ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ

ザ・ビーチ・ボーイズが来日するので聴きに行こうと先輩からお誘いを受け、大好きな伝説的アーティストのライブに行けることになりました。クラシック以外はあまり自分でチケットを取らないので、おそらく誘われなかったら見逃していたでしょうし、後悔していたと思います。それくらいに良いステージでした。3月28日(金)、ビルボードライブ東京にて。東京ミッドタウンに立ち入ったのは2年ぶりくらいです。夜桜風のイルミネーションがきれいですね。


バックスクリーンに映る“The Beach Boys”のロゴのセンスの良さにまず感動し(『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ~』のジャケットもこのロゴなんですね)、心はもうグッド・オールド・アメリカへひとっ飛びです。気のいいおじさん(おじいさんか)たちが出てきて、気分はまるでアメリカン・ホームパーティです。マイクはよくわからない大きいサイズの半被みたいなのを着ていましたが(笑)


それにしても、マイク・ラヴとブルース・ジョンストンはとても70代とは思えないほどに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。彼らが2人横に並んで踊っているのを見たら、それだけでもう胸がいっぱいになりましたね。そして他の若いメンバーたち(もちろん“彼らより”若いという意味)も、完璧なコーラス・ワークでした。特にドラムの人の美声には少しびっくりです。ベースの人はきれいな声でブライアンのパートを補填していたし、キーボードの人も縁の下の力持ちとして、ビーチ・ボーイズならではの多彩なサウンドを支えていました。「スループ・ジョン・B」の出だしなんてCDかと思うほどでしたね。


1曲が短いとはいえ、矢継ぎ早にポンポン曲をやってくれるもので、こちらは終始顔がにやけてしまいました。かなり曲数も多かったような気がしますね。聴きたいと思っていたところは大体やってくれたような印象です。「素敵じゃないか」は案外早い段階で来ましたし、「サーファー・ガール」の圧倒的な美しさは言葉になりません……。大好きな「サーフィン・サファリ」、そして「409」と「リトル・デュース・クーペ」はバックスクリーンの映像もイカしていました。「グッド・ヴァイブレーション」はお客さんたちもどこでどう手拍子したら良いのか手探りな感じがして面白かった(笑) ブルースは常に煽っていましたが。「ヘルプ・ミー・ロンダ」のコール・アンド・レスポンスも楽しかったし、コール・アンド・レスポンスなんて関係なく他の曲でも勝手にコーラスを口ずさんでしまいますね。「サーフィン・U.S.A.」のときは、まだスタンディングしているお客さんが少なかったせいか、マイクがノリノリの僕らの方を指さしてくれました(多分)。


出来るだけスクリーンの映像よりも、ロック・レジェンドたちの姿を目に焼き付けようと思っていたのですが、サーフィンをするきれいな水着のお姉さんたちが映っていたり、地味に凝った演出の映像が面白くてつい見てしまいましたね。国内盤のCDのジャケットがアスペクト比と解像度がちょっとおかしい感じで流れてきたのも笑ってしまいました。メンバーがチャンバラのようなことをしている白黒写真が出ると、ブルースは「見ろ見ろ」とばかりにスクリーンを指さしていました。なんというか、日本へのフィーチャーの仕方が、マイクの絶妙な衣装もそうなのですが、一世代前の感じなんですね。ラストの映像も星条旗からの、日の丸にビーチ・ボーイズのロゴ。しかしそこがまた良い。「神のみぞ知る」はカールの映像ヴォーカルにバンドが伴奏するという形。彼らの生歌でも聴きたかったですが、これはこれでまた良い。


ほか、1ヶ月以上前のジョージ・ハリスンの誕生日を祝うナンバーや、カヴァーソングもあり、大満足の大ボリューム。「アイ・ゲット・アラウンド」や「ココモ」や「ドント・ウォーリー・ベイビー」も良かった。挙げていたらキリがないですね。ともあれ、ラストの「ファン・ファン・ファン」の予定調和。これを待っていました。本当に最高の時間でした。


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ビーチ・ボーイズも含めて、オールディーズはモノラル録音じゃなかったらここまで惹かれなかったのではないかと自問することがあります。その音が持つ遠さに憧れ、もう届かないものを希うこと自体がある種の快感なのではないかと。そう思う反面、もしこれらの音楽を当時の最高の生音で聴けたらどんなに興奮するだろうとも思うんですよね。


クラシックで言えば、例えばフルトヴェングラーの伝説的なベートーヴェンの録音を至上主義として、現代の演奏をメッタメタに非難ばかりする人を見てしまうと、なんて卑しい懐古趣味野郎だと眉を顰めることもあります。それが今日みたいに生ける伝説を目の当たりにできれば、憧れに恋する懐古趣味なのか真にその音楽性に惚れているのかはっきりするのにね。


僕はフルトヴェングラーの録音は好きだけど、その好きという気持ちが恋に恋するようなものなのか、つまり音質というフィルターが表現してくれた伝説性に惚れているのかどうかは、残念なことに永遠に確かめることはできません。だからもちろん、懐古趣味は大変結構だと思っていますし、そういう自分を認めることもままあります。しかし先日のライブは、ひとつの壁を超えることが出来た貴重な音楽体験でした。やっぱりビーチ・ボーイズは最高だね!

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ビーチ・ボーイズ,ブライアン・ウィルソン,トニー・アッシャー,マイク・ラヴ

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