1950年にパデルノ・ポンキエッリと名称変更している。ポンキエッリの名声はもっぱらオペラ作品に依るもので、「リトアニア人」(1874年)や「ジョコンダ」(1876年)は当時大好評だったそうだ。
生没年と歌劇の作曲年を見ればわかるが、オペラ作曲家として大成功しイタリアにその名を轟かせるのは40代になってからであり、それまではクレモナとピアチェンツァを中心にオルガン奏者として働いていた。また市の音楽隊のリーダーも務め、彼の作品が吹奏楽界隈で有名なのもそのおかげだろう。
オルガン奏者のキャリアとしては、幼い頃から同じくオルガン奏者の父から音楽の手ほどきを受け、ミラノで音楽を学び、1854年にクレモナへ戻り聖イメリオ教会のオルガニストとして活動開始。その当時に作られた新しいオルガンはシングル・マニュアル(1段鍵盤)で、ストップで高音低音を選ぶ小ぶりのものだったが、豊かな音色を持ち、ポンキエッリは演奏と作曲の経験を積むことができた。このオルガンは現存していないが、それに似た形式のオルガンでポンキエッリも弾いたとされる楽器がクレモナ近郊のカ・デ・ステファニ村(ヴェスコヴァート市)に残っており、上で挙げたCDはそちらを使用して録音している。
聖イメリオ教会時代に書かれたと思われる、16曲からなる「イル・サント・ナターレ」(Il Santo Natale)は聖なるクリスマスという意味で、14曲の番号付きパストラーレと、番号なしのパストラーレ1曲、葬送行進曲1曲という作品集。特に曲ごとの統一性はなく、各々が個性的な楽曲だ。ポンキエッリの父、ジョヴァンニに捧げられている。


オペラ・アリアさながらのロマンティックな旋律にオーケストラを彷彿とさせるリズミカルな伴奏の楽しい曲も多く、ポンキエッリの楽才に驚かされる。のどかな舞曲風の音楽や、フルートやオーボエなどの楽器を模しているかのような音楽など様々だが、どの曲も本質的に明るいというか楽観的というか、前向きな音楽に聞こえる。それは最後の葬送行進曲でさえ、あまりに深刻に嘆き悲しむというよりは、天上の人に想いを馳せ、何かを伝えようとしているような……。それはそれとして、また同時にオーケストラで鳴る音やオペラのための音楽の習作という意味合いもあったのかもしれない。
パストラーレというとクラシック音楽に親しんだ人はつい「田園詩」という言葉を想像するが、イタリアでは古くからクリスマスと関係の深い音楽であり、羊飼いたち(ピッフェラーリという)がクリスマスになるとローマへやってきて聖母マリア像の前で奏でた音楽のことを指す言葉でもある。
そうした田舎の小さな祈りの音楽が、このポンキエッリのイル・サント・ナターレのパストラーレなのだ。オペラ作曲家として名を成す前、小さな街から出てきて、教会のオルガン奏者として務めているポンキエッリが、その豊かな彩りを添えた小品をもって
故郷でオルガンを弾く父に捧げた祈り……そんな状況を思い浮かべつつ聴くと、またいっそう美しく感じる。


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Author: funapee(Twitter)
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