ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1・3番


トッパンホールは駅から結構歩くので、寒い季節は厳しいのですが、帰り道はそんなこと少しも感じることなく、大満足で帰ることのできたコンサートでした。フォーレ四重奏団というピアノ・カルテットの名は決して忘れません。これからも応援したいと思います。


【フォーレ四重奏団 来日公演】(2014年12月12日、トッパンホール)
マーラー:ピアノ四重奏曲 断章 イ短調
R.シュトラウス:ピアノ四重奏曲 ハ短調 作品13
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 作品25
アンコール
ムソルグスキー(フォーレ四重奏団編):組曲「展覧会の絵」より 卵の殻を付けた雛の踊り
フーベルト:フォーレ・タンゴ
シューマン:ピアノ四重奏曲より第3楽章アンダンテ・カンタービレ


マーラーやR・シュトラウスのピアノ四重奏曲はなかなかの珍曲ですし、めったに演奏されない曲を取り上げてくれるのはさすが常設のピアノ四重奏団ですね。しかも、どちらの曲も、作曲家の隠れた魅力を再発見させてくれるような、圧倒的に上手い演奏を聴かせてくれました。マーラーの作品もR・シュトラウスの作品も、両者の若い頃に作られた曲ですが、スケール感や和声の展開など、後期ロマン派の音楽の特徴をいかんなく発揮させているものです。フォーレ四重奏団は、音楽の根底にある「ロマン的なもの」を、ときにおどろおどろしく、ときに繊細で優美に、巧みに弾き分けて表現していました。


オーケストラでも言えることですが、弱音が上手いというのはその音楽家が本当に上手い証拠でしょうし、さらに言えば「弱音と強音の幅の広さ」が腕を計る一つの指標になると思います。静と動の振れ幅が大きく、非常にキャパシティのあるカルテットだなあと驚いたのと同時に、どちらかに針が振り切れているようなときにも、常にアンサンブルのバランスが整えられているのだから圧巻です。


前半の2曲で彼らの上手さには舌を巻いていたのですが、ブラームスに関してはもはや何も言うことがないですね。シェーンベルクがこの曲をオーケストラ編曲した際に、「私はこの作品が好きだが滅多に演奏されず、しかもピアノ・パートに優れた演奏家がいるとそのパートが強調されるためにかえってまずい演奏になるため、全てのパートが聴こえるように編曲した」と語ったそうですが、本当にピアノ四重奏曲・ピアノ五重奏曲というのは、リヒテルしかりゼルキンしかりルービンシュタインしかりシュナーベルしかり、神がかり的なピアニストvs弦楽四重奏団という構図になることが多々あり、まるで協奏曲のようになってしまうことが多いのです。ブラームスのように、綿密に各パートを重ねあわせて音を織り進めるようなタイプの作曲家のピアノ四重奏曲では、ピアノと弦楽器のバランスが重要になるのは言うまでもありません。フォーレ四重奏団の凄さはそのバランスの良さだと思うのですが、もちろんこれはアンサンブルの上手さに依拠するものでしょうし、特にピアノのダイナミクスの調整が相当に練られているからこそ、深みのあるブラームスになったのでしょう。カルテットのメンバーにゲストでピアニストを呼んで演奏するものとは段違いの一体感がある演奏でした。


アンコールは全てチェロのハイドリッヒさんが日本語でお茶目に曲を紹介していました。1曲目の展覧会の絵は、コル・レーニョやピツィカートを駆使して面白くテクニックを見せる曲、2曲目はまたガラッと雰囲気を変えたタンゴ、そして3曲目にシューマン、クラシックで〆るという、完璧な構成。いいシューマンでした。これで満足できなきゃ他に満足できる演奏会はそうそうないでしょう。サインも貰えてホクホクです。ただ、サイン貰っているときに至近距離で写真撮られていたのが気がかりですね……。どこかに載らないといいなあ。

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