琉球交響楽団を応援する

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琉球交響楽団


その名の通り、沖縄で唯一のプロオーケストラ、琉球交響楽団を応援しようという意図で書いてみた。琉球交響楽団、略して琉響は、沖縄ゆかりの音楽家たちによるオーケストラで、県内で精力的に活動し、定期演奏会ではクラシックのマスターピースを演奏し、また子ども向けコンサートも多々企画するなど、沖縄のクラシック音楽界で重要な位置を占めている。


なぜ僕が琉響を応援したいのかの説明はあとにして、まず沖縄のオーケストラ事情について少し概観しよう。琉響のほかに、沖縄交響楽団というアマオケがあり、ここはマーラーの復活の沖縄初演を2006年に、マーラー5番の沖縄初演を2016年に行った、こちらも勢いあるオーケストラだ。学生オーケストラも、沖縄県立芸術大にも琉球大にもあり、それぞれ活動しており、プレイヤーの供給量は多い。僕は全く沖縄在住とかではないので、全部ネットに書いてある内容だけとなるのは悪しからず。


僕は沖縄生まれでもないし、実演も聴いたことがない。聴いたことがあるのはこの上で紹介しているCDのみである。このCDが、実は僕は結構好きだ。そう、3年に2回くらいは聴いている、と思う。その頻度は高いのか低いのかというのは置いといて、ほら1回聴いてもう聴かないのだってあるしね、まあAmazonではなかなか香ばしいレビューも多いが、どれも大体その通りと思えるような内容である。沖縄の民謡をオーケストラにアレンジした、それ以上でも以下でもない。しかも、そのアレンジが、クラシック音楽を好きな人なら誰もが知っているような名曲をモロにパクった、いや失礼、パロディにしたアレンジなのである。だから、なにか真面目に芸術的なものを期待している人には残念な出来に感じるかもしれないし、沖縄の音楽の混沌や熱狂的な魅力を楽しみたいという人にはいまいちオーケストラで聴く意味がないと感じられるかもしれない。褒めようによっては、民謡とクラシックの「チャンプルー」とでも言えなくはないが、混ぜ込まれた美味しさというのはなく、民謡にクラシックというソースをただかけただけに近い。しかし、僕はこの妙な陳腐さというか、さも芸術的な顔しながらなんら大したことをしていないという点に、沖縄らしいある種の独特な面白味を感じており、そこが好きなところである。


いくつか収録曲を紹介しよう。「てぃんさぐぬ花」は出だしからくるみわり人形のオマージュ。「安里屋ゆんた」はハリウッド万歳を思わせる、あるいはブロードウェイや吹奏楽チックなアレンジ。「豊年音頭」は聴いて驚く4拍子で登場するラヴェルのボレロ。「芭蕉布」もヨハン・シュトラウスの装いで春の声、これも腰を抜かす。僕はかつて何名かに紹介したことがある。一笑い取れたので満足だが、正直なリアクションとしては苦笑が多かった。そりゃそうだろう。

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琉響は2016年から大友直人が音楽監督になった。先のCDも大友による指揮。この指揮者について、ワタクシ不勉強であまり詳しくないのですが、ここで確かに言えることは「沖縄のクラシック音楽の展開に貢献している」ということである。以前ロドリーゴの「アンダルシア協奏曲」のときに少しだけ触れたが、この指揮者の音楽性はどうも私の理解の範疇を超えておられることが多いので、ちょっと近づきがたいのだけれども、まあともかく、有名な人が音楽監督になるのはとりあえずいいことじゃないでしょうか、知らんけど。


そもそも何で僕がこの記事を書こうと思ったかというと、最近プレジデントオンラインで『クラシック音楽のオタク化に抗う「琉響」の挑戦』という記事が出たからだ。音楽監督の大友氏がインタビューに答えており、琉響はクラシック音楽のオタク化に抗うと。読んだ素直な感想としては何言ってるのかさっぱりわからないし、それは大友氏のせいなのかライターのせいなのかわかりかねるし(琉響を責めるつもりはひとつもない)、この記事のクオリティについては甚だ疑問だが、それよりも重要なのは「琉響がプレジデントオンラインに載った」という事実であろう。それでもコメントするなら「オタク化に抗う?それは結構、なんせ、うちなー以外で琉響のことを知っているのなんて、よほどのクラシック音楽オタクだけでしょ」くらいなもの。琉響のCD持っているという話を出したらクラオタの人から「守備範囲広いですね」と言われたが、大概のオタクにとっては守備範囲外である。新しく出そうとしているCDでは、オリジナルの楽曲を携えて新しいファン獲得に意気込んでおり、どうにもまた、さらに守備範囲の狭いオタクしか引っかからなそうな企画で大丈夫かしら……とちょっと心配もしている。正攻法では勝てないから新たな道をチャレンジする、素敵なことだが、世の中にいるモーツァルトやベートーヴェンのファンの数をなめたらいけない。まあでも、そんな心配は、きっと日本のクラシック音楽界では有名で、顔も利く音楽監督さんにプロモーション活動をがんばってもらって、さらっと吹き飛ばしてもらいたいところだ。

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僕はたまたま、クラシック音楽が好きだし、沖縄の音楽も好きだったから、このCDがアンテナに引っかかった。初めてあの音階を知ったのは小学生の頃だった。なぜか心躍った。オレンジレンジやモンパチと共に育ち、HYのラブソングをカラオケで歌い、喜納昌吉&チャンプルーズの歴史的名盤の意義を理解したのは大学生になってから。琉響のCDを手にした頃は、10年くらい前だと思うが、まだ沖縄に行ったこともなかったし、別にこのCDをきっかけにして行きたいとも思わなかった。初めて行ったのは仕事の出張、半分遊びのようなもので、良いところだなと思い、その後も出張でちょいちょい行ったり、子どもを連れて家族旅行でも何度か行っているうちに、どんどん好きになった。なかなか行ったときに都合よく琉響を聴くことはできないけれども、自分の好きな土地で、自分の好きなジャンルの音楽をしている人たちのことを、応援したいなあという気持ちが湧いてきた。


例えば北海道には、日本のクラシック音楽界のレジェンドである伊福部昭がいたし、札幌交響楽団という、全国に多くのファンを持つオーケストラがある。最近も長く札響でシェフを務めたラドミル・エリシュカの訃報は大きな話題になった。では沖縄はどうか。ポップスは大いに盛り上がった歴史はあれど、クラシックでは決して恵まれた環境とは言えないだろうし、沖縄という場所の抱える多くの問題は音楽をすることにも影響がないことはないだろう。北の札響に並ぶくらい、南の琉響と認知され、レパートリーから新作まで意欲的に取り上げ、そして沖縄クラシックの母である金井喜久子作品を世に広く送り出してほしい。


僕にできる応援は、せいぜいこうして記事に書いてインターネット上に言葉を送り込むことだ。果たしてこれがちゃんと応援になっているのかというツッコミはなしにしてもらって、ぜひ皆々様にも、琉響ひいては沖縄のクラシック音楽界を大いに盛り上げる手助けをしていただきたい所存である。新しいCDのクラウドファンディングに興味がある方は、以下のリンクよりぜひどうぞ。あ、今日までだわこれ……琉響さん、遅くてごめんなさい! CD買ったり、沖縄で聴ける方はぜひ聴いていただいて、感想をインターネットにどんどん残しましょう。


沖縄の風を音楽にのせて~届け私たちの肝心(ちむぐくる)
(Readyforのページに飛びます)

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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